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喧嘩を金にするには準備が必要

半年が過ぎた。

魔法陣も完全に解明された。

結局最後までわからなかった部分については、古代の文字を二つに分けて、それをズラして書いてあった。

しかも、そのズレ幅の大きさがそのまま流す魔力の量を表していた。


それと同時に、いくつか古代文明時代の文献にも当たってみた。

勿論今と言葉は全く違うし、魔術の基礎の部分は当たり前の物として書かれて居ない。


例えば、魔力の循環という言葉は頻繁に出てくるが、それがどういうものか、どのようにして魔力の循環をするのかは全く触れられて居ない。

多分、昔はその程度の事が出来ない人はいなかったのだろう。


魔法陣の魔術のロスの多さも理由がわかった。

魔術師からしたら魔法陣というものは、全く意味の無いものだ。

魔術の使えない人間が修練無しに魔術の砲台になるための道具でしかないからだ。

そもそも魔法陣は敵兵を捕虜にした後、砲台として利用するため開発されたらしい。


だが、人道的な問題でそのような魔法陣の利用が禁じられると、魔法陣は子供のオモチャとして使われるようになった。

子供のオモチャなので威力は極力抑えられる事が求められ、その工夫の一環として「魔力を敢えて複雑に流し、わざとロスを生む」手法が考え出された。


この時点まで、魔術師は魔法陣には大した興味を示さなかった。

どちらかと言うと、未熟な魔術師の小銭稼ぎとして魔法陣が作られていた。

だが、複雑に魔力を流す為に魔法陣が複雑化すると、その複雑な模様の美しさを一つの美術品と捉える動きが出てきた。


こうして魔法陣はより複雑で美しくという美術品としての進化を遂げ、より非実用的で無駄の多い物となっていった。


魔法陣の解明が済んだと同時に、既存の全ての魔法陣を新しく書き直し量産した。

魔術師ギルドがいつ流通を止めても良いようにね。

勿論、新たな魔術の魔法陣も作成した。

捕縛の魔術は陛下よりも先に、まず一番にあの時の近衛兵にプレゼントしたよ。


魔道具の研究も始めた。

義手を作る必要から始めた研究だが、これが実に面白かった。

魔術の恩恵を魔術師以外にプレゼントできる道具というのは、とても研究し甲斐がある。


ただ、義手の研究には絶対に必要なものがある。

それは実際に片腕の不自由な人だ。

陛下に相談すると、一人の男性を紹介された。

名前はロイター。

元魔術師ギルド員らしい。

彼は魔法陣を人質に取るような幹部の方針に異を唱えたところ、右手を切断され追放されたとのこと。

右手の切断で魔術を使えなくしたつもりなのだろう。


ロイターは勿論全面的に協力してくれた。

ロイター自身も魔術師を志した身として、僕らとギルドの魔術のレベルの差に愕然とし、改めて魔術師として勉強し直したいとも申し出た。


義手は、ほぼ自分の手として使えるレベルの物が出来た。

勿論、その義手で魔術を撃ち出すことも可能だ。


ロイターも魔力循環をすぐに覚え、日々修練を重ねたので、魔術師としての力はかなりのものになっていた。


この間僕は意図的に魔術師ギルドのことを「魔法陣を書き写すだけの代書屋」「魔術師ごっこをしてるだけのお子様」「魔術師見習いにも劣るエセ魔術師」「強制的に魔術を撃ち出すだけの残念な砲台」と言うようにしていた。


三人とロイターが煽る時に当たり前のようにこの辺りの言葉が脊髄反射で出るようにだ。


こうした魔術師としてギルドを追い詰める手段を準備しながら、別の道で追い詰める準備も同時進行させていた。


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