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34話 僕達の記憶 ①

短いです。

土日は大変だァ。





 遺跡から帰還して一週間と三日が経った。医療院で三日間の療養をとり、僕の身体の痛みは減り、一先ず動けるようにもなれたので退院。家でゆっくりしている。

 それは良しとして、遺跡から帰ってきてからのリーゼさんの様子がずっとおかしい。戻った記憶とか、聞いてみたかったんだけど、四六時中落ち着かない様子で、自分の手を見つめたり、頭を抱えたりして、自室に篭りきりだ。


「……よし」


 未だ重たい身体に力を入れて立ち上がり、リーゼさんの部屋の前へ。

 コンコンコンとノックを一度。返事はない。


「リーゼさん。グロースです。入っても良いですか?」


 ………………。返事はない。


「……」


 でも、このまま話さなかったら、話さなかったで嫌なんだよなぁ。医療院での療養期間は全然会えなかったし、帰ってきてからも一言二言挨拶するくらいだし。


「……は、入りまーす!」


 ガチャリとドアを開けて、部屋に入ると、毛布を被って寝ているリーゼさん。

 因みに今は真昼間。普段のリーゼさんからは考えられない状態です。ええ。


「……入っていいとは言ってないぞ」

「入るなとは言われませんでしたし」

「…………いや、それはどうかと思うが」


 リーゼさんはむくりと起き上がり、僕を見る。髪はボサボサで、ちょっと隈が出来ている。寝れていないのだろうか。


「それで。私に何の用だ?」

「ちょっとお話ししたいなって思いまして」

「私は話したくない」

「まぁまぁ、そう言わずに」

「……」


 むすっとしてるなぁ。


「リーゼさん、遺跡から帰ってきてから、全然話してませんから、ちょっと寂しくって。ダメですか?」

「少しなら良い」

「ありがとうございます」


 笑みを向けると、少しバツの悪そうな顔をして、そっぽ向くリーゼさん。

 いきなり記憶の件を聞くのもどうかとも思うけど、どうしようかな。


「どうした?」

「何から話したものかなぁと。僕の記憶の話でもしますか」

「そういえば、君も何か無くしているような会話をしていたな」

「まぁ思い出した記憶も支離滅裂というか、本当にバラバラにされた記憶みたいなんで、説明し辛いんですけどね」


 わかりにくいながらも、説明すれば、ふむふむと頷きながら首を傾げる。


「本当にバラバラだな。思い出した人間に見知った顔はいなかったのか?」

「ええ」


 今思い出してもよくわからない人間しかいなかった。というか、あの金髪の少女が精霊の類っぽくて、気になるんだよなぁ。よくわかんないけど、精霊の名前聞き取れない事が多いし、あとでゼミスに聞いてみよ。


「まぁ、僕の方はこんな感じでした。リーゼさんの思い出した事、聞いても良いですか?」

「あまり面白い物ではなかったぞ?」

「勿論、言いたくなければ……いや、でも聞きたいです。僕達はこれからもう幾つかの遺跡を巡るのですから、その度に共有したいくらいです」

「……あぁ」




––リーゼ視点––




 精霊を自由に操れる、神に等しい人間。それが、私。と、思われている。

 庭園で、––––と、話していると宰相が来て言うのだ。戦を始めると。


 最初は隣国の精霊を、自身の国に寄せるだけだった。それだけでも、人の生活基盤を充分に揺るがす事だった。強い魔法を使うには精霊が必要不可欠。時折、個人で全てをこなす人間も現れるが、そのような物は少数だ。


 私の国は、精霊を殺す国。当然疑われ、隣国から宣戦布告を受ける。


 ––––は私に告げる。このままでは国が滅び、私が死ぬのだと。でも、私にはわからない。私はここしか知らない。


 暫くして、あれだけ庭園にいた大好きな精霊達は、––––だけになってきた。

 私の国は精霊を殺す国。本来死ぬ理由のない精霊の、オドを消費して放つ兵器を、国は有していた。庭園の花々も、次第に枯れ始めていく。私は、ただ彼女達と話せていれば良かっただけなのに。


 ある日の午後。城内が騒がしくなってきた。暫く姿がみえていなかった––––が、人を呼んできたらしい。




 場面は切り替わる。


 木々が燃えている。燃え盛る視界の中で、仮面をした男が先頭に、その後ろを沢山の兵士が追随して、私を追いかけている。私を守る為に、黒色の仮面の男と対峙して、次々と斬られていく仲間達。


 ––––は、今も隣に。彼女の力は、使うわけにはいかない。私が戦おうとしても、仮面の男には敵わない。故に、今は逃げる。仲間達を犠牲にしたとしても、あの国へ戻ってはいけない。




 再び視点は切り替わる。仮面の男と、もう一人同じような金色の仮面を付けた男が剣を打ち合う。両者共一歩も譲らない剣撃の応酬。

 ––––はいない。頼れる人間は彼しかいない。ギュッと心を締め付けられるような緊張の中、金色の仮面を付けた男が、大きく剣を弾かれ、身体を浮かせ、斬り裂かれる。血飛沫を上げて斃れる彼をそのままにして、黒色の仮面の男は私に近づいてくる。


 私は、私は––––





––グロース視点––



「ただ泣いていた。見知った男だったのだろう。彼を失った事に、ただ泣いて。後はその仮面の男に連れられ、国に戻され憎悪に染まっていった……ようだ」


 そう、他人事のように、リーゼさんは話し終えた。


「…………」

「あまりの記憶の中の憎悪が強くて、引きずられてしまった。何もなかった私にこの憎悪は激しすぎたんだ……だから、もう少しだけ、待っていて欲しい」

「ええ、そりゃあ勿論、いつまでも待ちますよ」


 話が思ったよりも遥かに重くって、どう答えたらいいか全然わからなかった。というか、何者感が更に増したんだけど。


「そしたら……もう、いいか?」

「はい。わかりました。……また話しましょう」

「あぁ」


 リーゼさんは、小さく手を振り、部屋の扉を閉める僕を見ていた。



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