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幼馴染が近すぎて無理です‼️ (元傭兵のスピンオフです)  作者: くいたん


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第9話 護衛補助個体、登録されました


青白い光が、遺構内部を静かに脈打っていた。


先ほどまで鳴り響いていた振動は、今はもう低く深い唸りへ変わっている。


床。


壁。


天井。


刻まれた古代術式が、生き物みたいに淡く明滅していた。


誰も動けなかった。


騎士達も。


学院教官も。


魔導補佐員達も。


ただ。


深層領域の奥に浮かび上がった巨大紋章を見上げている。


その中心で。


管理精霊だけが、静かにエルマを見ていた。


感情のない、青白い瞳。


 


――現管理者不在。


――第一管理塔、長期未接続状態を確認。


――後継候補選定を開始します。


 


「…………ぇ」


エルマの声が引き攣る。


嫌な予感しかしなかった。


 


――高親和個体を、暫定後継候補として認証します。


 


「ちょっと待ってください」


エルマは即座に言った。


「しません」


 


――拒否権限を確認できません。


 


「そんな馬鹿な話あります!?」


周囲の騎士達がざわつく。


だが管理精霊は気にした様子もない。


 


――候補個体名を確認。


――エルマ・フォン・ルーベルク。


 


「やめてください!」


 


――認証を開始します。


 


「やめてくださいぃぃぃ!!」


エルマの悲鳴が遺構へ響き渡った。


カイルが眉を寄せる。


「……なんか大変そうだな」


「他人事みたいに言わないでください……!」


「いや急に後継候補とか言われても俺も意味わかんねぇし」


それはそうだった。


騎士達も困惑している。


古代遺構。


管理塔。


後継候補。


全部が想定外だ。


その時。


学院側教官の一人が前へ出た。


「確認する」


低い声が響く。


「その“後継候補”とやらだけが、深層領域へ入れるという認識でいいのか?」


管理精霊が静かに視線を向けた。


 


――深層領域は認証制限区域です。


――未認証個体の侵入を拒否します。


 


空気が変わる。


周囲の騎士達が警戒を強めた。


教官がさらに問う。


「強行突破した場合は?」


 


――封鎖術式が暴走します。


 


静寂。


軽く扱える空気ではなかった。


その時だった。


一人の若い騎士が、慎重に境界線へ近づく。


青白い術式光の縁。


次の瞬間。


 


バチィッ!!


 


「ぐあっ!?」


青白い障壁が弾け、騎士が吹き飛ばされた。


周囲がどよめく。


「下がれ!」


「不用意に触るな!!」


管理精霊は無機質な声のままだった。


 


――未認証武装個体。


――侵入拒否。


 


エルマの顔が引き攣る。


「ほ、本当に入れない……」


クラリスが静かに術式光を見上げた。


「興味深いですね」


「興味深がってる場合じゃありません……」


クラリスはいつの間にか手帳を開いていた。


羽根ペンがさらさらと走る。


怖い。


「深層領域そのものが、管理権限で閉鎖されているようです」


「つまり?」


カイルが聞く。


管理精霊が答えた。


 


――候補個体。


――護衛補助個体。


――記録補佐個体。


――以上三名のみ通行許可対象として認証します。


 


静寂。


そして。


エルマが、ゆっくり顔を上げた。


「…………今、何と?」


 


――護衛補助個体。


 


青白い光が、カイルの足元へ伸びる。


 


――記録補佐個体。


 


今度はクラリスの足元へ。


カイルが目を瞬かせた。


「……俺?」


クラリスは静かに目を細める。


「記録補佐、ですか」


エルマだけが死にそうな顔をしていた。


待ってください。


嫌な予感しかしない。


 


――護衛補助個体、仮認証。


――候補個体保護を最優先任務として設定。


 


「は?」


カイルが眉を寄せる。


「いや別に守るのは構わねぇけど……」


やめて。


そんな自然に言わないで。


好きが悪化する。


エルマは頭を抱えた。


「無理です……」


「何が?」


「全部です……」


カイルは本気で意味がわかっていない顔だった。


その顔が一番危険だった。


 


――候補個体精神安定維持のため、護衛補助個体との同行を推奨します。


 


「安定しません!!」


エルマが即座に叫ぶ。


「むしろ乱れます!!」


クラリスのペンが止まる。


「しかし数値上は安定傾向ですね」


「どこがですかぁ!!」


「カイル様接近時、術式同期率および制御安定率が向上しております」


「分析しないでください!!」


「極めて貴重な事例ですので」


「後世へ残さないでくださいぃぃぃ!!」


カイルが頭を押さえた。


「……何なんだよ、この遺構」


その時だった。


 


ゴゥン――――……


 


今までとは違う振動が響いた。


重い。


深い。


空気そのものが沈むような音。


全員が止まる。


深層領域のさらに奥。


暗闇の向こうで、巨大な光輪がゆっくり浮かび上がった。


複雑な多重術式。


塔を模した古代紋章。


そして。


中央に刻まれた、巨大な封鎖印。


エルマの顔から血の気が引いた。


「……第一管理塔」


カイルが振り返る。


「知ってるのか?」


「……わかって、しまうんです」


頭へ流れ込んでくる。


術式構造。


認証系統。


封鎖領域。


そして。


深層部で眠っている“何か”。


 


――第一管理塔。


――封鎖状態、一部解除。


――後継候補選定試験を開始します。


 


「試験……?」


騎士達の空気が変わる。


管理精霊が続けた。


 


――候補個体による、深層術式制御確認を実施。


――深層領域への移行を推奨。


 


すると。


暗闇の奥へ向かって、床の術式光が一本の道を形成した。


青白い通路。


まるで遺構の心臓部へ続く道だった。


冷たい空気が流れてくる。


カイルが、その奥を見る。


そして。


迷いなく言った。


「……行くぞ」


エルマの心臓が止まる。


「…………え」


「試験なんだろ?」


「そ、そうですけど……」


「だったら終わらせるしかねぇ」


簡単に言う。


昔からそうだった。


危険な時ほど、真っ直ぐ前へ進む。


だから。


ずっと好きだった。


「っ……」


エルマの耳が赤くなる。


挿絵(By みてみん)


クラリスが、静かに手帳へ書き込んだ。


「本日二十七回目です」


「数えないでくださいぃぃぃ!!」


その叫びだけが、静まり返った古代遺構へ虚しく響いた。

お読みいただきありがとうございます♪

☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂くと、モチベーションが爆上がりします。

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