11.岩場の密会
影の鳥は、静かに飛ぶ。
俺の視界も、それに合わせて移動する。
やがて見えてきたのは、あの岩場。
ドラゴンがいた場所だ。
着地し、岩陰に身を隠す。
視界を低くして、周囲を探るが……。
……誰もいない。
気配もない。
静かだ。
まあ、そんな簡単には見つからないか。
しばらく様子を見ることにしよう。
鳥は岩陰に隠しておいた。
さて、偵察の他に、やることがある。
親父に報告だ。
廊下を歩いて、書斎の前へ。
ノックもそこそこに入る。
「親父」
「来たか」
……あれ?
父は机に座ったまま、こっちを見ていた。
何やら真剣な顔。
「話は聞いている」
はやっ。
「学園で問題が起きたそうだな」
「耳が早いな」
「当然だ」
父は鼻で笑う。
まあ、うちの家だしな。
こういう情報はすぐ回るか。
「で、どう思う」
「誰かが仕組んだ。王子かエレノアを狙っている奴だ」
俺は簡単に答える。
「そうだな」
父はうなずいた。
「なら、お前のやることは一つだ」
わかってるって。
「エレノアをしっかり見張れ」
「……」
俺は軽く頷いた。
「今回の事は、こちらでも調べる。油断するなよ、リゲル」
しねえよ。
そのまま、俺は書斎を出た。
……さて。
部屋に入り、意識を鳥へと向ける。
まだ何も起きてないようだ。
まあ、動きがあるとしたら夜だろう。
「黒影……影獣」
影を実体化し、鳥をいくつか作る。
これを、他の場所にも飛ばしておこう。
学園とか、エレノアの家とか。
そこにも犯人が出るかもしれないからな。
その夜。
あの岩場で、ついに見つけた。
その頃、岩場は暗くなっていた。
月明かりを頼りに見張っていた。
そのとき。
……風が止まった。
「……か」
……来た。
人の声がした。
視界を向けると。
岩の向こうに、二つの人影があった。
どちらも、フード付きの黒い服。
ネロ先生みたいな格好だ。
怪しさ満点だな、おい。
だが、暗闇に紛れるにはいいんだろう。
耳をすます。
……だが。
おかしい。
音が歪んでいる。
魔法で声を変えているのか。
「……は失敗だったが……の計……は影響しないな」
……聞き取りづらい。
「ああ、すでに手……てある」
……やっぱりこいつらか。
「だが、あのリ…とかいう生徒は邪魔になりそうだ」
ん?
『あのリ…とかいう生徒』って……。
嫌な汗が出る。
「ヤツは……排除……」
おいおい。
「いいだろう。私がやる」
「気をつけろ。……学園に潜入……忘れるな」
……は?
今、『学園に潜入』って言ったか?
「心配ない。私は疑われていない」
しかも、この口ぶりだとすでに……。
「では、学園で……」
そのとき。
「……待て」
空気が変わった。
「……何かいる」
……っ!
まずい。
気づかれた。
俺はすぐに鳥を動かそうとする。
だが、もう遅い。
何かが飛んできた。
……衝撃。
そこで、途切れた。
……。
……マジか。
……やられた。
あの一瞬で、使い魔を潰された。
まさか気づかれるなんて……。
しかも、気づいてからの反応も早い。
あいつら、相当な手練れだ。
「ウーン……」
さっきの会話が、頭の中でぐるぐる回る。
――……は失敗だったが……の計……は影響しないな。
ーーああ、すでに手……てある。
ーーでは、学園で……
なるほど。
まず、あいつらが今回の犯人で間違いない。
今後も何かするつもりだ。
そして。
ーーだが、あのリ…とかいう生徒は邪魔になりそうだ
ーーヤツは……排除……
ーーいいだろう。私がやる
ーー気をつけろ。……学園に潜入……忘れるな
『あのリ…とかいう生徒』
これは、多分俺だ。
そして、誰か学園に潜入しているヤツがいる。
そいつが俺を排除……。
つまり、俺を殺そうとしているらしい。
しかも、あの感じだとかなり強いな。
……はぁーー。
マズイことになったな。
だが、事前に知れたのは良かった。
これから、忙しくなりそうだ。




