帯に短し襷に長し
美味しい食事の後、僕たちはスタークルの街を出てカラバルドに向かった。
海沿いの街道は風が気持ちいい。
源太の両親の店の候補地は、カラバルドまたはその郊外だ。
ただ、カラバルド付近はリーグほどではないが魔物は多く、壁の外で生活の拠点を持つのは現実的ではないだろう。
また、僕らのカラバルドでの拠点を確保する必要があるだろう。さすがに男爵邸をクランハウス兼用にはしたらダメだろう。
あ、メルガルドが僕たち三人のために用意してたはずの物件が宙に浮いてるはずだ。
遠くにカラバルドの街が見えてきた。
スタークルより一回り大きいくらいだ。
◇
カラバルドから半日も歩けば隣のサンダーランド王国に着いてしまうという立地からか、どこか他の国の文化がうっすら滲んでいるような感じがする。
両国間の交易で稼ぐ商人もいるようで、サンダーランドの物品は街のあちこちで見掛ける。
そういう意味では、異文化や未知のものに対する抵抗は薄い土地であることは確かだろう。
この街の代官には予め話を通していたようだ。
当たり前の話だ。
物件をいくつか見繕ってもらう必要もある。
今後の仕事に関して相談もある。
「領主様、お連れの方々もお待ちしておりました。私がこの街の代官のマティアスと申します」
「早速だけど、こちらのご夫婦が例の料理人だ。物件をいくつか見繕ってくれていると思うが……」
姉ちゃんがそう言うと、簡単に説明しだした。
「領主様の仰る全ての条件を満たせる物件はありませんでした。ですのでいくつかの条件は我慢していただくことになろうかと思います」
そう断ったあといくつかの物件を条件した。
この国に置いて「土地の所有者」はあくまで領主であるミナミ・ナミナミ男爵である。
この世界における「土地の売買」は「土地の所有権」の売買ではなく「土地の居住権、使用権」の売買なのだ。
勿論、たとえ領主だからと言って正当な居住権、使用権を持った人間に対し、自己の所有権を主張し立ち退きを要求することなどできない。
一つ目の物件は、賃貸物件である。月額金貨7枚。街の中心部にあり、一等地だ。厨房も完備していて、ささやかな居住スペースもある。
ネックは少々古く手狭なのと、風呂が無いこと。
風呂を増設するスペースも無いそうだ。
家庭菜園的なスペースは当然無い。
二つ目の物件は、売り物件だ。
王貨5枚。つまり金貨で500枚だ。
街の外れまではいかないが、立地では一つ目の物件にかなり劣るようだ。
ここも元々店舗だったが、店舗スペースは一つ目の物件の1.5倍。内装も比較的豪華で改装の必要も無いそうだ。
ネックは少々高いこと。この立地でこの広さなら王貨4枚が妥当らしい。
風呂は無いが増設するスペースは充分だそうだ。
三つ目の物件も売り物件だ。
王貨1枚。ただし完全に街の外れだ。
隣は城壁だ。
門からも離れているため、人通りはほぼ無い。
ここは、そもそも店舗じゃない。
ただ、家庭菜園と言うには広めの畑があるらしい。空きスペースも充分あって店舗を立てるのも風呂を増設するのも可能だそうだ。
四つ目の物件は更地だ。
使用権居住権の売買という形で、王貨2枚。
場所は二つ目の物件より良い場所らしい。
広さも二つ目の物件が建つ程度には広い。
ネックは、この後建設なので営業まで時間が掛かること。
さて、どうするのか。




