気の毒な近衛兵はきっと報われるよ
「おう、なんか無理矢理連れて来たみたいで悪いな」
「お言葉を返すようですが『みたい』って言葉は、そうでないときに使うものじゃないですかね」
「じゃ、言い直すか。無理矢理連れて来て悪かったな」
こちらの軽口を笑顔で受け止める余裕。
流石だよな。
「で、何やら魔術を新しく開発したらしいじゃないか」
「大したものじゃないですよ」
「この阿保が。魔術を新しく作るなんて、どこの誰が出来るんだよ」
アントニオ殿下を見る。
黙って頷く。
「えっと、魔術を作るってのはそんな大きな事ですか?」
「少なくとも分国以降、魔術を作った人間はいない。それが、魔術を初めて使って数日で新作の魔術だと?これが一大事じゃなくて、何が一大事だよ」
……陛下も興奮するんだな。
「まず、お断りしておきますが」
「何だ、秘密にしたいのか?」
「僕が作った一つ目の魔術は、一般化には若干の課題があります。まず、試作品と考えてください」
「何だかよくわかんねえが、とりあえず見せてみろや」
見せろって言っても、見えないんだけどな。
流石に陛下にも殿下にもかけるわけにはいかないな。
「誰が実験台になって頂きたいのですが」
側で控えていた近衛兵が名乗りを上げた。
「私で良ければ」
完成した際にはこの方に一番に使ってもらおう。近衛兵にはあるととても便利な魔術なのだから。
「簡単に言うと、この魔術は捕縛のための魔術です。見えないロープで敵を捕縛する。それだけです」
そう言って近衛兵に向けてカウボーイの魔術を発動させた。
近衛兵はあっという間にロープで縛られ、身動きができなくなった。
ただ、そのロープは僕以外には見えない。
「ロープで縛ったって言っても、俺たちには見えないからなあ」
「じゃ、これからこのロープを引っ張ります。ごめんなさい、痛いとは思いますが恨むなら陛下を恨んでくださいね」
足もしっかり縛られているため、僕がロープを縮めると同時に兵士が転ぶ。
手の自由もないため、当然受け身も取れない。
そのまま彼は僕の方に引きずられて来た。
「わかった、確かに縛られてるんだな」
流石にこれ以上は申し訳ないので、すぐに解かせてもらった。
「だがなぁ、タイカイ」
この魔術の課題に気づいたのか。
「お前は、これを他の奴にくれてやりたいのか?せっかくのお前の魔術だぞ」
「歩きながら考えて、試したらできちゃった魔術なんで、あまり思い入れは無いですね」
「この数十年誰もできなかったことを思いつきでやられるのは、魔術師として心底自信を失うんだがな」
殿下、拗ねたか?
「真面目な話をすると、この魔術を一番有効に使える人間って、彼らのような近衛兵だと思うんです。陛下の前や、王城で流血沙汰は避けたいでしょ?」
「確かに、彼らがこの魔術を持っていてくれたら安心だ。だが、何が課題だ?」
「まず、見えないロープは操れないこと」
「どうするつもりだ?」
「追尾性を持たせて、自動で縛るようにします。これができれば見えない必要は無いので、見えるロープにしますよ」
「可能か?」
「多分、大丈夫でしょう。あとは、これを魔法陣化できればいいんですけどね」
「魔法陣化!」
「タイカイ君はとんでも無いことを考えてますね……」
正直言うと3分の1はもう解明済みなんだけどな。
あとの3分の2も、あたりはついているし。
「魔法陣化しないと、みんなが使えませんから」
「該当者だけに教え込むって訳にはいかないのか?」
「それ実現するには、魔力循環をまず広めないとですよね」
陛下も黙るよな、それは。
「ところで、魔法陣って何種類か手に入りませんかね?」
「王族は基本的に使わないとは言え、城内の者達のためにかなりの数は用意してあるぞ」
「見せていただけますか?」




