15話 僕と騎士様 アホと私
あれ?あれれ?どっちだ?!色んな人に道聞いてるのに、全然たどり着かないんだけど!!鐘の音は定期的に二回ずつ鳴らされているから、多分まだ魔物はいるんだろうけど……。音の方へ走ろうとしても、道が入り組んでいてわかりにっ!?
「全く––––。君はいつもそうだな」
風景が急速に変化して、空が近くなる。見ればリーゼさんに抱かれて空を跳んでいた。本当に一体どういう力をしているんだこの人。
「リーゼさん!?」
「君と冒険をすると決めたのだから、君が一緒にいないと」
「は、はぃ……」
鎧兜を被っているのに、その隙間から覗くリーゼさんの瞳ほ綺麗カッコいい可愛いが混ざり合って直視できない。
『お姫様抱っこだー!お婿に行けない、お姫様抱っこだー!』
「キュキュキュー!」
でもね、助かったけどね、なんでまたお姫様抱っこなのリーゼさん!?そこの小動物達は僕の傷を抉らないで!?
「すまない。これが一番早く運べるんだ」
「前にも聞きましたね」
僕は諦めてされるがままに。
そして未だ鐘の鳴り響くソーズ西門の近くの家の屋根に僕達は到達した。
「な、なんか凄いですね?」
「さて……どこから斬りこんだものか」
門は半開きにされ、其処を大楯持ちの冒険者が護り、背後に槍使いが何人か固まって、襲いかかってきている緑色の亜人、ゴブリンを滅多刺しにしているところと、恐らく上の方で弓を射ったり、魔法を撃ったりしているパーティがいるようだ。
しかし、外の方から駆け込んできているゴブリンの数は減らず、大楯と槍使いのパーティが瓦解しそうだ。
「とりあえず、あの門に近いゴブリン達から片付けましょう!」
「……できるのか?」
「で、できますよ!!さぁ!行きましょう!僕達の記念すべき一戦目です!!」
『いくぞー!』
「キュッキューウ!」
「てかセイランって戦えるの?」
「キュッ!」
セイランはやれるよっとばかりに胸を張る。
「信じるよ?じゃあ、行きましょう!!」
「降りれるか……?」
「…………お願いします」
そうして、締まらないまま僕らパーティの初戦闘は始まった。
「加勢します!!」
「ぬ!?」
「グギッ?!」
僕は大楯使いの前を走って、ゴブリンを蹴り飛ばす。
「おい、邪魔だ!陣形を崩すな!」
「えっ?」
「素人はすっこんでろ!」
「えっ!?」
僕に蹴っ飛ばされたゴブリンは直ぐに立ちあがり、棍棒を振り上げたところで、リーゼさんに両断された。
「すまない!」
そう言ったリーゼさんに首根っこをガッと掴まれ背後に戻される。
「何をしているんだ君は。この流れなら、私達はあの大楯のパーティが討ち漏らしたモノを狩るだけで充分な筈だが?」
「えっ?だって、冒険家だし、前に出て戦いたい……」
「君にその実力があるのならな?」
凄い割と辛辣な事を言われている気がする。
『おっこらーれたー!』
怒られていると、連続して鳴らされる鐘の音が一つ増えた。
「ルーキー!!駄弁ってないでこっち来い!!数が多すぎるから、打って出る!ついて来い!!」
「はぇっ!?」
「……」
冒険者のパーティが増え、大楯のパーティが左右にズレて、道を空け、そこに土魔法で階段の様な壁が作られた。
「行きたいなら、行こうか。私が君を守るさ」
「リーゼさん……。行こう」
何処までも、リーゼさんから見て庇護の対象なのか気になったけど、今は目の前のゴブリン達に集中するとしよう。
既に僕達を置いて遊撃に出たパーティを追って僕達は壁を乗り越えて、ゴブリン達を斬り倒す。
「武器はちゃんと通じる……なら、僕だって!!」
まずは目の前にいるゴブリンをと剣を振り上げる瞬間、ゴウっと音を立ててリーゼさんが大剣を振るい、ゴブリン達が軒並み斬り飛ばされる。
「行くぞ」
「は、はい!」
ゴブリン達は急な同胞の死にも関わらず、間髪入れずに襲いかかってくる。
「ファイ!」
『ファイアー!』
上空から、やや威力の高いファイアが門の真下らへんのゴブリン達を襲い、よろめいた所を切り裂いていく。
「これなら全然行けそうですね!!」
「そう、だな」
––リーゼ視点––
参ったな。グロースが思ったより戦えない。剣を振るう速度とか、足運びとか、そういう問題ではなく。
大楯と槍を構えているパーティの前にわざわざ出るあたりが怖い。彼に戦い方を誰も教えなかったのだろうか。
「これなら全然行けそうですね!」
「そう、だな」
正直全然行けなそうなんだが、同意しておく。……しかし、これは課題が多いな。一体に集中し過ぎるのも良くない。前から思っていたけど、周りが見えなさ過ぎる。一対一なら辛うじて戦闘にはなるが、これで弓兵等がいたら、彼は死ぬ。
「キュ!」
そして逆に驚いたのはセイランの戦闘力の高さだ。まぁその大きさ故、直接的な攻撃力は殆どないが、恐らく幻影の様な物を相手に見せられるようで、何体かのゴブリンを翻弄している。それを私が斬り倒す事で次に進むというのを繰り返しているわけだ。
「ルーキー共!来れたのか!中々やるじゃねぇか!」
そうしているうちに、先に出て行ったパーティに追いついた。
「へへっ。ありがとうございます」
「……」
笑っている場合か。君はそもそも大して倒せていないだろう。
「そっちの……騎士様は大丈夫か?静かだが……」
「問題ない」
と、言いながら這い寄ってきたゴブリンを唐竹に斬り、横に薙ぐ。
「よし。なら手早く説明をしよう。今向かっているのは、ソーズから更に西に向かうとある、通称ゴブリンダンジョン。まぁこの魔物の氾濫を見て分かる通り、ゴブリンの多く出る遺跡だ。俺達のパーティはその遺跡を攻略するから、君達と、そうだな、エヴァン。残ってくれるか?」
「了解しました」
「え。遺跡……」
頷きつつも、遺跡に入りたそうにするグロース。頼むからやめてくれ。勇気があるのと無謀は違うんだぞ?
「ルーキー。エヴァンは三陣までの水と土の魔法が使える。上手く戦えよ」
「は、はい!」
返事は元気だが……。まぁいい。私が守るだけだ。
残してくれた者が、魔法を使える事は頼もしい。
「エヴァンです。リーダー達が潜って行ったのなら、攻略されたも当然です。暫し待ちましょう」
「はい」
ゴブリン達は軒並み倒されているのか、遺跡からはほとんどと言って良いほど出てこなくなってきた。
「………………」
「不満そうだな。グロース」
「そんなこと、ないですけど」
見るからに不満そうだ。気持ちはわからんではないが、今の私達は遺跡に潜る為の装備もまだ不完全だし、ゼミスに必要だと言われたシーフも雇っていないのだから、行くべきではないだろう?それがわかっていないのか。
なんだか、もういくつか歳下の子供を見ている気分だ。アイリの方が分別がある様に見える。
「……君、冒険者に向いてないんじゃないですか?」
「はい?」
「いえ、剣はそれなりに使われている跡がある割には、剣筋はブレているように見えますし、さっきも青銅の盾達の前に無理やり出ていたじゃないですか」
「それは、早く戦いたくて」
青銅の盾というのは、さっきのパーティの名前か。正論が耳に痛いな。……グロースはただ否定されたことに不満そうだが。
「君は戦闘狂か何かなんですか?早死にしたいなら止めませんけどね」
「早死にって。そんなに拙く見えますか」
「ええ。冒険者になりたいのなら、先に良い師を得るべきですね。なんなら彼……女性ですかね?」
「あぁ。わかりにくくてすまない」
「いえいえ。この方に剣だけでも教えて貰うと良いんじゃないですか?首にぶら下がってる証を見るに、俺と同じ金ランクのようですし」
「金!?僕と同い年くらいに見えるのに、凄いですね」
「褒めてもないもでませんよ」
と言いながら、エヴァンは胸を張る。
「っと、何かこっちに向かってきますね。この振動は、少し大きな魔物……ちょっと隠れましょう」
「了解」
「はい」
遺跡の残骸に身を隠すと、ゴブリンの四倍はある体躯の大きな魔物が、遺跡の周期を見渡すように歩いてきた。
「……あれは、オーガですね。近くの遺跡から稀に出現する魔物です。今の私だけでは厳しいですが、今遺跡に入られるわけには行きません。戦いましょう。俺は三人の土魔法を使います。時間を稼いでください」
「……了解」
「……は、はい」
彼を守りながらの戦闘になるな。無事に済むといいが……。
そう思う私をよそに、彼はワクワクしたように笑みを浮かべていた。




