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殿下の尋問

「今のところは、新しい魔術を作るのが面白いってのはありますね。魔術の無い世界で生きてきて、それまではできなかったことが、魔術でできるのは楽しいです」


「その魔術をどう使おうとしているんだい?」


「使うべき人が使えるようにしたいです」


「例えば?」


「例えば捕縛の魔術って、凄く利用価値は高いと思うんです。先日申し上げたように、いずれ近衛兵には不可欠なものとなりましょう。それだけでなく、例えば旅商人なんかは積極的に戦いはしないけど、いざという時のためにレベル上げして少し強くなりたいと思ってるでしょう。そんな時、捕縛で捕まえるってのはリスクを抑えて戦闘ができると思うんです」


「確かにそうだな」



「そんな風にして、皆の暮らしが少し便利になればいいかな、って考えてます」


殿下は少し考え込んだ。


「父上を含め我々は、タイカイ君が時空魔術を覚えるのは時間の問題だと思っていたし、そこについての覚悟はしていた。ただ、破格の魔術の才能、いや既に実力と言ってもいいだろう。破格の実力を持つ君が何を望むかは、正直心配している部分もあったのだ」


それはそうだろう。

そう言う警戒心を持っていることは、僕にも予想はついていた。


「権力は望みません。財を成したいとも思いません。ただ、平民の感覚で多少の贅沢はしたいと思います。ですから、これは冒険者として生きていければ充分実現可能です」


「権力は望まない?」


「この世界では財を成す事と権力は非常に近い関係だと思います。だから、多くの人間がその二つを混同したまま求めてしまうのだと思います。ですが、権力って厄介でしょ?」


「それがわかってる人間がどれほどいるのか……」


「要りませんよ、そんな物。そこに伴う責任が大き過ぎます。殿下も大変でしょ?」


「それから逃げたくて冒険者をやっている部分もあるのだが、なかなか逃げられないものでね」


気の毒な話だ。


「僕は、気楽に魔術を研究して、それが誰かの為になって、多少の贅沢ができればそれでいいですよ。ただ……」


「……ただ?」


「どうしても頭を下げたくない相手に、頭を下げなくてよいだけの権威は欲しいですね」


「……なるほど」


「自分の魔術の研究に邪魔になるやつとは、ちゃんと喧嘩しますよ。そう言う意味では、学長陛下の提案は凄くありがたいと思っています」


学園の魔術科の長というのは、自分をある程度守ってくれる権威だろう。


「そうか……。まずは、今後安心して魔術を使って欲しい。勿論、君の判断で誰に教えても構わない。逆に私で答えられることなら答えるし、私も君に教わりたいことが沢山ある」


「どうしたんですか?」


「魔術の探求は君に任せよう。宰相の話が来ている。私は魔術でこの世界をより良くしたいと思っていた。だが、君に会ってはっきりわかった。君こそ適任だとね」


「僕は夢を託されたのですか?」


「私が見ていたものは、夢なんておこがましいくらいだ。君のように具体的な道筋もなく、ただ薄ぼんやりと願っていただけだ」


「宰相ですか。流石に冒険者は出来なくなりますよね?」


「息抜き程度かな」


アントニオ殿下は少し寂しそうだった。


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