16話 僕達とオーガ
短いけどキリが良いので
目の前には大きなオーガが一体。対するは魔法使い一人と、騎士が一人、剣士 (のつもり)と二匹。リーゼさんに目配せしながら、僕はオーガの方へと走り出す。
「まずは三十秒ほどお願いしますね!」
「まずは?!」
そう振り返るももう遅い。僕はオーガの前へ。近くで見ると一層巨大に見えるが、竦んではいられない。
「ゴォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「くっ」
「セェェアッ!!」
僕はオーガの咆哮によろめくも、リーゼさんはその咆哮に負けないくらいの声を上げて大剣を振り下ろす。
それを体躯に似合わない俊敏さで避け、丸太のように太い腕を叩きつけんと振り払うが、既にリーゼさんも退避していた。
「グロース!奴は見た目よりは早いが、ゴブリンなどよりはよっぽど遅い。気を引きつつ、動き続ければ勝機はある!!」
「わ、わかりました!」
僕は剣を握りしめ、走り出す。
「うぉおおおおお!!」
オーガは先ほどと同じように、手を振り上げたので、それを滑り込んで股下を抜けながら避けて、振り返りながら足の健に向けて剣を叩きつける。
「グゥオアッ!」
多少の切り傷はついたけど、あんまり効いている様子はなく、地面を揺らしながら僕を捕まえようと奴は振り向いた。
僕はギリギリでその手から逃れ、その隙をついたリーゼさんの一撃が僅かに剣閃を残しながら、逆袈裟にオーガの背を斬り裂く。
更にその剣の勢いを利用して背後に跳ぶという意味わからん事までやっていた。どんな膂力してんのあの人。
オーガは背中の痛みに憤怒の表情を浮かばせ、僕からリーゼさんにターゲットを変えた。
「だけど、そうやってリーゼさんを見るなら!」
ファイに協力を頼み、魔法陣を展開。陣数は一陣。
『「ファイアーボール」』
通常のファイアより、威力、速度共に上昇する初級火魔法だ。
ファイア––ボールはオーガに着弾すると同時に小爆発を起こし、その背の傷を焼く。
「グゥゥラァ!!」
「あっれぇ?!効いてない!?」
だが、オーガは激昂したまま、リーゼさんへ向かっていき、また彼女も同様にオーガへ向かって走っていく。
二人の距離があと数歩くらいになった瞬間オーガは大きく踏み込みながら、両の手を握り、叩き下ろす。そこには剣も構えられずにいたリーゼさんが––––霞となって消え、
「えっ!?」
オーガの叩きつけによって起こった土煙の中から、リーゼさんが飛び出して、叩きつけのまま姿勢の低くなっていたオーガの首元を斬り、オーガは驚きのまま尻餅をつき、首元を抑え、そのまま倒れてしまう。
「首の骨まで斬った。最早奴は皮で繋がっているだけに過ぎん」
「す、凄すぎだよリーゼさん」
「な、何者なんだ君は。ほぼ単独でオーガを倒したのか?武器を持っていないとはいえ、パーティを組む必要がある魔物を……」
エヴァンさんは展開しつつあった魔法陣を打ち消して、唖然とした表情でその有り様を見ていた。
「ですよね……。リーゼさん。あのさっきリーゼさんが消えたのってどういう?」
「セイランが彼処に私がいたようにオーガを幻影で惑わし、私は離脱。オーガが振り下ろしを行った所で斬り込んだのだ」
戦えるって意思表示してたけど、そんなレベルで戦えたんだセイラン。凄いな。
「魔法なの?」
「キューキュ」
違いまーすと言わんばかりに首をぷいぷい横に振るセイラン。セイランの魔物としての能力か何かなのか。
「エヴァン殿、他に地響きなどはあるか?」
「ないね。あとはリーダー達を待つだけで良さそうだ」
「そうか」
それから、待つ事一時間程で、三人のパーティが地上へ戻ってきた。
「おーう!戻っ……オーガじゃねぇかエヴァン!?」
「すごーい。エヴァン達で倒したの!?」
「よくやったな」
帰ってきた三人は口々にエヴァンさんを褒めるが、本人は苦笑しながら否定する。
「俺は何もやってませんよ。やったのは彼等だ」
「本当かよ?ルーキー」
「あ、いや、僕もそんなにです。リーゼさんが殆ど一人で倒しちゃいました」
「いや、流石に一人では無いよ」
「それにしても凄いだろ。ヴェノン、スイ。街から馬と台車借りてこい。こいつを運ぼう」
「おう!」
「あいよー」
リーダーに命じられた二人が、街に向かって駆けていく。
「名乗んのが遅くなったなルーキー。俺はバーンズ。エヴァンと同じ金級で、街に行った二人とエヴァンと俺を含めたパーティ、エイルメントのリーダーだ。よろしく頼むな」
「はい。僕は銅級のグロースです」
「私は金級のリーゼです」
「おう。よろしく。とりあえず奴らが帰ってくるまで暇だからよ、どう倒したか教えてくれよ」
「了解です」




