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14話 騎士様と僕と新しい都市

予約していたつもりでしていませんでした!!

すません!!




 明朝、母達に盛大に見送られ、少しの寂寥感と、これから歩む旅への期待に胸を膨らませて、ガンズを出た。

 山道をガタゴトとゆっくりと進む馬車が二つ。一つは使者殿が乗る豪華な馬車。二つ目は交替で護衛が使う馬車で、僕達はそれに乗っていた。御者に近い席に僕とリーゼさんが対面する形で座っている。


 そして、旅のお供にと母さんに言われたアイリは付いてはこなかった。暫く、母さん達と一緒にいたいそうな。代わりにこんな小さななりでも魔物だという青色のネズミを渡してきて、「必ず行くから、先に行ってて」と、彼女は言った。


「そういえば、リーゼさん。リーゼさんに渡したい物があるんだ」

「なんだ?」

「えっと、昨日の市場で––––」


 細工屋さんは自分で買ったって言えよ!って言ってたけど……。買った時は自分で言いたいし……。


「リーゼさんにって貰ったんだ。リーゼさんがもし、また記憶喪失になる様なことがあったらいけないからって。これに意識を集中すると記憶を日記みたいに残してくれるらしいんだ」

「そうなのか……それはありがたい。戻ったら礼をせねばなるまい」


 そういうと、早速耳へと付け微笑んだ。なんだか最近リーゼさんがよく笑う様になった気がして嬉しいな。


「そうだね」


 隣を見れば、ファイと青色ネズミのセイランがじゃれあっている。


『ていていてーい!』

「キュキュキュキュー!」

「魔物もファイが見えるのか?」

「キュ!」


 セイランはそうだよと言わんばかりに、両手を挙げる。


「元気な従魔だなぁニイちゃん」

「ですよねぇ」


 セイランの為に間を開けて隣に座る護衛の冒険者が、セイランを指差して笑う。上のファイは見えていないのだろうな。


「しかし、失った記憶を探す為に、二人で旅に出るなんてなぁ。頑張るねぇ。青春だねぇ」

「ははは」


 道程は平和そのもの。魔物も余程強い個体でない限り、こういう団体には手を出してこない。


「そういえば、リーゼさんって鍛錬とかどうしてるの?」


 家にいた時も何かしていた風には見えなかったけど。


「特にこれといった事はしてないが……」

「え?してないのにあんなに動けて、その鎧が着れるの?」

「あぁ」


 凄いな。僕は寝る前に筋トレと、走り込みはしてるんだけど……なんでそんな差が出るんだろうか。


「しかし平和だなぁ」

「そりゃそうだろ。あのジグリッドが護ってる区画だぞ、この辺は。魔物も盗賊も滅多に出やせんだろ」

「え?」


 誰?


「何呆けた顔をしてんだ?お前んとこのギルドマスターだろうが」

「はぁ!?」


 ジグさんって、ジグさんじゃないの!?てかなんだ?護ってる?!


「ジグリッドが、遺跡から出てくる魔物の量を統制してるから、魔物の氾濫もねぇし、でも冒険者が食うに困るまで出てこねぇわけでもねぇようにしてるのが、ガンズのギルドマスターがすげぇって言われてる理由だぞ?」

「そんなにコントロールできてたの?」

「あぁ。他の都市じゃそうはいかねぇ。氾濫は半年に一度は起きかけたり、起きたりするし、死者も少なからず出る。それをジグリッドが一人で止めている。それがどれ程凄い事か」


 ジグさんすげぇ。そんなに凄かったんだ。待ってその人と一緒にパーティ組んでた母さん達ってどんだけ強かったの??


「それも、あと少しで変わるぞ。そろそろガンズの統治区域から、ソーズの統治区域に変わる。別段治安が悪いわけじゃないが……魔物の量は増えるぞ……」


 ゴクリと唾を飲み込むと、護衛のおじさんがニカッと笑う。


「ま、レギオンさんがいるからな。何が出ても問題ないさ」

「え?」

「もしかしてレギオンさんについても知らねぇのか?驚いたな。……時代かねぇ」

「えっと、無知ですいません。レギオンさんってそんなに御強いんですか?」

「あぁ。シルズ最強の冒険者だったんだが、領主様と意気投合したとかで、そっちで雇われたらしい」


 護衛の方々は、ガンズから買った魔物の素材の見張りが主で、レギオンさん自体は特に護る必要がないらしい。


「確か最後は白銀級、ガンズのジグリッドとか、全力突貫娘と一緒の階級だよ」

「全力突貫娘?」

「なんつったかな。可愛らしい名前の……うぅん?」

「もしかして、リリィって人では?」

「あーそうそう。なんだお前さん知り合いか?」

「彼は母君の息子だ」

「おぉう?!マジか!ニイちゃん突貫娘の息子か!そうすっと、突貫娘って結構歳食ってるのか?もうそりゃ、突貫ば……」


 ここに母さんはいないはずなのに、背中に寒気を感じた。護衛のおじさんもピタリと止まり、周りを見回した。


「い、今のは?」

「わからないです。いないはずなんですけど」


 まさか追っ掛けて来てるなんて事……ないよね?




 そんな事は一切なかった。

 ソーズ付近では多少魔物は出たが、リーゼさんが危なげなく倒して、護衛の人が褒めていたり、逆に僕が苦戦しながらも倒して、苦笑されたり程度で終われた。


 そして、今、ソーズの大門の前にいる。レギオンさん達とは軽く挨拶を交わして、早々に別れた。


「ふむ……見た目はガンズとそう変わらないようだな」

「ですねぇ。ただ壁の紋章が違ったり、所々壁に攻撃された跡がありましたし、さっきのジグさんがガンズを護ってくれていたってのも本当なのかもしれませんね」

「まだ信じていなかったのか」

「ちょっと胡散臭さがどうも印象に残りすぎて」


 魔法で空飛んだりしてる人間なんて見た事なかったから、凄いんだろうけど。


「すいません、僕達ガンズから来ました、冒険者のグロースと」

「リーゼだ」

『ファイタン!』

「キュキュ!!」

「です。入れてもらえませんか?」


 ファイは勿論見えていないし、セイランは魔物と気付かれていないのがなんだか微笑ましい。


「待て。確認する。証を見せろ」


 僕はギルドから渡されている証を見せる。リーゼさんも同様に証を見せた。

 これらはギルドに冒険者登録すると手に入れられる、身分証だ。階級に応じた色に変化するので、これを見れば力量もわかるという優れ物だ。

 まぁ、これがなくとも、お金を払うなりして町に入る事は可能だが、これがあった方が手続きが簡単なので、複数の街を移動する場合は、取っておくと便利なのだ。


「銅と金か。坊主はもっと頑張らなきゃだな。確認も取れた。入りな」

「ありがとうございます」


 ごもっとも。頑張りたいところだ。


 ついに、ソーズに入る。その瞬間、カランカランと大きな鐘の音が響き渡る。


「運が良いな。魔物の襲撃だ。この音は西門からだ」

「魔物の襲撃なのに、運が良いんですか?」

「鐘の音は二回ずつで区切られているから、大した事はないだろう。だから、襲ってくる魔物を狩り放題って感じでな。これがシルズだったらまた大変なんだろうが。ほら、早く行った方がいいぞ?狩る魔物がいなくなっちまうぜ?」

「わかりました!リーゼさん、ファイ、セイラン!行こう!」


 僕の声へ、それぞれ返事を返し、僕らは走り出した。


「あ、お兄さん、西門ってどっちですか?」


 走り出して数秒で僕は彼らと離され迷子になり、近くを歩いていた青年に声をかけたのであった。




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