27.文化祭の準備
学園に、文化祭の季節がやってきた。
それは、この学園でも指折りの一大イベントだ。
生徒だけではない。
外部の客。
貴族。
有力者。
いろんな連中が来る。
つまり、ただの行事じゃない。
学園の名誉と評価がかかった、見せ場だ。
その中でも、特に目玉とされているのが……。
闘技場で行われる、魔法演出ショーだ。
各属性――火・水・風・土・光・闇。
それぞれの優秀者が選ばれ、自分の魔法を使って“魅せる”。
戦いではなく、演出。
技術だけでなく、センスも問われる。
まさに、学園の魔法の粋を集めた催しだ。
「……で」
俺は、小さくため息をついた。
「なんで俺が出ることになるんだよ」
闇魔法の演者。
それが、俺の役割だった。
まあ、理由はわかる。
成績。
実戦能力。
あと、目立ちすぎたせいだろうな……。
全部考えれば、選ばれるのは不自然じゃない。
……納得はしたくないが。
問題は、その中身だ。
「構成は自分たちで考えろ、ね……」
丸投げである。
そのくせ、しっかりクオリティも必要だ。
もし完成度が低いとみなされたら、速攻作り直しとなる。
それは流石に避けたい。
頭の中で、いくつか案を組み立ててみる。
「やっぱ影の球とかかな……?」
無数に浮かべて、空中に展開したりする。
それだけでも見栄えは悪くない。
「後は影の鳥……」
これはかなり使える。
形を変え、複数展開し、自由に飛ばす。
観客受けはいいはずだ。
さらに……。
「その中で影遁するのはどうだ……?」
鳥が舞う中、俺の姿が消える。
そして、別の場所から出現。
……うん。
「結構いいんじゃね?」
カッコ良さそう。
自分で言うのもなんだが、これは盛り上がる気がする。
だが、それだけじゃ終わらない。
後半は、他の演者との合同演出だ。
個人プレーだけじゃダメ。
「……面倒だな」
正直な感想が漏れる。
とはいえ、決まっているものは仕方ない。
他の演者も、すごい人がそろっている。
例えばエレノア。
彼女は、光魔法の演者だ。
あの人なら、派手で安定した演出ができるだろう。
回復や補助だけじゃない。
光の演出は、見せ方次第でいくらでも映える。
……そして、何より。
「失敗しなさそうだ」
あの真面目さだ。
変なミスはまずない。
後はルーク。
彼は風魔法担当だ。
こいつは……まあ、ノリだな。
機動力と広範囲操作。
演出としてはかなり優秀だが、問題は本人。
「ちゃんとやるよな……?」
一抹の不安がよぎる。
いや、やるときはやるやつだが。
たまに変なことするからな、あいつ。
そんな感じで、何度か打ち合わせを重ね。
大まかな構成は決まった。
あとは練習。
正直、これが一番面倒だ。
ひたすら反復。
タイミングの確認。
位置取り。
連携。
少しでもズレれば、全部台無しになる。
「……忙しすぎるだろ」
思わず愚痴が漏れる。
本当なら、やるべきことは、別にある。
ネロ先生の監視だ。
あの件は、まだ終わっていない。
むしろ、これからが本番だ。
「……絶対、仕掛けてくる」
確信があった。
今までの流れを考えれば、文化祭なんて格好の舞台だ。
人が多い。
注目も集まる。
混乱も起こしやすい。
こんなチャンス、見逃すはずがない。
なのに。
「なんで俺は、こんなことやってるんだか……」
影の鳥を飛ばしながら、ぼやく。
演出の練習。
……いや、大事なんだけどな。
これ失敗したら普通に恥かくし。
少しだけ、考える。
優先順位。
どっちを取るか。
だが……。
「……まあ、いいか」
どのみち。
「来るなら来るだろ」
これまでだって、全部そうだった。
向こうは仕掛けてきて、俺はそれを止めてきた。
なら、今回も同じだ。
「文化祭だろうがなんだろうが、来たら、そのとき叩く」
シンプルでいい。
考えすぎても仕方ない。
文化祭。
華やかな舞台。
そして、その裏に潜むもの。
何が起きるかは、まだわからない。
だが……。
「……まあ、どうにかなるだろ」
小さく笑う。
楽観でも油断でもない。
ただの、いつもの結論だ。
……その時は、その時だ。




