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数字は魔術

クランハウスに戻ってきた。

まずは報酬の分配についてだが、これは柑奈さんの一声で決まった。

「半分は共有資金として貯める。半分を頭割り」

だそうだ。

僕も異論は無い。

今回は金貨1枚、銀貨9枚が貯金。

一人当たり銀貨6枚、銅貨1枚の配分だ。


こうしてみると儲けは少ないな。

だが、現時点ではこのくらいで充分とも言える。


考えてみてほしい、僕らは住む場所はあるのだ。クランハウスに居住できるだけの部屋は充分にあるし、なんなら日本に帰ることも可能なのだ。


食費は姉ちゃんに集るという素晴らしい解決策がある。集る先が両親でもばあちゃんでも問題ない。


そう。

この世界で生きるためにもっとも必要なものは誰がなんと言おうがコネだ。

そして、僕たちは考えられうる最強のコネを持っていると言っても良い。


だからこそ、今回反省会で是非二人と共有したい意識がある。


「命は大事に」だ。


どう二人に話したら良いものか。

ここはやはり数字だな。


「正直なところゴブリンは物足りないと思うけど、当面の間ゴブリンをメインで狩ろうと思う」


「えー、それはつまんないかも」

「もうちょっと強い敵でもいいんじゃないか?」


「じゃあちょっと考えてみて欲しいんだけど……」


ここで、僕は彼らに一つの架空の依頼を想像してもらった。

報酬は金貨6枚。

魔物はそれなりに強いけど、君らなら9割がた、いや95%生きて帰って来れるよと姉ちゃんや殿下が言ってくれてる。


さて、この依頼は受けるべきか。


「そりゃ受けなきゃダメでしょ」

「5%なんか、無いも同然だろ」


「じゃあ聞くが、これと同じ依頼が再び来てもやるのか?」


「おいしいし、やると思うよ」

「だな」


「95%の生存確率っていうことはな、この依頼を10回受けた時には、生存確率が6割を切るんだよ」


「え」

「マジで」


「90%だとな、たった7回で5割を切るんだ」


二人は数字に弱い。

と言うか、人間誰しも数字には弱いんだよ。


「臆病なくらいでちょうどいいはずだ。真剣勝負をしたいわけじゃ無いんだ。生活の糧として狩りをするのだから」


「そうだね。ちょっと調子に乗ってたみたい」

「でも、普通浮かれそうなものだけど、全く憎らしいほど冷静だよな、大海は」


と言うか、この世界で考えないで生きていけるとはとても思わないからな。

嫌でも考えざるを得ないんだよ。


「だって、折角の異世界生活だよ。つまらないことで終わってしまったらもったいなくないか?」



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