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20話 僕と騎士様の特訓

作者は風邪ひいて熱出してました。気づいたら休み一日消費してて悲しかったです。

読者の皆様も風邪にはお気を付けて。





 翌朝。目が覚めると一緒に寝ていたはずのファイはいなくなっており、僕は一人でベッドから出た。


「ん……ふぁ〜」


 ベッド付近のタンスの上に、いつもの革鎧とロングソードが立てかけてあるのでそれを装備する。


「リーゼさん、どこかな」


 リーゼさんが寝ていたであろう部屋は既にもぬけのからで、誰もいない。階下に降りていくと、セイランとルーズが走り回っていた。


「ぬぅ!中々素早い!ネズミめ!!」

「キュッキュキューキュー♪」


 ルーズがハエ叩きを振り回しながら、セイランを追い、セイランは鼻歌を歌っているかのようにルーズを煽りながら鮮やかにそれを避けていく。


「ルーズ」

「おぉン?グロースか。おはようさン。二人揃ってお早いお目覚めで」

「おはよう。ちょっと違和感があるけどね。リーゼさんは?」

「下の試験場だな。剣持って行ったから、訓練でもしてンじゃねぇンか?」

「そっか。ありがとー」

「ン」


 ルーズに手を振ってから、また下へ降りる。


「木はどこから生えてきてるんだ?これ」


 階段の下にも木は長く伸び、根のようなものは見えない。降りた先の扉を開けば、広くて白い謎の材質の壁に包まれていた。触れば柔らかく、叩けば硬く。床はきれいな模様の石のようだ。

 大体縦横五メートルくらいの部屋で、僕が入ってきた扉を除いて三つの扉があり、前方の壁には試験場。左側には図書館。右側は宝物庫。


「宝物庫……」


 扉に触れようとすれば、幾重にも魔法陣が重なり、変に開けようとすればやばい魔法が発動するのだろうなと目に見えて分かった。

 気を取り直して、試験場の扉を開けると、大剣を無言で奮っているリーゼさんの姿が見える。


「ひっろ……」


 距離は……どのぐらいだろうかこれ。目測でも三十メートルくらい奥行きもあるし、天井もすっごく高い。ガンズの城壁ばりに高い。


「グロースか……おはよう」

「おはようございます。リーゼさん」


 リーゼさんは滅茶苦茶短いズボン……最早パンツなのではという感じのズボンに、胸元と背中が空いた腹巻のような服を着ていた。


「何故目を背ける。ルーズがこれが似合うって着せてきたものだが、動き易くて普段着にするには良さそうだぞ。少々肌が出過ぎな気がするが」

「何を言ってるンだ!それがいいンだぞ!ベアトップにホットパンツ!!それが最高なンだ!!ご主人には鼻で笑われたけど」


 と、どこからともなく現れたルーズは自信満々にそう語る。

 確かに、最高だとは思う。筋肉はあるが、ゴツゴツとはしていない、リーゼさんの肢体が露わになり、上の服がぴっちりとしている為に、体の線がよく見えて……。


「グロース?」

「最高デス……」

「グロース!!わかってくれるか!!!!」

「わかる……。わかるけど目のやり場に困らない?」

「俺は見てもバレン!!」

「いや、わかるぞ?視線が向けられるのは」

「なン……だとっ!?」


 そんなやり取りをしつつ本題へ。


「リーゼさん、リーゼさん。お願いがあるんだけどいいですか?」

「どうした?遺跡の話か?」

「それもしたいけど、それはまた後で。あのですね、旅の間、僕の師匠になってもらえませんか?」

「グロースの師に?」

「はい」


 この間の戦いでも言われた通り、僕は弱い。他の冒険者が苦せずして倒していたゴブリンに苦戦し、邪魔になってしまったし、オーガ戦では攻撃力の無さで、殆ど役に立てなかったし。体力もない。ガンズの周辺の遺跡を周って満足していたつもりだったけど、それもジグさんがコントロールをしていた遺跡でしかなく、大した経験にもなっていないことがわかった。


「私も記憶がないから、あまり上手くは教えられないと思うが……」

「それでもいいです。きっと打ち合ったりするだけでも何か得られると思いますし……」


 打ち合えるかどうかはわからないけど。


「リーゼさんに頼りっぱなしになりそうで、嫌なんです。僕だって冒険家なんですから、自分の冒険を、父さんが見ていた世界を見てみたいんです。それには、力も経験も必要ですし……」

「……うむ。わかった。私で力になれるならそうしよう。ただ、私を師匠と呼ぶなよ?なんだか、むず痒くなる」

「わかりました」


 間。軽く柔軟をして、剣をふるい動作を確かめ、リーゼさんの前へ出る。


「さて、訓練内容だが、まず君は体力がなさすぎるから、そこから着手していこう。というわけだから、走れ」

「え」

「私も後ろで走る。君が減速したら蹴っ飛ばす。いいな?」

「え?ええ?」

「それでは、位置について。よーい。走れ!!!」

「ひぃ!?」


 僕の真横に鋭い蹴込が放たれ、僕は慌てて走り出す。予想していたものと違うんだけど!?


「遅い!自身の限界まで速度を上げろ!全力を出し続けるんだ!」

「ひ、ヒィィィ!?」




 ––––間。多分時間はそう長くない。何度か蹴っ飛ばされながらも走り、限界を迎えて床に転がった。


「…………こんなものか」


 この程度しか走れないのかという、僅かに感じる失望の色とまぁこんなもんだよなという呆れの色を感じる。


「五分経ったら立て。もう一度走るぞ」

「……はい」


 地獄だ。これは地獄だ。冒険者になりたいって言って母さんに課せられた訓練とは訳がちがうぞこれ……。


「これをあと二セットやったら、次は剣を振る。唐竹割りを百。水平に動を狙う形で左右から百ずつ。逆袈裟に百ずつ」


 あ、地獄だ。




 ––––––––––––間。走り終わり、リーゼさんの隣で横なぎに百回振るまでの間、七十回目くらいで剣を握れなくなって落としてしまった。


「……すぐ拾います。ちょっと待ってください」

「いや、いい。この辺にしよう」


 何の色も感じない声。呆れられすぎてしまったのだろうか。……悔しい。




 その後、ルーズが用意してくれていた朝食を食べ、ファイやセイランも連れて二人と二匹でギルドへ向かった。


「と、とりあえず、ゼミスが言っていたように、斥候を得意としている盗賊を雇えないかギルドに相談してみるのと、日記に書いてある遺跡について聞いてみましょう」

「あぁ」


 リーゼさんはいつもの騎士装備で、僕は革鎧を着ている。ルーズが粗悪品を使うなって、新しい革鎧をくれた。ゼミスのお下がりらしい。


『グロース〜』

「うん?」


 あるいているとファイが、僕の頭でくるくると回りながら、僕の名を呼ぶ。


『なんか元気ないー?』

「いや、そんな事ないよ。お前は朝どこ行ってたんだ?」

『他の子に挨拶してきた〜。お邪魔してるね〜って』

「他の子?」

『ここ周辺にいる精霊〜』

「へー精霊にもそういうのがあるんだな」

『うん〜。特にここの近くには土の大精霊様がいるから、ちゃんと挨拶しないといけないんだ〜』

「へー土の。……土の大精霊!?」


 僕が驚いていると周囲の人達が変な顔で見てくる。そういや見えていないんだった。こういう時不便だよな。


『不便って、僕グロースの考えてる事わかるよ?』

「うぉう!?心を読むなよ……うん?」

『前にも読みながら、グロースの言葉を復唱したでしょ。僕達は人の思考も、魔物の思考も読み取れるんだよ』

「あーそういえば……」


 蘇るトラウマ。第一回お姫様抱っこの日。


『面白かったよねー』


 もしかして、考えるだけで伝わる?会話いらない?


『うん〜。契約してるから、僕の声もグロースに届くし。心で呼んでくれたら、僕はすぐにグロースの所にいけるよ』


 本当か!?知らなかった。色々知らなかったなぁ。少なくとも声に出す必要が無いことは先に言って欲しかったなぁ。


『僕は面白かったけどねー』


 おーまーえー!


『わー!くすぐったい〜!』


 頭上のファイを鷲掴みにして、もふもふの刑に処する。もふもふだ。


『グロース元気になった?』

「……なったな」

『良かった〜』


 ありがとな。


『うん!』




 ファイのお陰で、気分はそこそこに良くなったし、ギルドにもついた。


「とりあえず受付に行きましょう」

「あぁ」


 僕の言葉にリーゼさんは頷くも、どこか上の空で、ずっと何かを考えているように見える。


「グロースじゃねぇか。嬢ちゃんも、おはよーさん」

「パラズさん!おはようございます」

「おはようございます」


 ギルドへ入ってすぐにパラズさん率いるエイルメントの四人と会う。


「今日はどうしたんだ?」

「えっと、遺跡に入る為に最低限必要だって言われてて、斥候職の方を雇いたくて、相談しにきました」

「おー!そうかそうか。しかし残念だなぁ。今はフリーの斥候職が居なかったはずだぜ?確か、銀級パーティの[三度の飯より遺跡が好き]ってのが雇っててな。というかフリーの斥候職っての自体が少ないしな。というか俺にはバックパッカーを雇った方が良さそうに見えるがな。お前のそのバックじゃ大したものはいらねぇだろ」


 パラズさんに指差されたのは、僕がいつも肩に背負っているバックパック。遺跡へ行く際は水と食料と光源用の魔石を主にいれている。一応母さんのお下がりで、見た目よりは物が入るように魔法が施されている。ただオーガなどのレベルで大きな物は入らない。


「一応見た目より多くの量は入るようになってますけど」


 リーゼさんの大剣とかも入るし、色々詰め込むと割とすぐに限界はくるけど……。


「はえー魔道具か。良いもん持ってんな。使い込まれてるみたいだし、貰い物か?」

「母のお下がりでして」

「おー。良いもんくれたなー」

「お話中のところすまない。用があるんだ。この辺でいいか?」

「おっとすまん、引き留めて。じゃあなグロース。リーゼ」


 リーゼさんは割と強引に話を切りあげ、受付の方に進んで行った。


「遺跡調査に慣れている冒険者を雇いたい。できれば、斥候職を」

「しょ、少々お待ちください」


 ギルド役員の方はリーゼさんの圧にびくりとしながらも、後ろの方から資料を取り出して見せてくる。


「現在、当方のギルドに所属している斥候職の冒険者は六人。その内四人はパーティに所属しており、二人は単独での行動を主としていますが、そのお二人共今は依頼で他のパーティに雇われていますので、雇う事は難しいかと」

「……なら、単純に遺跡調査の経験が多い人間を」

「それも正直難しいですね。大体の方はパーティで動いてらっしゃりますし、単独の方は銅級から銀級が主ですので、リーゼ様の期待する様な方は紹介出来ません。申し訳ございません」

「…………そうか。紹介できそうになったら連絡してくれるか?」

「それは勿論です。あとはちょっとお金がかかりますが、他のギルドへ打診する事も可能ですが……」

「そこまでの必要はない。……この事については、紹介できるようになりしだい、連絡してくれ。次の質問だ。唐突で悪いが、この日記に記されている遺跡について詳細を知らないか?」


 そういってリーゼさんは古びた日記帳を見せる。


「えっと……この場所はゴブリンの溢れた遺跡から更に西に馬を使って五時間くらいの場所にある遺跡ですね。土の精霊がいるという噂もあります。難易度は周辺の遺跡よりも高く、今のリーゼ様達で行くのはオススメできません」

「どのくらいの練度ならば行ける?」

「少なくとも金級が三人。これが最低条件です。荷物番……バックパッカーも雇いたいですね」

「……なるほど。因みに、彼と二人で行くならば、どこがいいだろうか」


 ちゃんと僕の事も考えてくれてる……嬉しい。や、けどこれ本当足引っ張ってて申し訳なくなるなぁ。


「今の所、昨日鎮められたゴブリンダンジョンくらいですかね。今ならば数も少なく、周りやすいと思います。見入りも少ないと思いますけど。一応依頼がいくつかありますし、行ってみます?」

「……うぅむ」

『ええー。ここまできて行かないのかなー』


 僕も行きたいけど、あんまり口出せそうな雰囲気じゃないしなぁ。というか僕らパーティ登録とかしないんだろうか?


「今日はよしておこう。また明日くる」

「畏まりました。お待ちしております」


 リーゼさんは首を振り、引き返していく。


「り、リーゼさん?」

「……今日は家で君の訓練をしよう。経過を見て、ゴブリンダンジョンに挑戦だ」

「はい!」


 なんとかして、ついて行けるようにならないと……。


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