どちらが怖くて逃げたのか
大きな熊の魔物はやはりロックベアらしい。
で、われらがばあちゃんはロックベア相手に何をしていたのかと言うと
「最近、なんとなくプロレスが恋しくなってね。体と体のぶつかり合いってものをしたくなったのさ」
もはやこの世界にも向こうの世界にも、ばあちゃんとプロレスできる人間はいない。
だったら魔物相手だ、と言うのはわかる。
だが、こんな世間話をしながら、ロックベアの突進を涼しい顔で受け止めるばあちゃんの姿は、どう見てもおかしい。
大きさ的にはダンプカーだ。
加速は間違い無くダンプカー以上だ。
それを両手を広げてガッチリ受け止める。
まるで、若手の力士に胸を貸す横綱のように。
「ばあちゃんはまだまだこの子と遊んでるの?」
「なんだい?あんたたちこの子を仕留めに来たのかい?この辺じゃ数少ない私の遊び相手だし、出来れば放っておいて貰いたいね」
ロックベア側が遊び相手と認識してくれているか、甚だ怪しいところではある。
逃げ出さないところを見ると、遊んでいる認識なのかな?
その割にボロボロにやられてる感じだけど。
「この子はこうやって私が鍛えてるからね、普通のロックベアのつもりで戦ったら痛い目に合うよ」
魔物を鍛え上げてどうするつもりなのだろうか。
というか、さすがにSランク冒険者でも魔物を鍛え上げたりしたら問題にならないか?
「一応は、この子は私の従魔の扱いだよ。登録もしてあるし、この子から人を襲うことは無いからね」
じゃあ、倒したらダメな奴じゃん。
ってか、これだけの魔物なら冒険者が狙いに来ないのか?
「だから鍛え上げてるから、その辺のへっぽこ冒険者じゃ歯が立たないし、この子といい勝負しそうな奴らは、この子が私の従魔って知ってるしね」
なんか疲れた。
警戒してたらコレってのもあるし、ばあちゃんはやっぱり化け物だし。
見ろよ、エリちゃんの口が開きっぱなしだ。
「おや、エリザベス殿下もいるじゃないかい。やっと冒険の許可が下りたのかい?」
「はい!でも、まさかミヤコ様がこんなにお強いとは……」
「これでも一応Sランク冒険者の端くれだからね。まあ、亡くなった先代の陛下と大して歳が変わらないババアだから、驚くのも無理ないけどね」
「でも、そう思えないほど若くてお綺麗です!」
「はは、エリザベス殿下もお世辞ってもんを覚えたのかい?まあ、悪い気はしないけどね。よし、ダイゾウ終わりにするよ!」
この熊の名前はダイゾウか。
ちゃんと言うこと聞いて大人しくするんだな。
「なあ、ばあちゃん。さっきゴブリンの大きな群れが逃げて来たけど、ダイゾウが原因かい?」
「まあ、ゴブリン程度じゃ逃げるしかないわな」
大人しく戦闘せずに採取して帰るとするか。




