姉はべらぼうに強かった
ミナミという名を二人から聞いて、全くその可能性を考えなかったと言ったら嘘になる。
なにしろ六年ほど前に「旅に出る」と言ったまま、僕たちの前に一度も姿を見せないどころかずっと音信不通だったのだ。
どこかできっとたくましく生きているはずだとは思っていたが、だからと言って心配していなかったわけではない。
家族だから。
たとえ、僕が小さな頃から重度の「かわいがり」を受けていたとしても。
メルガルドとカレーラスはガタガタ震えている。気の毒な気もするが、刺し違える覚悟もなく悪巧みなんかするんじゃないよ。
特にメルガルドは、青白い顔から汗が滝のように流れている。
口を動かしてはいるものの、全く声が出ていない。
さて、あからさまに強者のオーラを纏っている我が姉のステータスでも覗き見てやろうか。
並波美南 Lv87 剣士
HP 1610
MP 908
STR 2241
INT 896
DEX 1585
AGI 2760
LUK 100
剣術Lv8
体術Lv9
物理耐性Lv6
魔術耐性Lv3
火属性魔術Lv3
威圧Lv10(MAX)
鑑定Lv4
桁が違うな。
これがこの世界でどれだけの位置にいるのかわからないが、少なくともメルガルド達が一番の敵だと認識していたわけだから、この世界でも上位のほうなのだろう。
僕なら、デコピン一発で殺されそうだな。
威圧Lv10って、多分僕の精神耐性の高さはこれが原因だろうね。
ドラゴンをひと睨みで屈服させたって、あながち嘘ではないのかも。
二人が震え上がってるのもこれが原因かもな。
そしてアントニオさん。
アントニオ Lv94 賢者 エルカディア王国第二王子
HP 1420
MP 1610
STR 675
INT 1831
DEX 911
AGI 884
LUK 90
剣術Lv5
体術Lv1
無属性魔術Lv8
火属性魔術Lv5
水属性魔術Lv4
闇属性魔術Lv7
精神耐性Lv3
こちらもやばい。
時空魔法とやらは無属性の一種なのかな。
「積もる話もあるだろうけど、とりあえずこの二人を連れてかないといけないんだよね」
王子様の立場からすると、そうでしょうね。
「クーデターを企んだ、って解釈でいいのですか?」
答え合わせ気分で尋ねてみた。
これによって、またしても自己紹介のタイミングを失ってしまったことに気づいたが。
「勿論そうなんだけど、それ以前にそもそも君たちを召喚した時点で罪だし、国王を騙るのも罪だし、少なくとも死刑と爵位剥奪は確定だな」
もっとも、二人はいつの間にか気絶して聞いてはいない。
姉ちゃんのLvMAX威圧は恐ろしいんだな。
それにしても急展開すぎる。
異世界に召喚されたと思ったら悪人の企みに加担させられそうになり、なんとかしようとしてたらほぼ生き別れ状態の姉が王子様連れて助けに来るとか。
「僕が一旦、気絶してるこの二人を連れて王城に転移するから、ミナミはここで待っててくれるか?」
「それでもいいけど、流石に四人連れて転移はキツいでしょ?ポチで王城に向かうよ」
アントニオ殿下は、頷くと気絶している二人の首を掴んだ。
「じゃ、また後で」
そう言うと気絶コンビとともに姿を消した。
「さて……三人とも久しぶりだね」
「久しぶりじゃねーだろ、何年音信不通だったと思ってるんだよ」
「心配だったんですよ」
柑奈は姉ちゃんに可愛がられてたからな(通常の意味で)
すると意外なことを姉ちゃんは言い出した。
「いや、普通に何度かは帰ってたよ。父さんや母さんとも会ってたし。ただ、うちの家族って悪ふざけが大好きでしょ」
じゃなきゃ娘に「ナミナミミナミ」などと名付けない。
「こっそりこっちの世界で家族全員最強になってから大海を連れてこようってなったの」
ん、ってことはここから簡単に向こうに戻れるってことじゃん。
「父さんも母さんもこっちで活動してるってこと?」
「まあまあメジャーな冒険者になっちゃったね。基本的に日帰りじゃなきゃ大海にバレちゃうから、行動にも制約はあったけどね」
なんだよ。
僕だけ除け者にしやがって。
「まあ、そんなことより王城で待ってるからさ」
「ああ、殿下が仰ってたよな」
「アンちゃんはどうでもいいのよ。陛下が、本物の国王陛下が君たちに会いたいってさ」




