姉の出世は煩わしい
僕が作ったこの種火の機雷の魔術は「浮遊機雷A」と名付けた。
そう、「浮遊機雷B」も当然作った。
何が違うかと言うと、種火の代わりにファイヤーボールと同じ魔力の炎を使ったのだ。
こちらは魔術障壁で防げるが、物理障壁では防げない。
魔術の実験も大事だが、ポーションの試作もやってみないといけない。
今日これからというのも、さすがに時間が無いだろう。
うまくいくかもわからないのだ。
でも、明日は一日予定が無い。
源太の両親が下見に来るのだ。
源太は当然一緒に行動するだろうし、おそらく姉ちゃんと、場合によっては殿下もご一緒するだろう。
僕と柑奈まで一緒に行く必要も無いから、色々と散策でもしようか考えていたところだ。
せっかくだから柑奈を助手にして、明日はポーションの試作かな。
◇
だが、その目論見は崩れた。
姉ちゃんがもの凄く面倒臭そうな顔をして帰ってきたのだ。
「姉ちゃん、どうした?」
「名誉なことではあるけど、面倒なことになったよ」
うーん。
空きが一つ出来たんだよな。
まあ、この件で功績もあるし、可能性がないわけじゃないよな。
「一旦、貴族の養女になるプランもあっただろうけど、庶民感情としてはナミナミ家から嫁いで欲しいわけだろ?」
「は?」
「多分ね、陛下はフランクっぽい人だし、そんなことを言わないだろうけど、第二王子が平民の嫁を貰うのを良く思わない人も居たはずなんだ。それで真剣に姉ちゃんを侯爵あたりの養女にするプランもあったはずだよ」
「で?」
「でも、冒険者のトップなんて庶民からしたら英雄でしょ?まして並波家はまるごと英雄みたいなとこあるでしょ?」
俺は、もう少し待ってくれ。
すぐ英雄程度にはなれるから。
「庶民感情は、ミナミ・ナミナミとして嫁いで欲しいわけ。それは陛下も承知してる。そこへ未然にクーデターを防ぎ、反逆者を捕獲し、その結果男爵の椅子が一つ空いたわけだろ」
「あんたねえ……」
「じゃあ侯爵の養女なんかにするより、本人に爵位くれてやればいいじゃんとなるよね」
「確かに全くその通りなんだけど、さ」
「そのまま、あのバカ男爵の領地を引き継ぐの?」
「みたいだね」
「じゃあ、源太の両親もそっちなら好きなところ渡せない?」
「……陛下にもそう言われた」
「このクランはどうするの?」
新領地に移すのか?
「時空扉で繋ぐよ。私もあっちにばかり居たくないもの」
「結婚したら殿下と姉ちゃんの身分とか、色々どうなるの?」
「アンちゃんは領地の無い公爵。宰相になるのか、もう少し自由な立場でいられるのか。私が公爵夫人だけど、普通に僻地の領地持ちの男爵って立場だね」
王都では公爵夫人。
領地では男爵。
そりゃ、務まるのか?
時空扉は絶対必要だが、王都と領地に信頼できる人材が必要だな。
「で、当然大海も「断る」」
「早いよ、返事が」
当たり前だ、冒険者始めたばかりなんだぞ。
「冒険者はやりながら、少し力を貸してくれるだけでいいんだから」
「僕も柑奈も源太も全力で冒険者をたのしみたいんだ」
「いや、二人は協力してくれるってさ」
あいつら……。
「ベティも冒険者に専念ってわけにはいかないから、空いた時間でいいからさ」
仕方ない。
交換条件を出そう。
「条件があるんだけど」
「何?キスまでしか無理だよ」
姉ちゃんとキスしたいとは思わないぞ、流石に。
「魔法陣の研究してる人、それも一番優秀な人を紹介してほしい」
「……研究してる人はいるけど、全く解明できてないんだよ」
ああ、だからさ。




