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25話 僕達とボスゴブリン





 扉を開けた先にいた巨大なゴブリンは、僕達を見ると、のそりと立ち上がり、横に置いてある巨大な棍を二つ持つ。気味の悪い笑顔を浮かべる。

 対して僕は、セイランとファイに目配せして魔法陣を展開しながら走り出す。アクセルはファイに任せて、僕は炎弾を。油断しているうちに一撃入れたい。


「いくぞ!ファイアーボール!」


 巨大なゴブリンの顔に向けて、炎弾を放ち、様子を見ながら右足を斬りつける。

 炎弾は、あっさりと打ち払われ、剣は浅く皮膚を斬るだけに終わってしまう。


「斬れない!?」

『危ないよ!アクセル!』


 ファイのアクセルで加速しながら、アクセルの魔法陣を展開しつつ、大きくバックステップをすると、勢いよく棍が目の前を通過する。


「待って、棍を振る速度が、僕のアクセルとおんなじくらいじゃない!?」

『まだくるよ!』

「キュ!」

「アクセル!」


 再び大きくバックステップをすれば、二撃目が地面を抉り、大きな音を立てる。

 そして、セイランが幻覚を作り出したのか、ボスゴブリンが明後日の方へと棍を振るう。


「助かった!」

「キュ!」


 だが、すぐにこちらを見、ここで奴が初めて怒鳴り声を上げる。


「グルゥオオオオオオオ!!」


 部屋中を震わせ、思わず身動きが出来なくなる。


「止まるな、グロース!」

「っは!?」


 怒鳴り声をあげたリーゼさんに、首をグイッと掴まれ投げられたと思えば、ひび割れた剣で、僕に向かって大きく振るわれた棍を受けとめてくれる。


「ぐっ……!」


 だが、その次の一撃で剣が軋み、二度目の攻撃で砕け散る。


「うわぁああああああ!!」


 その瞬間無理矢理間に入って、棍を僕の剣で受け、二人とも吹き飛ばされる。


 予想をしていなかったわけじゃないけど、ここまで役に立たないとは思わなかった。


「ロックピアース!!」


 ミスケルさんが、スクロールを開いて、魔法を放つが、ボスゴブリンはそれを目視してから避けてしまう。


「こりゃあ、拙いな。ただのゴブリンじゃ無さそうだ……」


 ミスケルさんは冷や汗をかきながら、次のスクロールを準備し始め、セイランが実体のある幻覚を出現させボスゴブリンを牽制してくれているが、すぐに打ち消されてしまう。


「……グロース。剣を貸してくれ。全力で行く。魔法で援護を頼む」

「リーゼさん……?」


 リーゼさんは僕の持つ長剣を取り、身を低くして……走り出した。


「はっや……」


 そりゃそうだ。大剣でさえ僕より速く動ける人間が、長剣になったなら、もっと速くなるのはわかるさ。いや、わかるんだけど、なんだろう。それを差し置いても、異様に速く見える。というかなんか、光って見える……。


「グルゥ!」

「遅い……!」


 前方に迫るリーゼさんに向かって、ボスゴブリンが棍を振り下ろすが、急加速したリーゼさんがそれをスライディングしながら避け、ボスゴブリンがもう片方の棍で振り向きながら薙ぐが、それを軽く跳躍する事で避けつつ、手首を思いっきり斬りつける。


「グルゥア!!?」


 反撃をくらうと思っていなかったのか、困惑の声をあげ、下がるか否かを逡巡したボスゴブリン。リーゼさんはその僅かな隙をついて、棍を蹴りながら大きく飛び上がり、頭頂部を斬りつける。


「グギャアアアアア!」


 しっかり入っていれば、間違いなく致命的な一撃だったが、寸前のところで身を引いたのか、額から、鼻下まで顔面を斬られるだけに収まったボスゴブリン。奴は痛みに呻き、棍を手放して顔を押さえる。


「……しぶといな」

「グルルル……」


 リーゼさんは、息を整えながら、ボスゴブリンの様子を窺い、ボスゴブリンはベタついた血を流しながらも、目線をリーゼさんから外そうとせず、先程まであった侮るような視線が一切感じられない。

 膠着状態と化したボス部屋。僕はミスケルさんの所まで下がり、声をかける。


「ミスケルさん、もう一度ロックピアースは使えますか?」

「ん?おう。あと二発分はあるが……」


 当たればそこそこな威力になるはずだから、当たるように立ち回ればいい。幸いボスゴブリンはリーゼさんを警戒して、僕の方はほぼ無警戒といっていい。

 僕はバックからゴブリンメイジから頂いた杖を出して、火の魔法を展開する。


『一陣増やせそうだよ、これ』

「確かに……なんか、マナを変換しやすい気がする。だからゴブリンが二陣の魔法を使えたんだね……」


 とはいえ、僕が二陣で使えそうな火魔法は三つだけ。隙を作れそうなのはそのうちの一つ。それを発動する。


「ファイ。補助をお願い。ミスケルさんは僕が魔法を発動したら、すぐにロックピアースを使ってください」

『りょうかーい!』

「おう。任せろ!」


 展開する魔法陣は勿論二陣。緋色に輝く、火の魔法。僕の中で凝縮され、マナがオドへ変換されていく。

 ファイ……!これで、


『充分だね!発動いけるよ!!』


 展開した魔法陣を、掲げた杖の先の方へ移し、ボスゴブリンへ向ける。


「リーゼさん!」


 リーゼさんへ声を掛ければ、すぐにこちらの意を理解して、横へと逸れる。

 そして、魔法陣から凝縮された炎の塊が出現し、僕は放つ。


「くらええええ!!ファイアーインパクト!!!」


 小さな太陽の様に輝く炎の弾が、勢い良く撃ち放たれ、ボスゴブリンは棍を前方に出しそれを受けようとするが、ミスケルさんが次いで発動した岩の刺に棍を弾き飛ばされ、無防備になった腹部に着弾する。凝縮された炎は破裂し、大きな衝撃を生み、ボスゴブリンの身体を後退させる。


「凄……!」


 自分でやったとは思えない威力に、思わず息をのむ。

 しかし、そんな一撃でも奴は倒れない。


 唸り声を上げながら、僕を睨む。


「良いのかよ、よそ見して」


 怒るボスゴブリンは気付かない。背後に回って剣を突き立てようとするリーゼさんを。


「終わりだ!」


 その声に気付き、振り向こうとした時には、既に遅く。長剣がボスゴブリンの背を深々と貫き、胸を押さえながら奴は絶命した。

 



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