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コンプレックス?なんと贅沢な。

「僕に解決できそうなことなら、解決しますよ。言ってみてください」


ハナからミレーネ殿下はそのつもりだったらしい。

少し口元を緩めて「ありがとうございます」と頭を下げた。


「比較的魔術は得意なほうでした。回復魔術、火属性、水属性、無属性、闇属性は確かにある程度以上使えます」


これだけ出来れば、魔力を流すとかそういう初歩の問題では無い。


「時空魔術の幾つかがどうしても出来ないのです」


「具体的にどのような感じになりますか?」


「転移と時間停止が失敗しがちです」


「収納は大丈夫なんですね?」


「はい」


「少し考える時間を下さい」


さて、考えよう。

実際、ミレーネ殿下はかなり魔術の出来る人だ。

魔力の循環も淀みがない。

だとすると、問題は魔力以外の所となる。


必然的にイメージを構築する方に問題があることになる。


イメージを描くだけの画力の問題なら、他の魔術にも影響があるだろう。

念の為確認する。


「ミレーネ殿下は絵はお描きになりますか?」


「絵ですか?時間を見つけては風景画を描いたりはしますけど」

「ミレーネさんは絵もお上手ですよ」


エリちゃんは流石に僕がなぜ絵のことを問いたいのかわかったらしい。

ちゃんと「上手だ」と一番欲しい情報をくれた。


あとは視力の問題も多少可能性はある。

通常の魔術においては多少視力が悪くてもイメージの構築に問題はない。

だが転移や時間停止は自分の姿を細部までイメージ出来ないとなかなか難しい。

そして、普通に生活しているぶんには、視力の悪化というのはなかなか気づきにくい。


簡易的な視力のテストをしてみた。

確かに良くはない。

むしろかなり視力は悪いようだ。

だが、これだけが原因では無いだろう。


なんとなく先程から感じているミレーネ殿下の持つ寂しさのようなもの。

おそらくはそれが一番の原因じゃないかと考えられる。

でも、それをどう確認し、どう伝えるのか。


「例えば、転移の失敗なんかは服だけ置いてきてしまったり、時間停止は自分も止まってしまったりしませんか?」


「はい、恥ずかしい話ですが、まさにそのような失敗が多いです」


時間停止の魔術は自分以外の時間を数秒止める魔術だ。

自分も止まってしまったら意味は無い。


「大変失礼な質問にはなりますが、もし生まれ変われるのなら、どんな姿で生まれ変われりたいですか?」


途轍もなく美しい。

でも、それ故彼女は自分の容姿が好きじゃ無い。


「……わかりますか?私が自分の容姿を好きでは無いことを」


「正直なところ、そこまで強い思いだとは考えて無かったですけどね」


そこまで強い思いだとはおもっていたけどね。

そうでもなきゃ自分をイメージ出来ないなんてなかなか無いことだから。


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