馬車は進む
馬車に戻ってみると、源太の両親は流石に顔を真っ青にしていた。
盗賊がどうこうと言うより、単純に僕の魔術に恐怖感を抱いたらしい。
「なんかすごい爆発だったけど、この世界じゃあんな魔術は普通なのか?」
「そんなことはないですよ。似たような魔術はあるかもしれませんが、あの魔術はまず他の誰にも使えません」
「そんな魔術をなぜ大海くんが使えるんだ?」
なぜだろう。
たまたま魔力が見えてしまったのが、きっかけだけど……。
「できそうなことを一つずつ重ねていったら、こうなりました」
「それって何年もやった奴が言う言葉だろう……」
「親父も、大海のことは普通の人間だと思わない方がいいぞ。人の嫌がる事と横着考えさせたら天下一品なんだから」
源太もひどいことを言うが、自覚はあるよ。
発想がまともじゃないとは言われるしね。
「ただ、こんな風に盗賊に襲われることもありますし、魔物も居ます。情報としては持って居たでしょうけど、盗賊を目の当たりにして、どうでした?」
「大海くんが凄すぎて、盗賊がどうもこうもないよ……」
「こっちは良い世界だと思います。でも、最低限戦える力はあったほうがいいですよ」
戦える力がない人間だと、時に逃げることすら出来ないからな。
「……それでも、俺たちはこの世界で暮らしたいと思うよ。こんな自然、向こうには絶対に無いんだから」
外の景色はさっきまで草原だったはずだが、いつの間に麦畑が広がっていた。
「農地はどのくらい確保できるのかな?」
「小さな家庭菜園程度で良いのよ」
源太のお母さんの言う通りだ。
カフェで出す料理のためだから、それほど広くなくても良いだろう。
むしろカフェの立地だよね。
手頃な物件があるだろうか。
居抜きの物件があれば理想だが、それにしても改装は必要だろうし。
麦畑が広がっているってことは、この辺りは魔物も少ないのかな。
魔物の多いところなら、農業どころじゃ無いからな。
もうこの辺りはナミナミ領のようだな。
前方に見える街は、ナミナミ領第三の都市スタークルだ。
ちょうど昼時だ。
スタークルは交通の要衝だ。
美味しい昼飯にありつけるだろう。




