原因は意外なところにあり、意外なところから文化ははじまる。
「そんな……。ミレーネさんはこんなに美しいのに」
「例えばベティのように美しいながらどこか愛嬌のあるような、そんな女性らしさのある姿に憧れますね。私は大きくて、ともすれば男性のようでもありますし」
確かに背は高く、凛々しい顔立ちではある。
男性的と言えば言えなくも無い。
だが、それが女性としての美しさを損ねているわけでは決して無いはずだ。
「私はミレーネさんみたいな、凛々しい美しさに憧れるなあ」
「ただ、ミレーネ殿下ほどお美しいと、なかなか周りの者が安易に近づけないのもわかりますよ。圧倒的な美しさは時に威圧感を与えますから」
おまけに優秀な方ときている。
この方に釣り合うだけの男性はなかなか居ないだろうな。
「でも、それが魔術と関係あるのですか?」
「あまり鏡を見ないでしょう?身の回りのことはお付きの方に任せきりで、最低限しか御自分のお姿を見ないのではないですか?」
「確かにそうですね。着せてくれるものを着て、髪も整えて貰います」
「それで、御自分の姿をイメージするのは難しいのではないですか?」
女王も殿下もエリちゃんも一様に頷いた。
「どちらかと言うと、こう言うことはまず女性に気づいて貰いたいんですがね」
「……おっしゃる通りです」
エリちゃんなら気づいてもおかしくないんだけどな。
「でも、そのために毎日鏡で自分の姿を見なくてはいけないってことですか?」
それだけでは解決しないんだな。
「好きじゃないものを細部までイメージ出来るとは思えないですね。殿下が御自分の姿を好きになるとは言わないまでも納得できない限り、イメージ出来るようにはならないんですよ」
「私はどうしたら……」
「いっそのこと、人からどう見られようが気になさらない、ってのはどうですか?」
「はい?」
「背が高い。美しくて冷たそうに見える。男性みたい。それがどうした、ってことですよ。別に他人からどう見られようが知ったことではないでしょう?みんながみんな同じように見るわけじゃないですしね」
「それはそうですけど」
「誰かが貴方を嫌いな理由は、そっくりそのまま別の誰かが貴方を好きな理由です」
三人とも無言だ。
「背が高いことも、男性的だということも、それ自体を魅力的だと言う人は多いですよ」
「分かっては居るんですが……」
「いっそのこと男装したらどうです?毎日毎日違う御自分を演じて見たらどうです?そうしたら、仮に気に入らない自分であっても明日はまた違う自分です」
「ミレーネさん、すっごい似合いそう」
「むしろ、そっちの方がミレーネの良さは出るわね」
男装って、結局のところ女性の部分がかえって出ちゃうんだよね。
「毎日違う御自分に逢えるって、鏡を見るのも楽しくなりませんか?」
「そうですね!やってみたいと思います」
この世界でも、コスプレという文化が今芽を出そうとしているのかもしれない。




