38話 僕達と潜伏狼
ちょっとニャンコと戯れていたら遅れました。
はい。妙なのに襲われたり、他にも若干事件がありましたがそれはさておき。この街であまりやれる事が残ってない事に気付き、ついに僕達は次の街を目指す事に。
といってもこれから行くシルズ周辺には、精霊がいるとされる遺跡がなく、出来れば続けて先に進みたいところ。僕としては他の遺跡も周りたいけど……精霊の遺跡を周った後でも大丈夫だろうし……周りたいけど。
「荷造りは完了!いつでも出れるぜー」
「ありがとうミスケル」
「おうよ!」
「………………やっぱり慣れないんですけど、タメ口で話すの」
「そりゃ、まぁずっと敬語だったしなグロースは。だけど、折角パーティを組んだわけだしよ?あと遺跡で切羽詰まった時とか、抜いた方が早かろう?」
とのことで、パーティメンバーには出来るだけ敬語を抜いて話しましょう習慣が始まってしまった。
「まぁ、そうなんだけど、家族とゼミス以外には慣れなさそうなんだよね」
「今のうちに慣れとけ慣れとけ。勿論、お貴族様相手は敬語で良いんだが。まぁ相手によって変えてやれ」
「了解です」
ルーズにもお礼を言いたいんだけど、家を出るって言ってからついぞ出てきてくれなくなったルーズ。直接お礼を言われたく無いそうで。種族柄なのかよくわからないけど、困った性質だなぁ。
「キュッキュキュ」
「セイラン。似合ってるよ」
「キュッ」
セイランは、ミスケルさんが作っためちゃくちゃ小さなリュックサックを背負って、胸を張って僕を見てとばかりに鳴いている。可愛らしい。
最近色々ありすぎて、こういう身近な何かにすごく癒される自分がいる。
『いいなぁー。僕も欲しいなー』
「いや、ファイが付けたら、何も無いところにリュックが浮いてる事になるからさ」
『わかってるけどさぁー。いいなぁ』
僕の頭に乗って、セイランのリュックを見つめるファイ。ちょっと最近重くなったか?
『失礼な!成長したんだよ!!』
「精霊って成長するの?」
『しますー!よくわからないけど』
「わからないのかよ」
ムフフーと笑いながら飛び去るファイを見ながら、前から使っているゴツゴツとした騎士鎧を装備したリーゼさんが、二階から降りてきた。
「全員集合、だね?」
「待たせたな」
「乗合馬車の時間がもうそろそろだ。急ごうぜ」
「キュッキューウ!」
『はーい!』
さぁ、新しい街へと出発だ!
と、意気込んでいた我々でしたが、次の街、シルズまでの時間は最短で五時間。まぁまぁ飽きるわけです。ファイだけ、周囲の精霊達のところへ遊びに行っている。セコい。僕が喚んだら来れるわけだからね。いいなぁ。暇だぁ……なんて。
「前回と同じ状態なら、暇すぎてしんなりしてしまってるだろうけど……ね!!」
「誰に話してるんだ?グロース」
「なんでもないでーす。とりあえず最初は潜伏狼やろうよ」
「あー。結局こないだやらんかったしな。したら、ワシがグロースをアシストするから、セイランがリーゼを助ける形にして、初心者同士で一回やってみればいいんじゃないか?」
「私もか……?」
リーゼさんは開いていた精霊の本を閉じ、ミスケルの手元を見る。
「リーゼにはルール説明してないからな。軽く説明しとくと」
と、ミスケルがバッグパックから脚のない机を取り出し、僕達の中心へ置くと、中心にハマっていた黄色の魔石が輝き、ふよふよと浮き出した。
「因みに、これは重力石っつー土の魔石の一種で、刻まれた術式によって、浮力を発生させる代物だ。机自体は代用も可能だが、重力石は一点物だからな。……壊すなよ?」
「な、なんでも持ってるよね」
「なんでもは持ってねぇよ。持ってるもんが多いだけだ」
ミスケルはニヤリと笑いながら、狼の模様が入った灰色の札を、十枚ずつ、対角線上に並べ、山札を三十枚、その横に置いた。
「自身の手前十枚の札の中に潜伏狼が隠れている。ワシ達は順番に山札から一枚ずつ、札を引くわけだが、引いてからは黒い札と、白い札へ変化する。黒い札は必ず嘘の言葉が浮かび上がり、白い札は本当の言葉が浮かび上がる。ほいで、白と黒の札に浮かんだ言葉から、札に潜んでいる潜伏狼を見つけようという遊戯だ」
「なるほど?」
あ、すでにクエスチョンマークが浮いている気がする。苦手そうだもんなぁリーゼさん。
「大丈夫か??まぁいいか。ほいで、どちらの色の札も、直接的に潜伏狼の場所を指し示す事はないし、相手からはその言葉は見えん。また、一回の遊戯中、それぞれ一回だけ自身の札を公開する事ができ、それを行使した場合のみ、相手も札の内容を認識できる、と。そんでもって、その次の相手は自身の持つ札の何れかを公開しないといけない」
「…………」
「で、最後の番で山札が無くなってもわからなかった場合は引き分け。それまでに潜伏狼を見つけられた方が勝者になるわけだ」
リーゼさん沈黙。
「ミスケルは僕じゃなくて、リーゼさんを助けてあげたほうがいいと思うんだけど、どう?」
「奇遇だな。ワシもそう思う」
「す、すまない」
僕らは笑いながら、座っている場所を入れ替え、遊戯を始める。
「どちらが先とかあるの?」
「そいつはこれで決める」
と、渡されたのは灰色のコイン。
「コイントスだな。裏か表か。裏なら後攻、表なら先攻だ」
「了解。僕がやるね?」
「任せる」
ピンッと弾いたコインを手に取り見れば……後攻。
「リーゼさんが先だね」
「わかった」
リーゼさんは山札から一枚札を引く。引いた札は黒い札。
「これが……嘘になるのだな?」
「そうだ。だから……」
ミスケルさんが身振り手振りで説明しているのを見ながら、自身の番を待つ。
「なるほど……私はまだわからないから、次に行っていい」
「そういう時はパスって言ってくれればいいぞ」
「了解した。パスだグロース」
「はいはい」
山札から一枚引くと、札の色が白く変わり、言葉が浮かび上がる。
[狼は上一列にはいない]
あーなるほど、こういう感じか……。
「キュキュ?」
「大丈夫大体理解したよ」
「キュキュー」
「僕はパスでーす」
と、遊戯は進んでいく……。
リーゼさんが四枚目を引いた辺りで手を上げた。
「カードを公開する」
「ここで、グロースが大してものを引いてなけりゃ、勝ったようなもんだ」
僕の手札の三枚は、白、白、黒ときて、僕から見て右下の方に狼がいる事まではわかっている。
「私が公開するのはこの札だ」
リーゼさんが公開したのは黒い札。
[左上にはいない]
うん?
「ミスケル、質問いい?」
「おん?なんだ?」
「この公開されたカードの言葉はリーゼさんから見てって事で良いんだよね?」
「そうだ」
「了解」
したら、わかっていることがわかっただけだな。
「これで私はパスだ」
「了解です」
次は僕が見せないといけないんだよな。とりあえず山札を引こうか。
引いた札は色を白へと変える。
[下一列にはいない]
おぉ結構……狭まったな。これは、右下から二段目の二枚のうちどちらかになるわけだ……悩ましいな。
「キュキュ!」
「そっか、公開しないとか」
とりあえず公開するのは最初に引いた白札。目に見えてそれじゃないみたいな顔をするリーゼさん。わかりやす!
「これ、挑戦してみても良いかな」
「間違えたらお手付きで、一回休みだぞ?」
「そ、そっか。いや、でも僕は冒険家だ。遊戯でも、冒険するとしましょう!!」
「おぉ……!?」
僕は右下、二枚のうち、右側の一枚を、捲る……!!
「あー……」
狼は居らず……札の中で鶏が踊っていた。てか地味に凄いな、どうなってるんだこれ?
「こりゃ、ワシらの勝ちだな」
リーゼさんは、山札から、札を取るが、それを見ることなく僕の捲った札の隣の札を捲ると、狼の模様が見つかったヤバい!!みたいな感じでわちゃわちゃしていた。
「おおー!勝った!勝ったぞ!」
「負けたぁ……」
堅実に行けば良かったか……仕方ないか。
「でも、面白かったな。またやりましょ!」
「おう。次はワシらがやろうかね」
「キュッ」
僕らの遊戯はまだまだ続く。
謎解きゲーとかでありそうなカードゲーム




