ミネラルウォーター要らずだね。
とりあえず、僕らは3つの生活魔術を覚えなきゃいけないらしい。
身体、衣服を綺麗にする「クリーン」
水筒一杯分の飲料水を出す「ウォーター」
そして、ライター程度の火を出す「種火」
ここで疑問だ。
例え水属性魔術の威力を抑えて「ウォーター」の代用とか、火属性魔術の威力を抑えて「種火」の代用とかできないのか?
姉ちゃんに聞くと、水属性魔術の水も火属性魔術の火も魔力そのものに過ぎないとのこと。
あくまで水や火の属性を帯びた魔力の塊らしい。
一方で「ウォーター」や「種火」は、魔力で水や火を呼び出すもので、この水や火は魔力のない正真正銘の水であり、火だという。
だから、例えばカマドの火をつけるのにファイヤーボールを撃つなら、むしろ威力を上げないと火力が得られないが、間違いなくカマドは、壊れるだろうと。
そもそも生活魔術というのは、魔力の消費が物凄く少ないらしい。指先にかすかにある魔力だけで充分で、余程の事がない限り誰でも使えるものらしい。
MP で言うと0.1程度なのだと。
生活魔術便利過ぎる。
だが、これを覚えるには教会で司祭様から授けてもらわなくてはならない。
なので、僕たち三人は姉ちゃんに連れられて教会に行かなくてはならないのだ。
姉ちゃんたちはこの街の教会とはかなり深い付き合いらしい。
教会は孤児院を運営している。
姉ちゃんたちと交流を持つまではかなり経営は大変だったようだ。それを知った姉ちゃんとばあちゃんは狩った魔物の肉を差し入れるととても喜んでくれて、そこから付き合いが始まったとのことだ。
孤児院の子供たちも素直な子が多く、たまにうちのクランハウスの掃除をしにきてくれたるみたいだ。
うん、姉ちゃん掃除できないもんね。
と言うことで、僕たちは教会に行くことになった。
司祭様のアポは取れているのか、いささか不安ではあったが。
◇
大きな教会だ。
王都で二番目に大きな教会だと言う。
そこの司祭様なんて、簡単に会えるものなのだろうか?
そう思っていたが杞憂だったようだ。
白い長衣に身を包んだ初老の紳士が、走ってきたのだ。
「ミナミ〜。よく来たのう」
装飾の豪華さ、周りの聖職者たちの貫禄等、様々な要素から、この初老の紳士が司祭様だと思うのだが、どこか軽いしやたら親しげである。
まるでお盆に帰省した孫を出迎えるおじいちゃんだ。
「お久しぶりです司祭様。子供たちは元気ですか?」
「あとで向こうにも顔を出してくれ。で、手紙に書いてあった三人はそちらの若者たちかな?」
「タイカイと申します。ミナミの弟です」
「カンナです」
「ゲンタです」
僕たちは一人ずつ小さな部屋に呼ばれ、そこで簡単な儀式のようなものをした。
その小さな部屋は床に魔法陣らしきものが書かれていて、司祭さんの唱えるちょっとした文言を僕たちがその魔法陣の上で復唱するのだ。
時間にしたら一人当たり20秒。
それで、僕らは生活魔術を使えるようになったのだ。
クランハウスに戻って、僕たちは3つの生活魔術を試してみた。
これ、便利だわ。
まず飲み水に困らないって、旅の苦労の三分の一くらいが解決したようなものだろう。
「クリーン」も旅先で風呂に入れないことを考えたら便利だし、小汚い格好をしてたらそれだけで生活魔術も使えない田舎者って思われるんだろうな。
でも、一番可能性を感じるのは「種火」だ。
この魔術がもし僕の思っている通りの性格を持ってたら、僕ならこの「種火」を化けさせることができるかもしれない。




