盗みたいのはあなたの魔術です
冒険者ギルドでエリザベス殿下の登録をして、依頼をいくつか見繕う。
今回はFランクの依頼のポイズンビーの駆除。あとはカラミズ草。
駆除の依頼は事後受託が可能らしい。
例えば、たまたまオークに遭遇して倒してしまったら、魔石を持って帰れば、依頼を受けていたことにできるようだ。
勿論、当該魔物の駆除依頼が存在していればの話ではあるが。
なので、とりあえずポイズンビーを第一目標にはするが、その後は流動的だ。
さてさて。
僕には魔力が見えることは、エリザベス殿下だって知っている。
エリザベス殿下が魔術を使う際に、僕がガン見してたら、間違い無くエリザベス殿下は警戒してしまうだろう。
だったら、自分の目以外で見れば良い。
その為に今回、僕が用意した魔術は「バードアイ」
我ながら安直な名前だ。
空間上の任意の点から、周囲を見る魔術だ。
実はこの魔術と透明化の魔術は闇属性だ。
その為、現状で僕は闇属性のLv2を持っている。
そして収納の魔術は発動の必要条件の中に闇属性のLv3が含まれていると考えられる。
何故にLv3かと言えば、エリザベス殿下のスキル、ステータスで僕を上回るものは闇属性のLv以外には無いからだ。
そして、彼女の闇属性のLvは現時点でLv3の経験値が5/400。収納を覚えたばかりと言う彼女の言葉と合致する。
僕の現時点での闇属性のLv2の経験値は184。
「バードアイ」16個同時展開でレベルが上がるはずだ。
バードアイで彼女の魔術を観察し、同時に収納の発動条件を満たす。
我ながら完璧な作戦じゃないか。
エリザベス殿下は傍目に見ても源太に夢中だ。
ある意味、そのわかりやすさは微笑ましくもある。
柑奈も同じ気持ちのようで、僕と目が会う度に意味ありげににやにやしている。
何しろ、少し後ろからずっと源太の顔ばかり見てるのだ。
少しからかいたくなるのは、僕だけじゃないはず。
「殿下、源太の顔がそんなに珍しいですか?」
「……ゲンタ様が素敵なのがいけないのです」
こうまでストレートに好意を表すかね。
「源太、お前ここまで言うんだから覚悟して出世しろよ。エリちゃん娶るなら、貴族くらいにはならないとだからな」
「いえ、私は平民でも構いません。ゲンタ様が一緒なら……」
エリちゃん健気だな、おい。
僕は自分のチートな魔術能力を申し訳なく思ってたけど、源太のモテチートの方がどう考えても得だよな……。
「はいはい、エリちゃんも気を引き締めてね。どう考えても、これから魔物を仕留めにいく雰囲気じゃないからね」
柑奈は少々呆れた様子だ。
「この辺りまで来れば、いつ魔物が出てもおかしくないからね」
源太も諭すように言う。
エリちゃんの顔が少し引き締まったように見える。
うん、素直な子だね。
「エリちゃん、歩きながらでいいから聞いてほしい」
「なんでしょう?」
「なるべく魔力は節約するように、言われてるよね?」
「魔力切れになったら回復術師は無力だから、考えて使えと言われました」
「僕がいる限り、その配慮は必要ない」
「どうしてです?」
「魔力くらい、いくらでもくれてやる」
「……そんなこと」
「正直、莫大な魔力を持て余してる。今だって、魔力を大気中に垂れ流してるんだ」
「人にあげれるものなんですか?」
「僕はできる、って事で」
「……きっと、こうやって今日は色々驚かされるわけですね……わかりました、ガンガン使わせてもらいます」
さっさと魔術を使わせて、さっさと盗みたいからね。




