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ポチが来た

亀更新ながら、細々と頑張ります。


なぜだ。

なぜ既に国王陛下に把握されているのか。

おかげで王子殿下を「アンちゃん」呼ばわりしていることなど、どうでもよく感じてしまう。


「なぜ国王陛下が?」


「だって、多分私はこの世界でも最強の一人だと思われてるし、父さんと母さんだって結構名が売れてるんだよ」


ふむ。


「で、前に陛下に言ったんだよね。私が勝てない人間が居るとしたら、頭使って人の嫌がることをやってくるタイプだと」


「まさか、僕がそんなタイプだと言ったんじゃないだろうな」


「ご名答」


アホか。

僕が姉ちゃんと一緒に柔道やってたときにそういう戦い方をしたのは、そういう方法でしか姉ちゃんに対抗できないからだ。

大体、僕はその頃小学生だぞ。


「普通は出来ないんだよ、そういうこと。普通は敵わない時は諦めるの。文字通り諦めるか、自爆覚悟の一発を狙うかに分かれるけど」


それは、確かにそうかもしれない。

ただ、僕だって体を使う才能があったらそんなセコい戦い方はしないさ。


「確かに嫌なんだよな、大海の戦い方って」


源太も言うが、こいつに関しては運動能力の圧倒的な違いに何度泣かされたことか。

こいつと戦う時は、とにかく技を出せそうな体勢にしないことを第一に考えなくてはならない。

掛け逃げ上等ってもんよ。


「何も戦い方に限らず、あらゆることにおいて大海って相手のしたいことを上手く封じてくるよね」


僕は柑奈さんにそんな真似をしたつもりはありませんけどね。むしろ柑奈さんの方が子供の頃からうちの両親や姉に取り入って、僕の逃げ場を無くしてませんかね?


「そういうわけで、脳筋一家の唯一の頭脳派として陛下は君に興味を持っている。もともと源太はともかく大海と柑奈はこっちに連れてくる予定だったからね」


「柑奈もか?」


「だって、柑奈だって家族じゃん」


柑奈は両親を三年前に事故で亡くして以来、隣の僕の家に住んでいる。いくら幼馴染とは言え、同い年の女の子と同居するってのは当初凄く抵抗があったのだが、柑奈は親戚も居なかったし天涯孤独になっちゃったからね。


「え、俺は仲間はずれっすか?」


「源太もなんだかんだで、こっちで楽しめそうだけどね。こっちに来てから帰れるか不安だったろうけど、気楽に行き来できるから安心しておきなさい」


うん、言葉にはしなかったけど僕も、そしておそらくは柑奈も源太も帰れるかが不安だったはずだからね。


「で、どうやって王城までいくの?」


「まあ、説明するより見たらわかるから」


ニヤニヤしてる。


僕たちは、姉に連れられて外に出た。

途中、メルガルド家の家臣たちと何人か遭遇したが、姉を見て逃げ出すこともできずにへたり込んだ。

鮮血の激流、とかなんとか言っていたが、あれは姉の二つ名というやつだろうか。


「鮮血の激流って呼ばれてるの?」


「これでもマシな方だと思うよ」


そういう割にかなり嫌そうな顔をしている。

そうか、この世界で活躍するとこういう嫌がらせが待ってるわけね。


「さて、ここなら充分かな。私らを王城まで連れて行ってくれるポチを呼ぶよ」


僕たちは、姉ちゃんに連れられてメルガルド邸の外の広場のような場所に出ていた。

姉ちゃんは首から下げた笛を吹いた。

大きく二度。


山の向こうから物凄い速さで黒い物体が飛んでくる。


鳥ではない。

その辺にいるような鳥ならばこんなに速くは飛べないだろう。


近づいてくると、その大きさに圧倒される。

視界一杯に広げた翼。

黒く光る鱗。


見たことはなかったが、アレが何かは知っている。


ドラゴンだ。


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