12.噂と武闘大会
次の日。
学園には、犯人が潜入しているとわかっている。
だから、警戒を怠ってはいけない。
視線は常に周囲。
人の流れ。
気配。
視線。
全部、意識する。
……だが。
怪しいやつはいないな。
少なくとも、露骨に動くやつは。
まあ、いきなり襲ってくるタイプじゃないか。
昨日の感じからして、もっと計画的だ。
……面倒だな。
教室に入り、席につく。
……その瞬間。
「なあ、リゲル!」
「あれ、まじなのか!?」
ッ!?
お前ら、どうしたんだ?
同じクラスの生徒たちに囲まれた。
「ドラゴンと戦ったんだろ!?」
「すげえな!」
……は?
一瞬、思考が止まる。
「いや、なんで知ってんだ?」
ざわざわ。
みんな興奮してる。
「おい、ルーク!」
「ん?どうした?」
お前まさか……。
「誰かにあの事を話したのか?」
「いや、話してない。」
本当か?
「だって、先生から、誰にも話さないように言われてただろ?」
たしかにそうだ。
あの後、俺たちはネロ先生に言われた。
「このことは、誰にも話さないように」
と、かなりきつく念を押された。
ルークも、それを覚えているだろう。
……じゃあ、誰だ?
「しかもさ!」
別のやつが言う。
「影の鳥で逃げたんだろ!?あれすげえよな!」
……は?
そこまで知ってる?
あれは、あの場にいたやつしか知らない。
王子。
エレノア。
フィオナ。
ルーク。
ユリア。
ネロ先生。
この中で、一番誰かに話したりしそうなのは……。
「いや、俺じゃないって!!」
ウーム……。
嘘はついてなさそうだ。
「なあリゲル!」
「王立学園武闘大会、出ろよ!」
ん?
「王立学園武闘大会?」
何それ?
「知らないのか?」
ということで、ルークが教えてくれた。
王立学園武闘大会。通称。武闘会は、年に一度開催される大会だ。
そこでは、学園内の強者たちがトーナメント形式で戦い、学園一を決める。
試合では、剣と魔法での戦闘が行われる。
なんでも、ダンジョン実習の後にある恒例イベントだそうだ。
ちなみに、ダンジョン実習と違い、これは希望者や推薦で参加者が決まる。
「という感じだ」
へえ。
いかにも学園っぽいな。
「お前なら優勝狙えるだろ!」
「絶対出ろよ!俺、推薦するからさ!」
いやいやいや。
勝手に決めるな。
……でも。
なんか、引っかかる。
……放課後。
帰ろうとしたところで。
「リゲル・ノワール」
知らない教師に呼び止められた。
「ちょっといいか」
別室に連れて行かれ、話を切り出された。
「武闘会について、話がある」
……やっぱりか。
「君には多くの推薦が集まっている」
……多くの、ね。
「ぜひ参加してほしい」
ウーン……。
さっきも言ったように、今回のことについては、ひっかかることがある。
俺を推薦した人達はみんな、あの噂について知っているだろう。
この噂を流したヤツが、このことを予想していたとしたら?
つまり、そいつは、俺を武闘会に参加させるために噂を流したんじゃないか?
それに、昨日の夜に聞いた会話。
……嫌な予感しかしない。
「……辞退はできませんか?」
一応聞いてみる。
すると、教師は少し驚いた顔をした。
「武闘大会に出ることは、大変な名誉だ」
ほら来た。
「それに、これだけ推薦がある。参加してみてはどうだ?」
……ダメだな。
これは、実質強制参加。
「……分かりました」
断っても面倒になるだけだ。
「よろしい」
教師は満足そうにうなずいた。
そして俺は、部屋を出た。
廊下を歩きながら、考える。
昨日の夜の、あの会話について。
ーーだが、あのリ…とかいう生徒は邪魔になりそうだ
ーーヤツは……排除……
ーーいいだろう。私がやる
奴らは、俺を排除するために何か行動を起こしたはずだ。
それに、今日のことについて。
噂の広がり。
武闘会に参加させられたこと。
武闘大会は、剣と魔法での試合が行われる。
事故に見せかけて俺を殺すこともできるはずだ。
……フゥー。
嫌な予感しかしない。
絶対に、何か起きる。




