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30話 セカンドブレイバーズ対魔拳士

一時間前にも投稿してるので

まだ見てない方はそちらからお願いします。




––三人称視点––



 白い壁に囲まれている、広い広い殺風景な試験場で、グロースを中心に、リーゼとミスケルが並び立ち、ファイタンが宙を飛び、セイランがミスケルのバックパックの上へ乗って、ふんすと気合を入れている。

 その彼らを見据えながら、普段とは違う装いで相対するのは、長い髪を紐で纏め、欠伸をしているゼミス。手には炎の意匠が見られる赤黒い手甲を。脚部にも同様の意匠を凝らした赤黒い脚甲を装備している。他は身体の動きを阻害しないような革鎧を着けており、グロースは普段との違いに変な顔を浮かべている。


「準備はいいかい?」


 グロースはいつもの革鎧に、遺跡で手に入れた小剣を構えており、ファイは既にアクセルの魔法陣を展開している。

 リーゼは元々使っていた岩の様に無骨な鎧を着、背の大剣の柄を握り、真剣にゼミスを見つめている。

 その一方でミスケルは両手に赤い色の液体が入ったガラスの入れ物を持ち、興味を示したセイランに触るんじゃないと気の抜ける会話をしていた。


「良さそうだね。ルーズ、合図を」

「ン。十分だな」

「あぁ」


 グロースはゴクリと喉を鳴らしながらも、ゼミスへと視線を集中させる。


「ンじゃ、始め!!」


 ルーズが手に持った砂時計を逆さまにし、試合開始の声を上げる。


 瞬間同時に駆け出すのはグロースとリーゼ。グロースがやや前に出つつ、リーゼが追い討ちを掛ける形だ。一度でも攻勢が逆転してしまえば、恐らく何も出来ずに負けてしまう。だからこそ二人での突貫。


「でぇりゃあ!!」

「せぇぇあ!!」


 グロースが、ゆったりと構えるゼミスの腹部へ向かって左側から剣を一閃。

 それを右手の手甲で弾き、次に右から振るわれるリーゼの大剣を凄まじい速度の右回し蹴りで弾き返し、その勢いを殺さず、回転しながら軸足を変え、リーゼの腹部に左脚で蹴りつけようとするゼミスにファイタンのアクセルにより、急加速したグロースが袈裟斬りに剣をゼミスへ振り下ろす。

 ゼミスはリーゼを蹴ろうと伸ばした脚を素早く引いて手をクロスさせ、手甲と手甲の間で剣を受けつつ剣を上に押し上げ、体勢を崩したグロースに膝蹴りをくらわせる。


「ぐあっ!」

「まだだ!!」

「流石にね?」


 その間に体勢を直し、突き出された大剣を半身になって避けたゼミスはリーゼの手首へ手刀を落とし、ガクンと姿勢の崩れた彼女へ追撃をせず、勢いよく背後へ跳ぶと、それまでゼミスがいた場所を、拳大の炎弾が通過する。


「魔法の発動が早くなったね」

「流石に一週間みっちりやってればね!」

「うわ」


 ゼミスは引いた様に呟く。なぜなら、炎弾を放った姿勢をしたグロースが四人に増えていたからだ。


「「「「さぁ!本物はどれだと思う?!」」」」


 四人になったグロースはそれぞれの方向から加速し、勢い良く剣を振り下ろす。


「––––」

「「「「なぁー!?」」」」


 ゼミスはそこで笑みを浮かべながら、四人を纏めて回し蹴りで吹き飛ばし、回転しながら軽く跳躍し、


「本物はこっちかな」

「まず––––」


 背後から剣を突き出していたグロースに向かって掌を向け、炎弾を放った。


「私を忘れるなよ!!」


 だが、ギリギリの所で間に入ったリーゼが剣の腹で受け、その体勢のままゼミスへぶつかっていく。

 ゼミスはその剣を蹴り、後ろへ大きく跳躍。そこへ、


「これなら避けられんだろう!!」

「ここで来るのか!」


 赤い液体の入った入れ物を投げつけながら、広げたスクロールで魔法を展開。


「ロックピアース!!」


 地面から突き出た岩の棘が、入れ物を破砕し、液体が一瞬で気化し、霧となり、そこにゼミスが着地する。


「なん……!げっほげほ!」


 ゼミスは涙を浮かべながら咳き込み、風の魔法でそれを散らすも、正体不明な目の痛みに襲われ続け、よろめく。


「なんか目に染みる……なんだこれ!?」


 それはグロースやリーゼにまで影響を及ぼし、彼らはゼミスから距離を取る。


「とりあえず勝ったら、何を使ったか教えてやろう!」


 してやったりと胸を張って笑うミスケルに向かって、少し苛立ちを表情に出し、身を低くしたゼミスが勢いよく走り出す。


「うぉおおおおやべぇ怒ってんじゃねぇか来るぞ!!」

「いくぞ、ファイ!!」

「私が受ける!」


 グロースはイグニスの魔法陣を展開し、リーゼは大剣の腹をゼミスに向けながら、ミスケルの前へ立つ。


「ちょっと退きたまえ!!私はそいつを殴らねばならない!!」

「断る!!」

「『イグニス!!』」


 リーゼはゼミスの勢いの乗った拳を受け、数歩程押されながらも、受けきり、イグニスを発動したグロースが勢いよく、ゼミスへ斬りかかる。

 袈裟斬りと横薙ぎを中心に、剣筋を読ませない様に斬り付けていくグロースに対して、目の回復していないゼミスは焦りを見せる。


「くっ!」

「うおおおおおおおおお!!」


 まぐれか奇跡か。ゼミスが少しだけ体勢を崩す。その隙を突いて背後からリーゼが大剣を薙ぐ。

 当たる!!と二人が確信した瞬間、ぐらついていたのが嘘の様にズゴンッ!!と思い切り地面を踏みしめ、ゼミスが嫌らしい笑みを浮かべた。涙を堪えながらだが。


「ほい」

「うわぐぼぁ!!」

「あっ––––」


 ゼミスはグロースの剣をいなし、腕を掴んで引いて、自分達の立ち位置を入れ替える。リーゼは剣をギリギリで持ち替えるも、勢いは殺せず、体験の腹で思い切りグロースを殴り飛ばし、ゼミスはグロースで衝撃を殺しながら、一緒に転がっていく。


「うべぇ……?」


 グロースは目を回しながら、倒れ、


「君らにそんなに何度も隙を見せるような甘さはないよ。私は」


 ゼミスは涙を流しながらも、勝ち誇ったように笑い、転がっていたはずのグロースが霞となって消滅したところで、ルーズがいつのまにか持っていたフライパンをおたまでカンカンカンと鳴らし、試合終了の合図をした。


「試合終了ー!ルール上、グロース達の勝利だな」

「あれ??」


 ゼミスはギョッとしながら消えていくグロースを見、リーゼさんの横に出現したグロースを見、再びグロースの倒れていた場所へ視線を戻した。


「最後の瞬間だけ、入れ替わったんだよ。妙にあからさまだったからさ、セイランに目配せして、実態のある幻覚を作ってもらって、僕は透明になって、その場を離れたってわけ」

「……うわぁ」


 ゼミスは呻き、頭を抱えてその場にしゃがむ。


「ちょっと本当にかい?ええー?」

「私はもう、やってしまったかと思ったぞグロース」

「僕も正直びっくりしてる」


 漸く目の痛みが取れてきたのか、しぱしぱと瞬きをしながら、苦笑いを浮かべるゼミスに、ドヤ顔をしながら、Vサインを突きつけるグロース。


「これで、いいよな!」

「あー完敗だよ……参ったなぁ。参った。リィに怒られるなぁ。はー」


 これから彼の母にやたら文句を言われるだろう事に、溜め息を吐きながら、しかしてゼミスはどこか嬉しそうに、グロースに向けて頷きかけた。



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