準備はとにかく入念に
別の準備。
それは、法律だ。
ザイルベルグ三国は各々法律を持っている。
が、どの国であろうが悪事は悪事でありそれほどの違いは無い。
また、それぞれ若い三国なので、法の整備が不充分で必ずしも自国の法律で対処出来ない場合があり、その場合は旧帝国法によることになっている。
学園都市ザイルベルグは三国に属さないため、本来は旧帝国法の下で裁かれるはずだが、裁判所を始めとした司法機能が無く、三国合同の警察機構があるだけなので、犯罪者の出身国に送致して裁判をすることになっている。
今回、僕は意図的に法の不備を、もっと正確に言うと構造上の問題点を利用していこうと思っている。
それどころか学長、各国の王も巻き込んで共犯関係を作ってしまうつもりだ。
実態はほぼ無いけれど、形式上存在する「帝国」を徹底的に利用しようというのが作戦の要だ。
まず第一に法的に有利な立場に立ちたい。
それには、形だけでも高位の爵位が欲しい。
僕が望むのは「帝国侯爵」
帝国の爵位などもはや実態のない国だから何の意味も無いとも言える。
だが、実は権威としては未だ現役だ。
自国の貴族内でも「帝国貴族」と「田舎貴族」と言うように明確な差別意識が働いている。
中には自国の伯爵でありながら「帝国子爵」の方を名乗る貴族もいる程だ。
無論、国として実態はない以上、分国以降帝国の爵位を与えられた記録は無い。
だが、与えようと思えば学長の気持ち一つで与えられてしまう勲章のようなものだ。
そういう意味で学長さえ抱き込んでしまえば簡単に爵位を得られると言うのは僕にとって都合がいい。
また、学園の魔術科の長というポストにある人間が三国の何処かの爵位を持つというのは公平性に欠けるとも言える。
諸々を考えると、僕が爵位を得られるのは帝国の爵位しかあり得ない。
それに、実態のない国の爵位を望むことは権力を望まないことのアピールにもなるのではないか。
僕は侯爵会議の席上、学長と三国の王に対し、魔法陣は解明済みで既存の効率の悪い魔術を全て改良済みである事、その改良済みの魔法陣を全ての種類において量産済みである事をまず伝えた。
僕の情報が逐一入るエルカディアの陛下はともかく、ラグランの王とカリムの女王はかなり驚いたようだった。
改良魔法陣をいつでも流通可能な状態にあるというのは、学長と三国の王に大きな勇気を与えたらしい。
「これで魔術師ギルドに悩まされることもなくなるだろう」
「少しは大人しくなるんじゃないかしら」
ラグランの王もカリムの女王も善良な感性の持ち主らしい。
「お二人さんよ、そう思うのも無理はねえけどさ、このタイカイって小僧はそんな可愛い奴じゃねえぞ」
はい陛下、仰る通り。
自覚はあります。
「魔術師ギルドの事を知った時、こいつがなんて言ったと思う?100%勝てる喧嘩は、これ以上無い稼ぎ時、だとよ。こいつ、魔術師ギルドを骨までしゃぶり尽くすつもりだぜ」
「だって、ここにいる誰もが魔術師ギルドはこの世から消え去った方がいいと思ってるでしょ?だったら、もう完全に犯罪者としてこの世から葬り去るのが一番良いでしょ」
答えてるようで答えない。
論点はズラしてナンボでしょ。




