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27話 僕達と久しぶりなようでそうでない奴




 色々聞きたい事があったけれど、あまりの眠気に負けて翌日。どうやらあのままずっと寝かせてくれたらしい。感謝しつつ寝室を出ると、ソファに座り、白いカップに黒い泥のような飲み物を入れて飲んでいるリーゼさんがいた。


「何飲んでるんですかそれ……」

「コヒィーというらしい。ちょっと苦いが、美味いぞ。目も覚める」

「コヒィー……」

「一口飲むか?」

「良いんですか?」

「あぁ」


 紅茶のようなものだろうかと思えば……にっが!!苦い苦い!!


「ふふ。グロースには厳しかったかな?」

「厳しいというか!なんですかこれ本当に!!」

「ふふふ。そんなに苦かったか。すまないな」


 珍しくリーゼさんがよく笑ってるけど、僕はそれどころではない。滅茶苦茶苦いんだけどこれ。


「コヒィーは……ダメだったみたいだな」


 テントの入り口から顔を見せたのはニヤケ顔を隠そうともしないミスケルさん。何故だろう。昨日から何故か遊ばれてる気がする。


「いや、いけます。飲めます。飲めますとも!」


 と、答えれば手前の長机に置かれるコヒィーの入ったカップ。


「そうか?中和用にモルモルのミルクを持ってるんだが、いらなかったか」


 ミスケルさんは薄ら笑いを隠そうともせず、ミルクの入った袋をバックに戻そうとする。待て。待って。


「あ、あぁーいります。味変もね、欲しいですし………………」

「おぉん?嬢ちゃんから一口貰っただけだろう?もう一杯ちゃんと飲んでみろ」

「………………ごめんなさい、ミルクをください」

「おうよ」


 負けた。いや、いつかまた挑戦してやる!!とりあえずミルクをちょろっといれて……。


「んん……まだ苦い。けど、大分まろやかになったし、これなら飲めそう……」

「どれ、私も少し貰おうか」

「ほいよ」

「……んむ。これはこれで美味いが……普通に飲む方がいいな」

「珍しいな。差はあれど、大体の人間は坊主みたいな反応なんだが……」


 本当に美味そうに飲んでる……!わからない!リーゼさんの味覚がわからない!!


『あぁー!!なんか美味しそうなの飲んでる!!ずるい!!』

「おい、待っ––––」


 何処にいたのやら、セイランを頭に乗せたファイが飛んできて、僕のカップに口をつけた。セイランはじっと見つめている。


『うぇぇぇぇ!苦い!不味いよぉ……』


 次の瞬間、ぺっぺっと吐き出すようにしかめっ面でファイは飛び上がる。セイランは意地でも降りないようで、頭に捕まったまま離れない。何してるんだ?


「ファイ……。すみません、ミスケルさん。小皿にミルクを入れてもらえますか?」

「お、おうよ」


 ファイが空中でくるくる回りながら、苦い苦いと呻き続ける。そんなに苦いか。苦いよな。僕もそう思う。

 セイランはくるくる回るファイの上を必死にしがみつく。本当に何してんだ?


「ふふふ……何をしているんだセイラン」

「なんか、コヒィー飲んで苦いって飛び回ってるファイにくっ付いてます」

「滅茶苦茶苦かったんだな。さ、ほれ。ミルクを飲め。坊主達も、朝食を準備してある。それを食べて早く遺跡を出ようじゃないか」

「ですね」


 渡されたミルクを勢い良く飛びつき飲んでいくファイ。小皿のミルクがみるみる減っていく様に、ミスケルさんは目を丸くしていた。

 セイランはホッとした様に、頭上でぐでっとしている。お疲れさん。


 というか、どうやって食物を保存してるんだ??ミルクだって、そんなに保存できる時間は長くないはずなんだけど。不思議だ。




「僕達は帰ってきた!!」


 ともあれ。ところ変わってソーズの入り口。門番さん達に背中をバンバン叩かれながら、よく帰ってきたと褒められた。


「銅級の冒険者が一日戻らなかったら、まず何かに巻き込まれたか、死んだと思われるだろうからな」


 と、ミスケルさんが説明してくれる。確かにそうか。そうだよな。

 僕は門番さん達にお礼を告げ、わっしゃわっしゃと頭を撫でられながら、街へと入る。


「とりあえず、まずはギルドに行きましょうか」

「そうだな」

「すまん、ワシは宿を取ってくるから、先に行っていてくれ」

「そうですか。了解です。また後で会いましょ「待て」」

「うん?」

「いや、すまない。ミスケル殿、お願いがあるのですが、宜しいですか?」

「おん?どしたい。改まって」


 リーゼさんが背を伸ばして、ミスケルさんを見つめる。身長差が凄いなぁ。


「現在我々のパーティには、私と彼、そしてセイランとファイしかいません。斥候職の子は恐らく後から合流してくれるので、何とかなるはずなんですが、バックパッカーの方がどうにも見つけられない状態なのです」

「だから、パーティに入ってくれないかってか?」

「ええ。如何ですか?」


 ミスケルさんは太い両腕を組んで、考え込む。……フリな気がする。


「まぁ、ワシはこのバックやら、テントやらがある以上、嬢ちゃん達以外の冒険者にも引くては数多になるだろうが……それでも、自分の場所へって言うのか?」

「……はい」

「ぼ、僕もお願いします!ミスケルさんとまだ話したい事もありますし!!」

「パーティが解散するまで居座るが、それでもいいのか?」


 ちょっとニヤケ顔で僕の顔を見上げるミスケルさん。


「望むところです。僕らはディレクトルにも、ヘルズニアにも行く事になります。それでも、一緒に来てくださるのであれば、ありがたいです」

「ヘルズニアにも行くのか。それは嫌だなぁ……なんてな。そんなやっちまった!みたいな顔すんなよ」


 リーゼさんと僕の顔を見て笑うミスケルさんは、僕達の手を取り告げる。


「勿論参加させてもらうぞ。嬢ちゃんはつえーし、ネズミっ子は意味分からんし、坊主は坊主で伸び代があるみたいだからな。お前達が強くなってくのを特等席で見せてもらうぞ」

「ミスケルさん……!」


 僕伸び代あるんだね……!!


「ミスケル殿、あまり彼を褒めないでください。調子に乗りやすいようなので」

「おん?わかったぜ」

「わからないで!!もっとほめて!!」

「いや、その言い方はどうなんだ坊主」


 きっと褒められた方が僕も伸びるよ……。


『そうだよねー。お姫様抱っこされなくなったもんねー。凄い凄い』


 やめて!!忘れかけてきた古傷を抉らないで!!



 はい。そんなこんなでギルドです。ギルド役員さん達と、他の冒険者の方と会話しつつ、ついにパーティを結成。

 パーティ登録をせずにパーティに誘ってたのかとミスケルさんに笑われました。二人だったし……そんなに気にして無かったんです。


「と、グロース様はギルド証を出してください」

「はい……?はい!!」


 これは、これはまさか!!


「おめでとうございます。今日からグロース様は銀級となります。冒険者としては、ようやくスタート地点に立ったという感じですけどね。がんばってください」

「ありがとうございます!!」


 おおー!銀色に輝くギルド証!刻まれるパーティ名!!カッコいい!!

 因みにパーティの名前は、セカンドブレイバーズ。父さん達のパーティ名がブレイバーズだったから、そこから貰うことにした。


「おぉ〜」

「坊主のあの動きが、一日足らずでできるようになったって話が未だによくわからんのだが、嬢ちゃんと会うまではどう過ごしてたんだ?」

「普通に過ごしてたつもりなんですけどね……なんででしょうね」


 筋トレも走り込みもやってたし、素振りだってしてたんだけどな。やっぱりゼミスの試験場が特殊なのかな。


「とりあえず、坊主達の話にある試験場に行ってみたいところだ」

「ええ。ただ、家に空いている部屋があるかどうか。リビングでも一応寝れそうですけど」

「なんなら広いところありゃ、そこにテント出して寝れるがね」


 あー確かに。そしたら庭とかでもいいのか。


「ともかく一度さっさと帰りましょう。ルーズも心配してるでしょうし」

「そうだな」




 さぁ。帰ってきました愛しの借家!!……冒険家業が成功したら、夢のマイホームとか作るのもありだよなぁ。

 なんて思いながら家の扉を開けたら、上階への階段に腰を掛けて本を読んでいる男が一人。


「おや、お帰り。随分と遅かったね」

「おま、ぜ、ゼミス!!?」


 至極当然のように手を挙げるのは、ガンズで雇われ司書をしているはずの、ゼミスであった。




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