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アントニオ先生の授業です

殿下のありがたい講義を聞くために、僕たちはクランハウスの中に戻った。


「おお、おつか……。二人とも、大丈夫か?」


僕たちが死線を彷徨ってた間、美女3人といちゃいちゃしながらケーキ作ってた源太くんじゃないですか。


「命があるか、と言う意味ならイエス。それなりに体を動かせそうか、と言う意味ならノーだな」


「……源太も、あとでたっぷり可愛がってもらったら?」


柑奈もそう思うよな。


「まあ、源太の特訓は明日にでもするとして、アンちゃんが色々この世界の常識をご教授してくれるって言うから」



アントニオ殿下の話によると、今、僕らがいる国はエルカディア王国というらしい。

この国と、北隣のラグラン王国と東隣のカリム王国はもともとザイルベルグ帝国という一つの国だった。

今から120年ほど前、ザイルベルグ帝国は実力のある三人の侯爵の争いが激化してきていた。それまでの水面下での嫌がらせから、実際に小規模ながら武力衝突が起こるようになっていた。


ザイルベルグ帝国は、400年以上もの間絶えず領土拡大の意思を持ち続け、侵略を繰り返してきたが、大きくなり過ぎたことで幾つもの歪みが生まれ始めていた。


帝国の最大の失政は、皇帝自らは領地をほとんど持たなかったことであろう。帝国の領土を拡大するために、獲得した領土を気前よく恩賞としてふるまわなければならなかった。


結果、財力で有力な貴族に太刀打ちできなくなり、皇帝は発言力を徐々に失ってしまった。


そんな状況で即位した新たな皇帝は、帝国としての存続を諦め、三国に分割し三諸侯をそれぞれ国王として即位させ、自らは退位し三国共有の教育機関を作り、そこの学長としてそれぞれの国に人材を送り出すと宣言した。


その三国が、エルカディア、ラグラン、カリムとして今日まで続き、三国の中心にザイルベルグという学園都市が皇帝直轄領として誕生したということだった。


「じゃあ、今はザイルベルグという国は無いのですね」


「実はその辺りは表現が難しいんだ。今もザイルベルグ帝国だと言えないことはない。実際にザイルベルグ家は断絶していないし、学長職を代々勤めている。三国の会議は学園都市たるザイルベルグ市内で行われるのが常だし、その際は学長は皇帝陛下として御臨席なさる。勿論意見を言うことはないがね」


「皇帝としての権威はあるけれど、国家としての形は既になく、学園以外において実権もない、と?」


「ほぼそれで間違いは無いが、だからと言って我々が皇帝陛下を蔑ろにしているわけでは無いぞ。それに、三国ともまだ国としては若く法律の整備が進んでいない部分もある。そういう部分については、帝国法によることになる」


どの程度かわからないが、法律があるというのは朗報だ。

ただ、今の状況は少し危険じゃないかな。

むしろ、帝国が無いのに帝国法が一部現役であるという状況を僕が利用できれば良いのかも知れないな。


「学園のあるザイルベルグ市は、王都から近いのですか?」


「王都自体がこの国では北東地方にあるからな。王都の門から馬車で半日も掛からないよ。君たちの単位で言えば約1時間半だな」


「学園には、どういった方が通うのですか?」


「身分の制限は一切無い。学費がそれなりに掛かるため、貴族の子弟や大手の商会の子弟が多いが、成績優秀者に対する学費免除の制度や、奨学金もあるため、平民の生まれのものも数多く在籍している」


「年齢はどうですか?」


「10歳以上で入学の資格が与えられる。期間は5年だね。必ずしも10歳で入学しなければならないわけでは無いし、むしろ12歳くらいが一般的だよ」


年齢的には中学、高校あたりなのかな。

学校というのは身近に感じるのだろう、柑奈も興味があるようだ。


「あの、私からも質問なんですが」

「どうぞ」

「どういったことを学んでいるのですか?」

「帝国語、数学、地理、歴史、生物学、礼法、法学、戦闘が主だね」


皇帝の座を投げてまで作った学園なのだから、当然それなりに熱意ある教育機関だろう。

ただ、そんなところでも魔術を専門には教えないのか。

いったい魔術とは、この世界でどんな位置付けなのだろうか。


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