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29話 僕と冒険者な本の魔物

説・明・回





「……………………」


 ゼミスがソーズに来てからあっという間に時間が過ぎ、一週間。土の精霊がいると言われる遺跡に行こうとしていた僕らですが……。


「なぁ」


 リビングのソファに腰掛け、コヒィーを飲みながら本を開く男へ声を掛ける。


「なーぁ」


 ちらりと僕を見、また本へと目線を戻す本の魔物。


「なんだい?読書中なんだけどね」

「いい加減、遺跡に挑戦させてくれよ!銀級くらいの実力はついたって言ってたろ!?」


 ゼミスはやれやれと大仰に肩を上下させ、本を閉じ、呆れたように答える。


「私もまぁ、良いとは思うんだけどね、リィがダメって言うんだから仕方ないだろう?」

「なんだってわざわざあの戦闘を母さんに見せたかなぁ!?」


 この野郎は、先週僕と闘っていた時の記録を取り、あろうことかその記録を母さんへ送り付けたのだ。母さんは僕の練度の低い事に不安を示し、暫くソーズでゼミスに訓練を受けるように手紙を送ってきた。あと、毎日手紙を書くように厳命もされた。


「だって、家に来る前にさ、ギルドに寄ってったら僕に指名依頼がギルドに発注されてるもんだからさ。笑っちゃったよね」

「その内容ただ様子はどうか見てきて!って内容だったんだろうが!何処に戦闘訓練の記録を送りつけるやつがいるんだよ!」

「ふふん。ここにいるだろう?『イッツミー!』って奴だね!」


 両手で自分を指差し、背後を魔法で態々光らせる糞エルフ。というか偶によくわからない言葉を使うのやめろ!


「まぁまぁ怒らないで怒らないで。どのみち斥候無しの遺跡探索は僕もやめたほうがいいと思ってるからね。気長にやろうよ」

「気長にって言ったって、リーゼさんの記憶の件だってあるんだぞ」


 因みにリーゼさん達は周辺で済ませられる依頼を受け、森へと出ている。一応待ってくれているけど、段々ゼミスに向ける目が厳しくなってきているので、僕もなんとかしたいのだが……この男は許可を出さない。


「そんなにダメならお前がついてきてくれればいいじゃないか」

「それはそれでダメだね。というか私が嫌だ。面倒くさい」

「なんだよ。どうしろっていうんだ」


 ゼミスは目を瞑り、腕を組む。数秒悩んだ後にこれだと目を輝かせ、僕を指差す。


「じゃあさ、明日、リーゼとグロース。後はあのドワーフとで、私と試合をしよう。そして……そうだねぇ、十分。十分全員立っていられたら、許可しようか。勿論ファイタンもセイランも一緒でいいし、僕はある程度制限をかけるからさ」

「僕らのパーティ対、ゼミスって事?それで十分持たすだけ?」


 僕一人なら五分持ちそうにないけど、リーゼさん達がいるなら余裕なんじゃないか?


「因みに私はグロースが百人いても十分以内に全員倒せるくらいの自信はあるからね?」

「……そんなに差があるの?」

「そうだよー。そうだ、この際ギルドランク毎の大体の力量の目安を教えてあげようか」


 ゼミスは首からさげているギルド証を取り出し、机に置く。白銀証だ……。強い強いと思ってたし、母さんのパーティだった事もあるって話だったから当然なんだろうけど。


「彼女の子だから、君もきっと強くなれるさ。さて、先ずはちょっと前までの君の階級の銅級だけど、これは基本誰でも受け取れるギルド証だね。別名初心者マーク。まぁ最低限ギルドが身元を保証してますよって物だ」


 次に、と僕のギルド証をいつの間にか取って、机に置くゼミス。


「どうやった!?」

「ちょちょいと。もうちょっと周りに気を配ろうね」

「そんなにあっさり……?」

「さて、君が取得した銀級は、まぁ一応動けるようになりましたねっていう証。まだちょっと怖いなって感じ。一人の子には必ずギルド役員がパーティメンバーを見繕う様になってるんだ」

「銅級の時は何も言われなかったけど?」

「まぁ、銅級は一般人も結構取るから、一人一人には案内しないんだ。特にガンズなんかはジグがいる間は断トツで平和だからね」


 ゼミスまでジグさんを褒めてる……。本当に凄いんだなぁ。

 とか思っていたら、ゼミスが変なニヤケ顔になる。


「初対面の印象が悪くて、全然実感湧かないんだろう。わかるけどね」


 なんでも気がつくなこいつ。


「で、次が金級だね。リーゼみたいに最初から強い人間でも必ずここから始まる。まぁ金級になったら一人前って感じかな。遺跡の探索をするなら、このくらいの階級は欲しいところだね」


 僕はいつ頃、一人前になれるんだろうか……。リーゼさんと同ランクと思うと、全くなれる気がしない。


「そう気を落とさなくとも、ここでちゃんと訓練してればなれるよ。君が比べてる子は平均的な黒銀級の冒険者より強いからね」

「そ、そっか」

「続けるよ?」

「うん」


 ゼミスは小さく笑いながら、僕の肩に手を置く。


「……?」

「まだまだ始まったばかりなんだから、あんまり気負うのもよくないからね。リラックスリラックス」

「う、うん」

「さて、黒銀級だね。大体ここに到達できるかどうかで冒険者……いや、冒険家として生きていけるかが変わるかな。自分で思考して動けるか。仲間との連携を無理なく取れるか。魔物に対しての知識をしっかり付けているか。魔法に対してもそうだね。この辺がしっかりできるかどうかが、金級と黒銀級の差かな」


 ゼミスは黒銀級になる事が、君の最初の目標になるかな。と僕を見る。


「なる、ほど」

「ククク……そんなに深刻そうな顔をするなよ。笑ってしまうだろう?」

「おっ前やな奴だなぁ!?」

「君はわかりやすすぎてさ、本当に愉快なんだよね」


 僕の肩を叩きながら笑い始めるゼミス。この野郎……。


「はいはい。あとは黒金級だね。ここが大体の冒険者がなれる最終到達地点かな。プロフェッショナルと言って過言じゃないね」

「最終到達地点。なぁ、僕の勘違いじゃなきゃ、僕の知ってる中に四人くらいその上に到達してる人を知ってるんだけど」

「そうだね。私とジグとリィと、そして君の父親のゼクスは全員白銀級だよ。凄いだろー!」


 凄いけど。凄すぎてよくわからん。


「ま、あとこの上に白金級がいるわけなんだけど、それはこの大陸で二人しかいないくらいの天上の存在だから、気にしなくていいよ」

「二人……だけ?」

「そそ。一人は会った事あるんだけどね、凄かったよ。割と私は白銀級の中でも強い方だと思っていたんだけど、まぁアレは格が違ったね。同じ生物なのかと疑うくらいさ」


 ゼミスはその白金級と会った時の事を思い出したのか、手が震えていた。そこまで、そこまでの差があるのか。


「あはは。まぁ、僕も数百年生きてて、一回しか遭遇してないからね。君は会う事はないと思うよ。今も何処にいるかとか、全然わからないし」

「へー」


 待って数百年……って。


「もしかして、その人もエルフなのか?」

「あぁ。アレに比べたら私なんて小童同然だろうね。エルフの平均寿命を大きく逸脱している異様な存在だよ」


 あれ、エルフって寿命……、


「うん。エルフの寿命は大体千年前後なんだけど、アレは私のひい爺さんが子供だった時からいたらしいから、とんでもないよ」


 何?何者なんだ?


「さて、そんな天上の存在の話は良いんだ。とりあえずそんなのもいるよって感じで」


 ゼミスはギルド証を懐に戻し、立ち上がる。


「話しすぎて疲れちゃったよ。ちょっと下に行って遊ぼうか」

「あー。わかった。遊ぶと言いつつ僕がボコボコにされるだけなんだけど」

「まぁまぁ。明日の前哨戦みたいな感じで頑張っていこう!えい、えい、おー!」

「お、おー!」


 なんだコイツのテンション。



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