モニカ殿下は多分僕を信用してくれたとは言えない
「どういうことですか?」
「大気中の魔素が濃くなっているんです。そうすると、魔物の数も増え、活動が活発になりますね」
「そうなってくると魔術師の育成が不可欠、と言うことですか」
魔術師の育成か。
魔術始めて何日だろうか、そんな段階の僕が考えるべきことではないのは承知している。
ただ、僕がやらなかったらこの世界の魔術は失われたままで終わるだろう。
魔法陣で強制的に魔術砲台になるのを「魔術師」と呼ぶ程度のおママゴトしかできないだろう。
「学部長の件は前向きに考えます。ただ、説得力は必要ですからね。誰にも文句を言わせない程度の魔術における実績を作りますよ」
誰が素人の若僧に教わろうと思うだろうか?
いくら魔術を創作したとは言え、それだけでは実績としては足りないだろう。
僕にはわかりやすい実績が必要だ。
「どんな実績を積んでくれるか、楽しみにしてますよ」
学長先生は満面の笑みでそう言った。
「では、我々はこれで失礼しますね。娘に大事な用事があって来たものですから……それとも、折角ですから学長もご覧になります?」
「何をするのですか?」
「モニカが魔術を使えるようにしてくれるらしいですよ」
「タイカイ殿が?」
「モニカの魔力を強制的に循環させてしまうらしいです」
「……ほう」
コンコン。
ノックの音だ。
「第三学年Aクラス、モニカ・エルカディアです」
「どうぞ」
「父には会議室で待つように言われましたが、学長と父では話がいつ終わるかわからないので、こちらに来させて貰いました」
ナイスな判断です、姫。
僕は、軽く頭を下げた。
「タイカイ様も、いらっしゃっていたのですね」
王城で見るモニカ殿下よりも、どこか明るく見える。
姉の後ろで少し目を伏せていた先日とは、別人のようだ。
「来年からこの学園に魔術の学科を新設する予定です。タイカイ殿にその責任者をやって頂きたいと、さっきお願いしたところなのですよ」
学長の言葉にモニカ殿下は驚く様子を隠さない。
「……凄い魔術の才能をお持ちだとは聞きましたが、そこまでなのですか?」
「魔術の才能は勿論、それをどう活かすかという部分における頭の良さが常軌を逸しているね」
「……正直羨ましいです。私は魔術は使えませんから」
なるべく軽く言ってあげたい。
そんな大したことじゃ無いんだよ、って。
「使えるようにしますよ」
「出来ないですよ!ずっと頑張って来たのに出来なかったんですから!」
「今まで出来なかった理由ははっきりしてます。それを出来るようにする手段も僕は持ち合わせています」
「そんな……。誰もわからなかったことを」
「モニカ殿下は体力に比べて魔力が多過ぎるのです。わかりやすく表現すると、魔力が重過ぎて動かない感じですね」
「……どうすればいいのですか?」
「重いんだから、軽くすればいいし、一人で動かないなら二人で動かせばいい」
「……意味がわかりません。いや、意味はわかるんですけど……やっぱりわかりません」
だろうなぁ。
「じゃ、モニカ殿下にお願いがあるのですが、良いですか?」
「……何でしょう?」
「そこに立って100数えてください。その間に、殿下の魔力を循環させてみせますから」
「1、2、3……」
なるほど納得させたか、こちらも準備はしてあるからな。
まず、殿下の背中に手を当てる。
失礼だとはわかっているけど、時間は限られてるからな。
殿下の魔力は確かに多い。
少し吸い出してみる。
僕の魔力を流し込む分より少し多めに吸い出した。
そして、僕の魔力でゆっくり押し出していく。
確かにモニカ殿下の魔力は多いゆえ、重く感じるが、正直僕の魔力と比べたら羽根すら生えてるようだ。
「ね?現状、循環してるのわかりますよね?」
モニカ殿下は、何度も頷く。
「まだ20も数えてなかったのに……」
「まだ、これで終わりじゃ無いですよ。自分で動かせるようにならないと」
「ですよね!」
それでもモニカ殿下の表情は明るかった。
「でも、もうわかるんじゃないですか?今、動いてる魔力を押してあげる感じですけど、できますか?」
結果は出なかったとはいえ、ずっと特訓してきたんだ。
きっと大丈夫だろう。
「こんな感じですよね!」
確かに少し勢いはついた。
でも、まだ少し物足りない。
止めた状態から動かすことが出来たら、あとは自分でどうとでもなると思うのだが。




