のんびり馬車の旅
王城で陛下や姫君たちに挨拶したあと、僕らは姉ちゃんの領地に向かった。
もう正式にナミナミ家領地ということになっているらしい。
勿論代官はいるし、それなりに文官も残っているらしいが、人手は足りないだろうな。
おまけに王都からは一番遠い領地だ。
サンダーランド王国という国との国境沿いらしい。
この国はザイルベルグ三国とは違って同盟関係には無い。
つまりは国防という意味でもなかなか難しい土地だ。
ナミナミ領は比較的豊かな土地らしい。
北には鉱山があり、その麓には鍛治の街として有名なリーグがある。この近辺は強い魔物も多く、必然的に腕のたつ冒険者が集まる街にもなっている。
南側は穀倉地帯だ。
質の良い小麦が多く取れるらしい。
従って敵国から見れば非常に魅力的に映るはずだ。
姉ちゃんも難しい土地を任されたもんだな。
◇
街道は整備されている。
比較的治安の良い国だとは言え、盗賊がいないわけでは無い。
そんな中を明らかに貴族のものとわかる馬車二台で進むのだ。
だが全く心配は要らない。
たかが盗賊如きには過剰なほどの戦力が整っているのだ。
おまけに呼べばすぐ来るポチ様まで控えている。
王都から近いこの辺りは所々森も見えるものの、平坦で牧畜や畑作が盛んなようだ。
これはこの国全体に言えることだが、比較的気候も温暖で、農業も盛んなので食事情は良いようだ。
源太の父さんもこの国の雰囲気は大変気に入ったようで、いつもより声が大きくなっている
「最高だなぁ、この世界は。俺が思い描いていた楽園そのものだ」
その楽園に魔物は居たかい?
その楽園に盗賊は居たかい?
美しい反面、ここは苛烈な環境でもあるんだぜ。
「父さん。確かにここは良いところだけど、不自由で過酷な場所でもあるからな」
冒険者として生きていくわけでは無いとはいえ、身を守る術程度は身につけておかないといけないだろう。
ほら、そんなことを言ってたら現れたようだぞ。
「盗賊が15〜20人前方に見えるけど、大海一人でやってみる?」
前の馬車から姉ちゃんが顔を出して言ってる。
「盗賊?大丈夫なの?」
そりゃ源太の母さんが心配するのも無理はない。
「姉ちゃんだって大丈夫だと思うから言ってるんですよ。これも一つの経験ってやつですね」
僕は可能な限り朗らかに答えた。
だって、そりゃ今からやるのは殺し合いだからね。
僕は前の馬車にさっと移動した。
後ろに聞こえないように小声で確認する。
「捕まえる必要がある?」
「必ずしも必要では無いけど、捕まえるのに向いてる魔術を作った話は聞いてるんだけど」
「別の新作魔術も試したいんだよ」
「どんな感じの?」
「爆発して木っ端微塵?」
「首領だけは捕まえたいな」
「威嚇用の小さい爆発は?」
「許可する」
「じゃ、首領だけ捕まえて、あとは殺しちゃっていいね?」
威嚇用に浮遊機雷AとBの12乗バージョン。
カウボーイで首領をぐるぐる巻いて、引きずって。
終わったら大サービスの17乗で爆発かな。




