ミスター320
「随分偉そうな口を聞くから見てみれば、ただの小僧じゃないか。学長殿も耄碌したのですかな?こんな小僧を校長とは」
学長先生には喋らせないよ。
「お絵描きクラブの皆さん、入学試験はまだですよ」
「なんだと!」
下っ端はどこの世界でもキレるのが早いね。
「魔法陣とかいう子供のおもちゃを書き写すだけのお絵描きクラブでしょ?何か僕、間違ったこと言いました?」
「我々の魔法陣がおもちゃだと言うなら仕方ない。今後は三国には下ろさないようにしよう。別に他にも売る場所はあるのでね」
「どうぞ。他の場所であの欠陥品を売り続けて下さいな。あの程度なら我々の研究室なら誰でも書けますから」
「そこに居る裏切者か?あいつは何も知らんぞ」
「インクに混ぜる魔物の血ですか?あんなものが秘密のつもりでいるんですかね?ハッキリと断言しますが、すべての種類の魔法陣は改良済みですし、量産も済んでいます」
「そんなわけが無かろう。たかが数人でどれだけ魔法陣を作れるというのだ!魔力の消費がどれだけになるとおもっているのだ!お前ら如きの魔力でどうやってそれを作れるというのだ!私は魔力が320もあるのだぞ!それでも一日20枚がやっとなのだ」
「私は魔力が320もあるのだぞ!だって」
柑奈の物真似が絶妙に腹立たしい。
「なんか魔力がその位だと体が軽そうで羨ましいね」
「320か……。まあ、冒険者なら駆け出し卒業ってとこじゃない?」
柑奈とエリちゃんチクチク煽り始めた。
「さて、魔術師ごっこしているだけの君達は知らないだろうことをいくつか教えてやろう」
一旦、言葉を切った。
反応は無い。
「まず、そもそも魔力が320程度ならその辺にゴロゴロ居る。うちの姉は魔術師でも無いが800は越えているしな。別に驚くことじゃ無い。むしろ、魔術師のくせに320程度で多いと思っている世間知らずに驚くね」
「何を……。そんなわけが無かろう。魔力は生まれつき決まっていてレベルを上げる以外では増えないのだぞ」
「貴様は本当に世間知らずだな。少なくとも魔術を使えば嫌でも上がるぞ。お子様向けのおもちゃの魔術なら上がらないけどな」
「嘘をつくな!」
「信じたく無い気持ちはわからんでも無いが、うちの研究室で魔力1000を下回ってるのは居ないぞ。ついでに教えておくが僕の魔力は20000を超えている」
「そんなことがあるわけが無い!」
「そもそも、まともに魔術の研究をしてるなら、今までのことは全部常識だぜ。既存の魔法陣なんて子供のおもちゃだって、昔の魔術書にいくらでも書いてあるだろ?」
「そんな魔術書なんて聞いたことないわ!」
「おいおい。まさか魔術を研究するのに古代文明の魔術書も調べないのか?それともあれか、古代の文字が読めないくせに魔術師名乗ってるのか?」
「……そんなものは必要ない!」
「確かに魔術師ごっこには必要ないかもね」
エリちゃんも言いますね。
そんな風に話しながら一方では60人強を一人一人鑑定していた結果、探していた人間が見つかった。
いや、探していた以上だった。
マルコ・サンダーランド。
サンダーランド王家の五男だ。
まだ16歳か。
「ともかく、我がギルドとしてはそこの小僧如きが校長とは認められんな」
「そもそもお絵描きクラブ如きに別に認めて貰わなくても結構なのだが。それとも何か?一つくらいは私に勝るところがあるとでも言うのかい?おもちゃの魔術で魔術師ごっこをしてるだけの君たちが」
「私は魔力が320もあるのだぞ!」
「ははっ、320ね!」
「やめてやれよミスター320だって、何か一つくらいはできることがあるはずだろ」
柑奈の物真似は悪意100%だ。
源太くん、なかなかいいネーミングをありがとう。
早速僕も使わせてもらうよ。
「そうだな、ミスター320。あなたに何か一つでも私に勝るものがあれば校長を下りてもかまわないがな」




