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22.舞踏会当日




 それから月日は流れ……。


 気づけば、舞踏会当日だ。




「……そろそろ、来るかもしれないな」




 屋敷を出る前から、ずっとそんなことを考えていた。


 これまでの流れを思い返してみると。




 ダンジョン実習。


 武闘会。




 ……どちらも、人が集まる“イベント”の最中に仕掛けてきた。


 なら、今回も同じだと考えるのが自然だ。




 犯人が何をしたいのか、なんとなくわかる。


 人目につく場所で俺を殺したいのだろう。


 そうすることで混乱を起こすことが目的だ。




 その隙に、別の何かを仕掛ける可能性もある。




 王子か、エレノアか。


 あるいは、その両方か。




 いずれにしろ、見逃すつもりはない。




 そして俺は、舞踏会の会場へと向かった。




 舞踏会は、大広間で行われる。


 その入口前で、ユリアと待ち合わせていた。




 時間通りに着くと、すでに彼女はそこにいた。


「待ちましたか?」

「いえ、今来たところです」




 そう言って、ユリアは振り向いた。




 ……。


 ……綺麗だ。




 普段は落ち着いた制服姿の彼女だが、今日は違う。




 深い青を基調としたドレスを着ている。


 銀色の髪と、よく似合っていた。




 そして何より、いつもと違ったのは。




「……眼鏡、していないんですね」


 ユリアは普段、常に眼鏡をかけている印象が強い。




 だが今は、それがない。


 素顔がそのまま露わになり、整った目元がはっきりと見える。


 理知的で落ち着いた雰囲気はそのままに、どこか柔らかさが増していた。




「はい。今日は特別な場ですので」


 なるほど。




「では、いきましょうか」

「はい」




 大広間に入った瞬間、思わず息をのんだ。




 ……これはすごい。




 天井からは巨大なシャンデリアが吊るされ、無数の光を放っている。


 壁には金の装飾が施され、繊細な模様が輝いている。


 床には深紅の絨毯。


 足を踏み入れると、わずかに沈み込むような感触があった。




 奥の方では楽団が演奏をしており、優雅な音色が空間を満たしている。




 笑い声。


 衣擦れの音。




 すべてが重なり合って、ここが“特別な場所”であることを強く感じさせる。




 生徒たちはみんな正装している。


 普段とは違う姿に、一瞬誰かわからない者も多い。




 そんな中でも、あの二人はやはり別格だ。




 王子とエレノア。




 アルフォンス王子は、白を基調とした礼装を着ていた。




 金の装飾が施されたその衣装は、派手すぎず、それでいて圧倒的な存在感を放っている。


 整った顔立ちと相まって、まさに“王子”という言葉がそのまま形になったようだ。




 隣に立つエレノアは、淡い光を宿したようなドレスを纏っている。


 金の髪が柔らかく揺れ、その一つ一つが光を反射して輝いているように見えた。


 姿勢、視線、仕草。




 すべてが洗練されていて、自然と周囲の視線を集めている。




 ……すごいな。




 見た目だけじゃない。


 立ち居振る舞いそのものが、他とは一線を画している。




 やがて、楽団の音が一度止まり、前方に学園長が姿を現す。


 開会の挨拶が始まった。


 内容は……正直、あまり頭に入ってこない。




 それよりも、周囲の様子や気配に意識を向ける。




 怪しい動きはないか。


 視線の流れはどうか。




 ……今のところ、異常はなし。


 ひとまずは大丈夫そうだ。




 そして、再び音楽が流れ始めた。


 いよいよ、ダンスの時間だ。




「行きましょう」

「あ、はい」


 ユリアに手を取られる。




 ……正直いって、ダンスは全く自信ない。


 色々と不安要素はあるが、一番はユリアの足を踏まないか、だ。




 だが……。


 その心配はいらなかった。




 最初はぎこちなかったが……。


 ユリアがうまくリードしてくれたおかげで、なんとか形にはなっている。




 足運び、手の動き、回転。


 すべてを自然に誘導されるような感覚だった。




 ……すごいな。


 そのまま、最後まで踊り切った。




 ダンスが終わると、場の空気が少し変わる。


 その後は自由時間だ。




 他の相手と踊る者。


 休憩する者。


 談笑する者。




 それぞれが思い思いに過ごし始める。




 ……さて


 舞踏会は、まだ始まったばかりだ。


 いつ犯人が仕掛けてきてもおかしくない。




 まだ警戒を解いてはいけない。




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