国王の気楽な人柄に慣れてる模様
まずモニカ姫のところに行くのかと思っていたら、先に学長陛下のもとに挨拶に伺うらしい。
「時空魔術で転移するなんて無法をするんだ。挨拶を先にするのが筋だぜ」
アポイントメントは?
「大丈夫だろ。そんな忙しい人じゃないぜ」
礼儀正しいのか、無礼なのか。
◇
それでも、一応まずは事務室を訪れた。
「おう、学長はいるかい?」
「あ、陛下。学長なら学長室です。モニカ殿下もお呼びしますか?」
「いや、どこか会議室みたいなところで待たせておいてくれないか」
「わかりました」
事務員がさっと事務室を飛び出していった。
なんか慣れた感じだな。
きっといつも陛下はこうなんだろう。
別の事務員が学長室まで案内を申し出たが、陛下は遠慮した。
「お前さん達には、お前さん達の仕事があるだろ?俺たちは勝手に行くさ」
そういう問題じゃないだろうに、この人は楽な人だなあ。
学園の中だ。
様々な学生とすれ違う。
外国からの留学生も居るが、殆どが三国の出身者だ。
当然、その全てが陛下の御尊顔は知っているわけだ。
通常なら目礼だけ、などというわけにはいかないはずだ。
何故なら、国王だからだ。
にも関わらず学生達は、立ち止まり簡単な礼をするだけ。
最初は、彼らも膝をついていたに違いない。
だが、この国王陛下はこの学園の空気の中でそれをやられる事に居心地の悪さを感じたのだろう。
学園では略礼で、と通達を出してもらったらしい。
「学長はな、魔術が喪われた技術となっている事に、凄く危機感を持ってらっしゃるのだ」
陛下は言うが、だったら覚悟してもらいたい。
「魔力循環を秘密にしておく以上、この先の魔術の発展はあり得ないですよ」
「……わかってはいる」
「それだけ時空魔術が危険な物なんですかね?」
「暗殺し放題だろ?あれが誰でも出来るなら」
確かにそうなのだが、そもそも時空魔術は王族の人が考えるよりずっと難しいものだと思うぞ。
そんな事を話しながら廊下を歩いていたら、向こうから来る老人に声を掛けられた。
「おや、ガウス殿ではないですか」
一国の国王をファーストネームで呼ぶ男。
それは、この学園では一人しかいない。
彼がこの学園の学長にして、皇帝陛下。
ヴィリオ・ザイルベルグだ。




