美味しくいただきました。
ワイルドウルフの肉は生臭い感じがするけど、マズくはない。
そういう話だった。
クセのある味だから、万人ウケはしない。
受付嬢のお姉さんは確か、そう言っていたはずだ。
ところが、実際に食べてみるとワイルドウルフの肉はあっさりとして、柔らかく、ジューシーでとても美味しかった。
臭みなどなく、クセの無い味だ。
「なんか、聞いてた話と違うね」
美味しいんだから良いんだけど。
「ねえ、大海。これ、 死ぬ前に焼いてるから良いんじゃ無いの?」
それだ。
ワイルドウルフの肉は、死後直ぐに火に掛けられることはない。
なぜなら、まず毛皮が大事なので丁寧に剥いでいくからだ。
当然時間もかかる。
その上で大して美味くも無いと思われている肉を、わざわざ血抜きして、下処理をするか?
しないだろう。
せいぜい、物好きな冒険者が試しに食べてみる程度だろう。
他に食用の肉となる魔物はいくらでもいるのだ。
でも、今回まずファイヤーボールで一度焼いている。
これが新鮮さを保つのに良かったのだろう。
オーク肉などでは味わえない、別の感じ。
強いて言うなら鶏肉、それも高級な地鶏だ。
「これ、串焼きにしたら、売れるよな」
「一串銅貨3枚なら売れると思うよ」
屋台やるのも良いかもしれないな。
「うちの両親の店で出したらどうかな?」
「仕入れを大海に頼るのは良くないよね」
この処理、僕しか出来ないよな、確かに。
「少し持ち帰って串焼き作るくらいしか出来そうもないか」
◇
さて。
どうしよう。
いよいよ人体実験のお時間なのだが。
「二人とも、強制魔力循環やるか?」
「安全なの?」
「ワイルドウルフがあんなに苦しんでたけど……」
ワイルドウルフが苦しんでいたのは、魔力が過剰になったからで、それを防ぐにはとりあえずファイヤーボール一発打っておけば大丈夫だと説明した。
「俺たちが、魔力循環を覚えたとして、どういうことができるようになるんだ?」
そこは重要だよね。
「まず、魔力の消費が抑えられる。魔法陣の魔術は魔力の無駄な消費が多いんだ。同じファイヤーボールでも、魔力の消費は20%以上は抑えられるはずだよ」
「それは結構大きな差になってくるね」
「さらに、実は魔法陣の魔術はスキルのレベルが上がっても大して威力は上がらない」
そう。
姉ちゃんがファイヤーボールを打っても、柑奈が打っても威力は大して変わらないのだ。
「魔法陣の魔術は、魔力の使用量も威力も固定されている。魔術のスキルレベルが上がればそれだけ効率よく属性を付与できるけど、それだけの違いしかない」
例えば火属性の魔術のレベルが10のとき、おそらくほぼロスなく魔力に火の属性を付与できる。
この時の威力を100としたら、レベル1のときは約10%のロスが出て威力は90位だ。
「それは、感じてはいたのよ。美南さんのファイヤーボールもあんまり変わらないなって」
「魔力循環によって魔術を使うと、流す魔力に比例して威力は上がる。しかも魔術名の呼称を発動キーにしなくていい」
「良いことだらけじゃないか」
「現状の僕のファイヤーボール見てみるか?」
僕は空に向かって巨大ファイヤーボールを打った。
MPで100位を流すイメージで。
……やり過ぎた。
空に向かって直径3メートル位の火の柱が上がった。




