3 爆発まで30秒エルザむかつく
パピヨンと別れたあとのエルザの話です。エルザはまともに飛行機に乗れない運命のようです。二人の接点はいつ来るのか。
・・・
機内は乾燥していた。
飛行機の揺れが少し激しい。フランスからイギリスは近い。別に飛行機でなくても良かったかもしれない。
揺れは収まらず、なにやら降下している・・。
これならバスとかで行けばよかったかもしれない。
料理が運ばれてきた。食欲がない。お酒を飲む気分でもない。
私はコーラを頼んだ。本当は何か食べた方がいいかもしれないけどね。
急に後方で乗客は騒いだ。何だろう・・・
スッチーに止められたが私は席を立った。一応ジャンプ経験者だから何かの時は脱出を考えておかないと。
私は荷物置き場に行った。パラシュートがあるとは思えなかったが飛行機の作りが違うかもしれない。
さり気なく、扉を開く。
当たり前だがあの大きなリュックはない。普通はないだろう。あの時は特別だった。ジャンプできないか・・。なにかあった時どうしょうかな・・。
私は空いている席についた。短い距離だ。不意に前方を見る・・・騒いでいる・・あれは
前方から覆面をした男たちが来た。
まさかのハイジャックか・・・。テロか。普通の旅行がしたいものだ。私は溜息をついた。
今度こそ死ぬかもしれない。
覆面をした男たちの一人が私の腕をつかんだ。なんで・・私なの?私じゃないといけない理由でもあるのか?
何やら言っているが分からない。私は抵抗はしなかった。抵抗したら射殺されるかもしれない。短気な人の多い集団だ。とりあえず私はおとなしく言うとおりにした。もっとも何を言っているのかわからないけど。
そのまま私は引っ張られていき、とうとう操縦席の近くまで来た。
これからどうなるんだ・・。この人達何がしたいんだろう。ハイジャックってところか。
操縦席に一人が乗り込んだ。何やら言っている。
パイロットの一人が何やら言っている・・。次に私が引っ張られて操縦席に入る。
ナイフを持つ大柄の男がいる。何やら要求しているのか。
私は叫ぶのでもなく泣くのでもなく、ただ茫然と見ていた。
さっき、パピヨンからグッドラックというメッセージをもらいウルッときた瞬間だけ平和だった。
それからあとの人生はこうだ。だれが予測できるんだ。
そして私はゆっくりと自分の状況を判断した。
何気なくパピヨンと別れたんだよね・・コレ。端的に言えば失恋に近い状態だ。うううううっつ。
それなのに、私の周りは物騒な武装した集団がいて飛行機を乗っ取ろうとしている。
覆面した一人の男が英語でゆっくり私に大丈夫かと聞いた。意外に優しい。
私はゆっくり言った。
「あのね・・あたし失恋したんだよ・・・大丈夫じゃないんだ。泣きたいのにさ。こんなのってひどくない?
そっとしてほしいんだよ・ね・・」
覆面した男がおおおっと・・悲しそうな顔をしていった。
「それは気の毒に。きっと新しい出会いがあるさ。」
「とりあえずさ・・・殺さないでよ。わかるでしょ・・失恋てさツライんだよ」
「OK.わかったよ・・君は殺さないでもね・・・君死ぬかもしれないよ・・ここにいたら」
「なんで」
「もうすぐこの飛行機爆発するんだ。キミのつらいことも全部吹き飛ばしてあげるよ」
「・・・・あっそ・・・わかった・・・ちなみさ、爆弾みたことないんだ」
「みたい?小型だから分かりにくい。爆発規模は小さいよ。機体吹き飛ばすだけだから。
」
「どこにあるの?」
「荷物のあるとこ。でも小さいからわかるかな?」
「それでこういうことしてメリットってあるわけ?」
「政治を良くするためだよ・・。」
「あんたさぁ・・アフォじゃね・・こんな爆弾一つ作ったところでなんの脅しにもならないんだよ。」
「そんなんで政治が曲げられるとでも思っているわけ。戦争ごっこなんかやるもんじゃない。」
「おい・・・黙れ・・」
私はグィッと掴まれた。言い過ぎたかもしれない。
「ごれからどうするの?」
「もちろん、脱出さ・・。それから休暇。」
「じゃね・・お嬢さん。天国で」
覆面の一人が私に何か嗅がせた。私は目の前がぼやけて倒れた。最後に足が見えた。
「死ぬんだ・・・今日・・・」
私はどれだけそうしていただろうか。気が付くと毛布を掛けられ横になっていた。
機内の乗客はまだ気づいていないようだった。私はふらつきながら立ち上がった。
どうしたらいいんだ・・。誰かにいうべきか話している間にも時間が過ぎていく。
パイロットは飛行機の向きを変えたようだ・・どこへ行くのか。あのパイロットは爆弾を取り付けたことを察しているかもしれない。何等かの連絡はしているはずだ。気圧のせいか頭が痛い。
本当ならもうイギリスに到着している時間なのに。これからどこへ行くのか・・。
飛行機は上昇していくどんどん・・・。そうかできるだけ上空で爆発して地上に影響を与えないようにしているのか。
でもいづれ爆発そして墜落するだろう。急がなければ。
覆面の男が言っていた荷物室。
私は歩きだした。スッチーが私をとめた。
私はさっきの奴らが爆弾を仕掛けたことを何とか言い伝えた。
私はスッチーの手を振り切って私に荷物室に入った。
私は荷物置き場に入った。ゲートがある。スッチーも中に入ってきた。
ゲートが開いている・・・
すでに先客が飛び立った後がそこにあった。脱出したのか。
そして私は気づく…最悪の事態に。
目の前にあるのは映画とかで見たことのあるタイプの爆弾だった。カウントしてるじゃないか・・。
スッチーは動揺を隠せない。とにかく報告するからアナタは何もしないで・・と荷物室を出て行った。
爆弾は小さいと言っていたがすぐ分かる大きさだ。あのスッチーは私に何もするなって言った。何もするな?あと数秒したら死ぬじゃないか。
それでもいいのか?今頃連絡したところで応援なんてくるもんか。
私は、無性に腹が立った。失恋したばかりなのに、こんなことをしないといけないのか。
カウントは残り30秒だ。トムクルーズならなんとかしてくれるだろうか。なにもしないわけにはいかないだろ!
私は恐る恐る下を見た。海だ。本当なら下の安全を見なければならないのに。時間がない。
ちきしょう・・。私はその爆弾を蹴とばした。これしか選択肢がないだろう・・。
素人判断でやってしまった。もしなんかあったとしてもあのスッチーはあの女が勝手にやったとか言うだろう。よくいるそういうヤツ・・・。
バッグはユラユラと落ちていった。私はゲートを閉め、耳を塞ぎできるだけ体を低くした。機内の連中に教える時間はなかった。
爆音と衝撃で飛行機が揺れた。私はガタガタ震えた。あいつら・・・テロリストだったんだ。
スッチーが荷物室に入ってきた。こいつ・・・。
「爆弾は・・」
「海に落ちた。落ちる途中で爆発した。」
「貴方は何者なの?」
「私は・一般人よ・ただの・。皆をお願い・・私は疲れたの・・失恋したし・・しばらくここにいるわ」
私は答えにならないことを言った。事実そうなんだ。真実を話したところで誰もまともに受け止めないだろう。
「わかりました。何であれ、あなたは救ってくれた・・誰よりも早く気づいて。私はあなたを忘れないわ。
名前を教えて・・・。あなたはあの乗客ではないわね。あなたの本当の名前・・・。だれにも言わないから」
こういうヤツに限って言うんだ。
「私の本当の名前はもうないのよ・・。ごめんなさいね」
私は泣いている・・。そう、名前はない。エルザっていうのはただの組織の中での通称に過ぎない。
スッチーは私を見つめた。彼女に私の状況が分かるわけでもないだろう。
「ありがとう・・名無しさん」
スッチーは外国人が別れの際に見せるハグを私にしてきた。しばらく人に抱きしめられたことがなかった。
気のせいかスッチーも泣いていたのだろうか。目に涙を浮かべていた。
なんでこの人が泣くんだろう。
「何気に今の私ってカッコイイ?」
私はスッチーに聞いてみた。
「最高にカッコイイわ。」
「ありがとう・・。じゃぁしばらく一人にさせてくれるかしら」
「分かったわ。機内で待っているから何でも言って」
「ありがとう」
スッチーは荷物室のドアを閉めた。
私は荷物を見渡した。正体は知られていないが私が一般人ではないことを彼女は間接的に知ってしまった。
このまま機内にいたら着陸と同時に事情聴取が待っている。
だいたいあの手の女が黙っておかないだろう。
私は脱出することにした。どうやって脱出するか。
パラシュートはない。浮きやすい物を先に落とし自分が次に落ちる。
浮き上がった物に掴まり岸まで泳ぐ。うまく行けばいいけど。
失敗すれば死ぬ。
しかしこのまま機内に居たとしても都合よく出られないだろう。
その方が苦痛だ。
私は気を取り直してできるだけ軽くて浮きやすくて丈夫そうな荷物を物色していた。荷物を停めてあるベルトが外れた。
スーツケースが落ちてくる。そのうちベルトが一つ外れていた。
私は一つスーツケースを選び、自分の背中とスーツケースををベルトで巻きつけ固定した。自分の荷物から必要な物を取り出し服のポケットに入れた。
しかし普通にリュックのヤツ探した方が良かった気がする。抜け落ちそうだ。
私はゲートを開けた。強い風が入ってくる。海が見える。
飛行機は着陸しないようだった。明らかに航路はずれていた。
このあとこの飛行機はどこへ行くのだろうか?
まぁいい。爆弾はなくなったんだ。なるようになるだろう。
それよりも自分の心配をしなければ。大丈夫2回目だし。慣れたかもしれない。
下を見る・・・。慣れるわけないだろ・・。コワイ。
私は飛んだ。さっきまで暗い気持ちだったのに、なぜか気分は晴れやかだった。
ゆっくり更新してきます。




