モニカ姫、助けに行くぞ。
文官が二人魔法陣の束を持って来てくれた。
こうして実物を近くでちゃんと見るのは初めてだ。
「数日間預からせてもらっていいですか?」
「いや、もし本当に魔法陣を解明できるものなら、それくらいくれてやっても構わないぞ」
要らないんだよなあ。
「使わないですよ、多分」
「柑奈と源太は使うんじゃないのか?」
ごめんなさい。
流石に謝罪は必要だよな……。
柑奈と源太も目を伏せたが、はっきり言って悪いのは僕だ。
「おい、タイカイ」
「申し訳ありません……」
「一応、王城の秘密だとは伝えてあるよな」
「彼らには実験台になってもらいました」
「実験台とは?」
「魔力循環できない方に、強制的に外部から魔力循環して頂きたいと思いまして」
陛下も殿下も目を見開いた。
「敬語ってことは……そうか、お前には見えてるんだよな」
「モニカの為か!」
僕は続けた。
「ご存知だとは思いますが、モニカ殿下は魔力循環が出来ずにいます。理由もはっきりしています。魔力が体力に比べて大き過ぎるのです」
「魔力が大き過ぎると循環できないのか?」
「重く感じますね」
「……感じる?」
流石だな、陛下は。
少しの隙も見逃さない。
「僕も現状では莫大な魔力を急に得てしまったので、かなり魔力が重く感じるようになってしまいましたから」
「……聞き捨てならない事を」
「後で、その件も説明いたします」
僕、無事に帰れるかな?
「話を戻します。重過ぎて魔力の循環ができない方が出来るようにするために、方法をいくつか考えてあります」
「言ってみろ」
「一つは体力をつけること。これは一番真っ当で安全な方法だと思いますが、時間も掛かります。ただ、モニカ殿下の場合何れにせよ体力がかなり低いので、仮に魔力循環を覚えても体力の向上無く安定的に魔力循環できるようになるとは思えません」
「体力の向上は避けられない課題だ、というわけだな?」
「ですが、体力の向上を待つのも良いとは思えません」
「どうしてだ?」
それは……。
「殿下は苦しんでおられるでしょう?魔力循環が出来ずにいるけれど、絶えず努力なさってると思います。それでも出来ないというのは辛い事です。他の王族の方々は簡単にできるのに、です。おまけにどこの馬の骨かわからない人間が、アントニオ殿下を見ただけですぐに魔力循環出来てしまった」
「確かにモニカは真面目過ぎるくらい真面目だ。だから、ずっと苦しんでいた」
「実は、姫は精神耐性Lv3持ちです。あの年齢で、です」
それだけ苦しんだ、という事だ。
「そうか……。タイカイ君はそれを見て力になろうと考えたのか?」
「御節介ですし、大きなお世話でしょうけどね。あれだけの魔力を持つのです。おなじ悩むなら魔力循環のことじゃ無く、その先で建設的に悩んで欲しいですよ」
「で、策があるわけだ。その効果は二人で実験済み、というわけか?」
「源太は、そうですね。強制的に僕が外部から魔力循環させました」
「柑奈は違うのか?」
「柑奈には魔力循環を見せただけです」
「は?柑奈も見えるのか?」
僕は透明化して、魔力に黒く色をつけた。
「……透明化か。実はタイカイが透明化の魔術を覚えてしまった事は我々にとっては一大事なんだがな……。まあ、タイカイなら自力でそこにたどり着くのは当たり前だな」
「魔力に色をつける、か。確かにこれならわかりやすいが、その発想はどこから来るのか……」
「僕は間違いなくモニカ殿下の魔力循環をお手伝いできると思います」
「すぐにできるようになるのか?」
「はい」
陛下は僕に頭を下げた。
「頼む。今すぐやってくれ。あの子にこれ以上辛い思いはさせられない」
「私からもお願いする。あの子はきっと、私を越える程度には才能に恵まれているはずなんだ」
「殿下を越えるんですか?それって、相当な事でしょう?」
「君に言われてもな……。正直、魔術に関して嫉妬すら起きないほどの劣等感を味わうことになるとは、数日前まで思いもしなかったよ」
殿下はそう言うけど、魔術を知り過ぎていて柔軟な発想ができなくなってるだけだと思うぞ。
「早速だが、今、モニカは学園の寮にいる。折角だから学長つまりは皇帝陛下にも挨拶してこよう」
「陛下も行くんですか?」
「そのために時空魔術はあるんだよ」
話がどんどんデカくなるなあ。
「カンナくんとゲンタくんはここに残ってもらいたい。私から聞きたいこともあるからね」
アントニオ殿下はお怒り、ってわけではなさそうだけど。
事情聴取か?
容疑者は、僕。
じゃ、証人か二人は。
嘘は要らないけど、心証を悪くするような事は言わないでね。




