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代官バロンのオススメ

まあ、この街の開発計画は今できる話じゃない。


それよりも領主が来たのに、代官が挨拶に来ないってどういうことだろう。


「いや、冒険者時代に何度か世話になった人だからサプライズってやつ?」


初対面の人にはサプライズを仕掛けてはいけないという常識はあるらしいが、それ以外の場合は須らくサプライズしなきゃいけないとでも思っているのか?


「迷惑だと思うぞ」


「いや、本当のことを言うと、神出鬼没というのか、いきなり来たらスピード感を演出できるかなと思って」


「それが得になると?」


「領主がスピード感持ってたら、部下もスピード感持って仕事せざるを得ないでしょ」


間違いじゃない、それは。

姉ちゃん考えてるじゃないか。


ほら、あっちから真面目そうな男が走って来たよ。


「おーい、バロン。久しぶり!」

「領主様、言ってくだされば迎えに来ましたのに。門番から連絡が入ったから、急いで参りました」


息も大してきれてないところを見ると、なかなか鍛えてるようだな。


「皆様、初めまして。この街の代官バロンと申します。でも、まさかミナミ様が領主とは……」


「……ね。ほんとはもっと気楽に生きたいんだけどね。ま、私もこんなだからこれからもよろしくね」


「いやあ、奴から解放してくれたってだけで大歓迎ですよ。私だけじゃなく町中がです」


「それもなんか背中が痒くなりそうだね」


「ところでさ、今から昼ご飯食べたいんだけど、この土地の美味しいものを食べられるところはない?」


「お昼時でしたら『泣き虫亭』のソル貝の定食がオススメですね」


「ああ、確かに。アレは美味しかった。じゃ、『泣き虫亭』にするよ」


まあ、店の名前が個性的だが味は大丈夫だろう。


「先を急ぐ旅だし、ご飯食べたらすぐ立つけど、また時々顔を見せるね」


「……なるべく事前に一報下さるとありがたいです」



泣き虫亭のソル貝は確かに絶品だった。

ハマグリより少し小さい感じの貝を、バターか何かで炒めてるだけのシンプルな料理だ。


これが本当に美味しい。

パンとスープが付くんだが、スープの肉もじっくり煮込んでホロホロに溶けるオーク肉。


パンは、多少固め。

日本のふわふわなパンに慣れてると食べにくいかもしれないけど、個人的には濃い味にはこのくらいの硬さのパンが合うと思う。


充分に満足いく料理だ。

この辺りに港が無いってことは、漁業も大規模にはやってないってことかな?


実にもったいなく無いか?


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