21.舞踏会のパートナー
……さて。
誰か誘わないと本格的にマズイな。
このままだと雑用係一直線だ。
それだけは絶対に避けたい。
というわけで、まずはターゲット探しだ。
さりげなく周囲を見渡す。
……女子生徒は、いるにはいる。
むしろ、そこら中に。
だが……。
「……無理だろ、これ」
思わず本音が漏れた。
女子生徒たちは、ほぼ例外なく数人単位で固まって行動している。
楽しそうに談笑しながら歩いていたり、廊下の端で話し込んでいたり。
考えてもみろ。
あの輪の中に、いきなり割り込む勇気があるか?
それで「一緒に舞踏会に行きませんか?」なんて言えると思うか?
無理だ。
どう考えても無理だ。
俺は少し離れた位置から、その様子を眺めることしかできなかった。
……ん?
一人の男子生徒が、女子生徒のグループに向かって歩いていくのが見えた。
まさか、あいつ……。
そのまさかだった。
彼は、女子生徒の集団のうちの一人を、
「もしよければ、舞踏会、一緒にどうかな?」
堂々と、誘った。
誘われた女子生徒はすぐに笑顔になり、頷いた。
……すげえ。
あんな風に、ためらいもなく行けるもんなのか。
いや、俺には無理だな。
あれは一種の才能だ。俺にはない。
知らない相手を誘うのは、ハードルが高すぎる……。
となると、選択肢は一つ。
知り合いを当たるしかない。
だが……。
改めて考えて、気づく。
……そもそも、女子の知り合い少なすぎないか?
俺は、学園でほとんど女子と話してない。
女子でまともに会話したことがあるのは……。
「エレノア、くらいか」
自然とその名前が浮かんだ。
護衛対象で、何度か会話もしている。
人柄も申し分ない。
……だが。
無理だろ……。
そもそもあの人は、王子と行くらしいからな。
あの二人はたしか、婚約者だったはずだ。
身分的にも、俺が入り込む余地はない。
「……詰みじゃね?」
再び同じ結論に戻りかけた、そのとき。
廊下の向こうから、見覚えのある人物が歩いてきた。
青みがかった長い銀髪に、眼鏡。
落ち着いた雰囲気をまとった少女。
ユリアだ。
ダンジョン実習で一緒だった、あの多属性使いの天才。
直接話した回数は多くないが、完全な他人というわけでもない。
「……いや、でも」
どうする?
声をかけるか?
悩んでいるうちに、向こうもこちらに気づいたらしい。
「リゲルさん」
先に声をかけてきたのは、ユリアの方だった。
「こんにちは」
こちらも挨拶を返しておく。
「お久しぶりですね。最近はいかがですか?」
「まあ、いつも通りです。授業や実習で忙しいですが」
「私も同じです。特に最近は舞踏会の準備で慌ただしいですね」
向こうから舞踏会のことを話してきた。
「舞踏会ですか……正直、まだ誰と組むか決まっていなくて」
するとユリアは、こう答えた。
「私もです」
……え?
それはちょっと意外だったな。
確かに、ユリアはあまり人付き合いが良いわけではない。
だが、ユリアは学園内でもかなりの美人だ。
誰かしら、誘いにきそうなもんだけどな。
ユリアは話を続ける。
「それで、ふと思ったのですが……」
「はい?」
「お互い、まだパートナーが決まっていないようですし……もしよろしければ……私と組むというのはいかがでしょうか?」
……誘われた。
「ああ……はい。それは良いですね」
こちらとしても、断る理由はない。
俺の返事を聞くと、ユリアはほっとしたような顔で
「ありがとうございます」
軽く頭を下げた。
そして、廊下を歩いていった。
……ふぅ。
とりあえず、舞踏会のパートナーを確保できた。
これでひとまず、安心だ。




