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2 消えた飛行機とモデルデビュー

エルザを乗せたと思われる飛行機は飛行中謎の爆発を起すが現状は機体は見当たらない。飛行機はどこへ行ったのか?エルザはどうなったのか?

エルザを探し思わぬハプニングに巻き込まれてしまうパピヨン。

朝、階下の何かしらの音で俺は目が覚めた。

俺は洗面所で顔を洗い口を漱いだ。


体がだるい。睡眠不足だな・・昨夜から今朝までほとんど動きづめだった。

鏡の中の俺は少しやつれている。


美味いモノを喰うか・・。

俺は着替え階下へ行った。カフェは混んでいた。

俺はマリーに挨拶をし、カウンターの席に座った。

マリーは手際よく朝食の準備を始める。

クロワッサン・目玉焼き・サラダ・コーヒーが俺の目の前に置かれた。

特に目新しいメニューでもないのに、この美しさはなんだろう。

どうしてこんなに美しいのか。俺はマジマジと見た。


マリーが笑い出した。

俺は食べ始めた。クロワッサンってこんなに美味いか・・・?

美味い・・。俺は腹がものすごく減っていたのか。何を食べても美味かった。


いや本当に美味いんだ。俺は1週間だけでなく3ヶ月くらい世話になってもいいと思った。


俺は、マリーに美味いと言うとマリーは顔を赤くした。

お世辞じゃなくて本当に美味いんだ。


マリーは機嫌を良くしコーヒーを注いでくれた。


俺はタバコを出し火をつけた。落ち着く・・・。

気に入った・・。もし他に引っ越しても俺はまたここで朝飯を喰おうと思った。


コーヒーを飲みながらマリーに世間話をしてみた。

話題はこの地域の事やフランスの事・・それから何気にこの間の飛行機事故の話もしてみた。

地域の事は景気とかそういう内容のあたりさわりのない会話だった。

しかし飛行機事故の話題に関しては独自の意見を言った。


「あの事故は不思議なのよ。なぜか機体が見つからないんだって」


「見つからないのはおかしいよね。墜落したなら何かしら落ちてくるはず・・」


「そうなの。だから私思うわけ。あれは事故じゃないって」


「事故じゃないなら、何?」


「戻ったの」


「え・・?何?戻ったって・・」


「飛んだんだけど戻ったのよ。」


「どうして・・・なんで戻る必要が」


「さぁ・・・でも落ちていないなら、飛んでいるか、戻っているかよね・・」


「それはそうだけど・・・」


俺はニュースで爆発と聞いた。あれは違うのか。


「あなた何であの事故の事気になるの?」


「いや・・機体がないのが引っかかってね」


「そうね・・。」


「朝食ごちそう様・・俺ちょっと出かけてくるから。」


「そう・・じゃぁまた後で・・・」


俺はマリーに挨拶をし、自分の部屋に戻った。


洗面所で歯を磨きながらマリーの言ったことを思い返していた。飛ばなかった・・。

そんなはずない。俺は見た。あの飛行機が飛ぶところを。それをマリーには言えなかったが。

戻る・・・・あり得ない。


俺はトランクを持ち階下に降りて行った。マリーに軽く挨拶をし駐車場に向かう。

俺は歩きなが色々考えた。自分の車の前に来たが乗らずそのまま歩くことにした。


何のために戻るんだ。どうして飛行機が見つからないんだ。


飛んでいない。飛んでいなかった。マリーの説が正しいとなるとこういう結論になる。


飛行機は定刻に離陸したが何等かのトラブルがあり、もう一度戻ってきた。

その際のミスか。どんなミス。ミスを隠す必要があるのか。

あるとするなら、信用・・・株価操作。


株価・・まさか飛行機の会社の株価・・・。

もしあの飛行機会社の株価が落ち込んでいて、いわゆる赤字・・それでもしエンジントラブルなど

信用に関係することで公開するとさらにまずくなる状態、それを隠ぺいするために操作をするなら

強ちない話とはいえない。しかし、いくらなんでも客を乗せている状態でそんなことするだろうか。

そんなことしたら、もっと信用がなくなるだろう。


俺はポケットからタバコを出し、口に咥えたが火をつけずにそのまま歩き始めた。



ばかな・・。俺は首を振った。どちらにせよ、イギリス側から見た情報を照らし合わせる必要があると思った。


俺はトランクから地図を出し、イギリスへのルートをチェックした。

エルザの使ったのは飛行機。その他バス・船でも行ける。エルザは飛行機を選んだのか。

バスの方が旅費は安い。船は船酔いとかもあるだろう。

俺は空港のカフェの前でエルザに会った。

その時俺は矢野というパイロットに変装していた。

彼女と会った時、彼女は俺に微笑んだ。

どうして俺はあの時引き止めなかったのか。今でも悔やんでいる。

俺はとっさにとった行動は無視だ。


俺は溜息をついた。とりあえず、イギリスに行ってみよう。


俺は地図をトランクの中にしまった。それから再び歩き出した。考えが定まらない場合俺はこうやって

歩きながら考えることにしている。まぁ、気づくととんでもない場所に来ている場合が多いが、ここなら

それほどとんでもない場所には出ないだろうと俺はふんでいた。


どんな結果だとしても俺は見なければならない。とことん調べて何も出なければ仕方がない。

その後は俺なりに決着をつければいい。決着。それは死だろう。

エルザが死んだにしろ、生きているにしろ俺は咄嗟に落合由美を殺してしまった。

俺とあの女の事をろくに知らないエルザを殺そうとした女を俺は許せなかった。


俺は気づいた。この気持ちは妻の時と似ている。そうして俺はアイツを殺したんだった。


アイツ・・もしかしてあの時と同じことをしたのかもしれない。


俺がアイツだと思って殺したのがもしエルザだとしたら・・・そんなあり得ない。

アイツは間違いなく落合・・。エルザが落合のフリをしたのは空港での時だけだ・・。

わざわざここまでどうやって俺がいることが分かったというんだ。


俺は唖然とした。俺がいることを分かっていたヤツがいる。ハシモトだ。ハシモトはエルザに会っている。

もしハシモトがエルザに連絡を取ったとしたら。いや、エルザは連絡手段は持っていないはずだ。

いや・・・。ハシモトはホテルとかマークして客を待っている。

もしエルザがその場所に居たとしたら、接点がないとは言えない。


仮に飛行機に乗っているのが本物の落合由美だとする。落合由美は飛行機事故で死ぬ。

どちらにしても彼女は死ぬ運命にあった。そうじゃない場合もあるが。


俺は地図を見た。空路をチェックしてみる。機体が落ちたと思われる場所付近を見てみるか。

それには、船も用意する必要がある。船・・か。ちょっとした船が要る。


「船・・・か。」


俺はどうやって船を調達したらいいのか考えていた。


「船・・」


気づくと俺はつぶやいていた。そしていつになく俺はぼんやり歩いていたために、

このあととんでもない事に巻き込まれるのだった。



+++


ショーが始まるというのに肝心なモデルが来ない・・。

ランウェイに大方のモデルはスタンバイしているのにメインのモデルが遅刻をしてやきもきしていた

デザイナーはモデルを変更することに決めた。


モデルを今から変更するのは間に合わない・・そんなやりとりを舞台裏でやっているなんて誰が想像つくだろうか。


デザイナーの一時的な気まぐれにスタッフは慌てた。

スタイルのいい人間は割と多い地域ではあるが、モデルでも容姿が美しければいいというものではない。


デザイナーは意外に落ち着いていた。

そこに、アジア系の大柄な男を偶然見つけてしまった。


「彼・・いいんじゃないかしら」


男は少し髭が伸びていた。

やや急ぎ足で歩きながらタバコを口に咥えて火をつけるのも忘れて。

男はどこか憂いのある雰囲気を持ち視線は定まっていなかった。

何か考えながら歩いている・・。


デザイナーはアジア系の男を指差した。

スタッフ・モデルも全員その男の方を見た。

モデルの中の一人が小さい声でつぶやいた。


「タイプかも」


スタイリストはそのモデルをチラっと見てそれから走って行った。


「すみません」


男はびっくりして足を止めた。


「なんですか」


「ショーに出てみませんか?お礼は差し上げます。」


「えっ」


男が逃げようとしたところを他のモデルに囲まれた。


「何なんですか・・あんたら・・」


デザイナーがゆっくり歩いてきた。


「アナタ、名前は」


「ヤノだ。俺は急いでいるんだ」


「モデルが一人来れないの・・本当にお願い」


「俺は・・そういうの苦手だ。それに・・・急いでいる」


「アナタ、何をしたいの?」


「船を買いたいと思って。まぁ使うのは数回だけだと思うが・・」


「船持ってるわ。貸してもいいわよ。一回ショーに出てくれたら」


男はデザイナーの顔をしげしげと見た。


「それなら、まぁやってもいいけど、俺やったことないよ・・モデルなんか。

それに、こんなんでもいいわけ?」


男は髭を撫でた。


「いいわ。普通に歩いてくれればいいから。」


男は控室に通された。


ショーはあと1時間で始まるらしい。


部屋の中はモデルやスタイリスト・ヘアメイクで戦場のようだ。


一見華やかそうな舞台裏にはこんな状況があったのか。


俺の全身を一瞬で全員が見た。スタイリストが俺の傍に来た。


服を脱いでと言うとまた全員の鋭い視線が俺に注がれた。


視線が痛い・・・・・・


俺はしぶしぶ、服を脱いだ。背中の傷が少し生々しい。


オーーーゥ モデルの一人が口笛を吹いた。


全スタッフが俺の体を見た。


最近筋トレやっていないんだけどな・・。


「アナタすごい鍛えているのね・・」


デザイナーがマジマジと見た。


スタイリストが服を持ってきた。


デザイナーが傍に来た。


「やっぱり思ったとおりだわ・・。」


何が・・・どうなんだか分からない・・。


俺はシャツを着せられたり、スカーフみたいなヤツを掛けられたりした。


スタイリストはうなづきながら合わせていく。


一通り、服をチェックすると今度はこっちに来てと言われる。


スタイリストは俺をイスに座らせた。


目の前には鏡がある。

鏡の中の俺を見つめた・・・髭面だ・・。なんでこんな俺をコイツらは・・。まぁ背は高いからなぁ。



「髪が少し長いわね・・」


髪よりも髭だろ・・俺は心の中でつっこんだ。


スタイリストは俺にエプロンをかけた。


おもむろに鋏を取り出すと手慣れた手つきでカットし始めた。


すごいな・・・。この人ら美容師の資格も持っているのか。


常識なのかもしれないが・・


あっという間にカットが終わった。


俺の顔をしげしげと見つめた。


「いい・・男」


よせ・・・。


まぁ褒められるのは嬉しいが。


俺は髭を指差した。これはいいのか・・すごく気になる。


スタイリストは、その方がいいと言った。


へぇ・・。


鏡の中の俺を見た。なんだろう・・床屋に行った時よりもかっこよく見えるのは雰囲気のせいか?


服を着せられた。


なんだろう・・緊張する。なんで俺は断らなかったんだ・・・。


後悔しても仕方がない。しかし、小さな規模でもショーともなると撮影される・・・。


こうなったら、別人のように振る舞わなければならない。


普段の俺がやらない事をやるとかすれば、いいかもしれない。


普段の俺・・か。チャーミングな笑顔とサービス精神な行動・・何があるんだ。


「ヤノ・・来てちょうだい」


「何をするんだ・・」


俺はスタイリストに服を着せられた。

シャツ・大判のスカーフのようなヤツ・ジャケット・ズボン。

まぁ。アイテムは良くあるものだが、色彩が少し派手だ。


それから俺の横にヘアメイク担当が一瞬来たかと思うとスタイリング剤をつけてブロー始めた。

それから、軽く眉の手入れをしてくれた。あっと言う間にセットが完了し、ヘアメイクは次のモデルの所に行った。

忙しい・・・。しかし、今回の一件で床屋行かなくてもよくなった。

心なしかこの突然の運命の不思議ないたずらを楽しんだ。


全体を見ていたスタイリストとデザイナーが俺に言った。


「ちょっと歩いて・・・」


「どんなふうに・・」


「普通でいい。いつものアナタの歩き方」


俺は歩いた。


全員の視線が突き刺さる。


「いいわ・・何かあった方がいいんじゃない」


デザイナーとスタイリストがお互いに顔を見合わせた。


「ヤノ、タバコ咥えて」


俺はタバコを咥えた。こんなモデルみたことないぞ・・知ってる限り。彼らはいつも小奇麗にしているじゃないか。

気持ち悪いくらい。無表情で歩くモデルを想像した。周りを見ても大体そういう連中ばかりだ。

どうして俺だけ・・。恥ずかしい・。


「いいい。」


デザイナーとスタリストが喜んでいる。恐らく普段のタブーを外すのが彼らの喜びなんだろうか。

まぁモデルじゃないから彼らもその方が気楽なのか。俺だったら、余分に今いる連中を使うけどな・・。


鏡の中の俺は、なんというか、哀愁と退廃的な雰囲気を醸し出していた。


貧相なオヤジぽくなくてまぁセーフなのか?


いささか疑問だが、こっちではこれがウケるんだろう。


「じゃぁそれで行きましょう」


音楽が流れた・・・ショーが始まった。気分が高騰する。なんだろう・・興奮する。


俺の順番はだいぶ後のようだ。


俺は緊張してきた。どこかに侵入した方がよっぽど緊張しない。いや・・。


さりげなく会場を覗くと結構人がいた。人がいるとリアル感が出てくる。俺は船の事をすっかり忘れていた。


歩く距離結構あるぞ・・・間がもたねぇ・・・。どうするんだ。


俺はとりあえず、イスに座った。


タバコに火をつけようとしたが、吸う気になれなかった。


デザイナーが傍に来た。


「一瞬のことよ。大丈夫よ・・・すぐ終わる。」


俺の番が来た。


緊張で体温が下がっているのが分かった。俺はどんな顔をしているのだろう。


俺は、正面を見ながら歩き出した。見よう見まねだ。彼らの動きにできるだけ忠実に合わせた。


これでいいのか。タバコはどこで咥えればいいのか。何も指示しない。


途中で、俺は少し面倒になった。このまま飛び降りて走って逃げたらどうなるだろう・・そんな

ことも考えながら歩いた。そうそう、笑顔だ。普段やらない俺を出そう。

俺だと思われない何かをしなければ・・。


ランウェイは長い、遠くの方に看板が見えた。


女の写真が見えた。黒いロングヘアー。アジア系のモデルか・・・


俺はその看板の方を見ながら歩いた。ランウェイの最後まで来た時、その看板が誰かわかった。


落合由美・・に似た女・シャンプーのCM用の看板だろうか。俺は目を見開いた。カメラでシャッターを切られた。


俺は落合由美に良く似た女の写真を見ながらタバコを出し火をつけた。


会場がどよめいた。多分タブーだ。っていかNGだろう。


俺は看板に向かってウィンクした。何であれ、落合由美はいい女だった。それは認める。


なぜか歓声が上がった。ウケているのか?


咥えタバコのままターンをし、歩いた。さっさと帰ろう・・恥ずかしい・・。


カメラのシャッターが半端ない。異例なのだろう。


火をつけるのはNGなのかもしれないな。俺は足早に歩いた。


控室に戻るとみんなが拍手で迎えてくれた。モデルの一人が俺に抱き着き頬にキスした。


綺麗な男だなぁ・・その気はないが、少し見入ってしまった。


俺は灰皿にタバコを消すと、服を脱ぎ始めた。


「ヤノ・あと一着きてくれる?」


「やだ」


スタイリストが困った顔した。


「予定していたモデルは来れないのお願い」


「どれを着るんだ」


俺はイヤだったが、ここまで来たらやってやると思った。それに、結構な快感だ。


服はややピッタリした服だった。


すぐに順番がくる。


俺はその服を着た。さっきとイメージが違う。


若いんじゃないか。


スタイリストが素早くカミソリを持つと、ジェルが塗られ、俺は一瞬で髭を剃られた。


俺は驚いた。すげぇ・・な・・。これで床屋行かなくてもよくなった。


鏡の中の俺はイメージが変わった。ヤケドの跡は一瞬でファンデーションで消された。


ネクタイを結ぼうとしたが、デザイナーは結ばない方が言いといい、


俺の首にネクタイをかけた。


ほぉーー。


退廃的だなぁ。これは・・ここだけだから通じる世界だよな・・・。街中でやる勇気はないよ。

まぁいいか。


今度はタバコはイイらしい。その代りライターを持って行けと言われた。注意されたのだろう。

俺はポケットの中にライターを忍ばせた。なんなんだろうか。


俺の番になった。さっきよりもギャラリーが多くなっていた。心なしか俺に吸いよってくる。


俺がランウェイの端まで来ると、一人の女が舞台に上がった。


演出なのか・・・ハプニングなのか。


女はクラッチバッグからタバコを取り出した。


指で挿み、俺に火はないかと聞いてきた。

これか・・・。

俺はポケットからライターを出し女のタバコに火をつけた。


女はメルシーといい、一服吸った。


俺は軽く女に手をあげ、足早に歩いた。


俺が控室に戻ると周りから拍手が起こった。


もういいだろう。と服を脱ごうとするとスタイリストが来て、あと一回と言った。


最後に全員で一回りするのか・・・結構あるんだな。


俺は前の列に続いて歩きだした。歓声が聞こえる。


やれやれ、どうにか終わった。


カメラのフラッシュの中、記者の中に見慣れた顔があった。


ジョンフランクだ。あいつなんでここで。


俺は控室に入るとすぐに服を脱いだ。


悪いが、俺は急いでいる。お祝いをしたいところだが・・


俺は自分の服に着替えた。


デザイナーは俺に名刺を出した。


「船が必要な時、連絡して。いつでもOKよ。」


「ありがとう。近々利用するから宜しく。」


「あと、服欲しい時いつでも連絡して。力になれるわよ。また良かったら出てね。」


「ありがとう。」


俺は近くに居たスタイリストに礼を言った。


「アンタ、スゴイな。おかげで俺床屋行かなくても良くなった。ありがとう」


「またショーに出てくれたらやってあげるわ」


「まぁ・・その時はまた宜しく」


スタイリストとモデルに見送られ、俺は控室を出た。


控室の前にジョンフランクが待っていた。


「やぁ・・まさかアンタがモデルさんとはねぇ」


「モデルじゃないよ・・頼まれてね。アンタこそ、こういう仕事もするのか」


「フリーなんでね、必要に応じてこういう細々したこともやるんだ」


「そっか。悪い、俺急いでいるんだ。こんど例の店に行くよ。」


「俺はまだこっちにいるから。コレ今いる俺の連絡先」


俺はジョンフランクから名刺をもらった。


前の名刺に手書きの電話番号が付けられた。


「OKまた連絡するよ」


俺は足早に走った。特に急いではいなかった。船の件も解決したし。だからと言って勘の鋭いアイツに

なにか感づかれても困るので、ああいう風に言ったがかえって疑われるかもしれないな。


車に乗り込むと俺はルームミラーを見た。

いつもと同じだと思っていた顔だが、今日は何か垢抜けて見えるのは気のせいか。

俺はルームミラーに笑顔を作った。うーん。どんな写真が撮れたのか気になるな。


一週間後、俺はカフェでコーヒーを飲んでいたとき外で看板を変えているのを目にした。


その看板は俺だった。


女がクラッチバッグからタバコを取り出し、自分の口に咥え、

俺が火をつけるシーンだ。


なるほど・・・そう来たか・・・。それならギャラくれよ・・。


俺は横顔だが、俺と分かるレベルだ。なんかカッコ良く見えるのは気のせいか。


俺はカフェから出て、とおりにある新聞・雑誌の売店から雑誌を探した。


ブランドはなんだったか忘れた。


表紙の裏の広告ページを見て俺は愕然とした。


俺が歩いているシーンと俺がウィンクするシーン。


俺ばかりだ。しかし、写真の撮り方でずいぶん俺も変わるもんだ。それらしく見える。


俺はその雑誌を買い、車に乗せた。滅多になにことだ。


俺は車でイギリスへ行った。


フランスの対岸部分のイギリスは高大な土地がある。そこを散歩している人がいる。

この人らは旅行者かもしれないから恐らく見ていないだろう。

見ているとするなら・・・俺は一人のホームレスと思われる老人を見た。


老人に近づき飛行機の事故の話とエルザの写真を見せた。

もしこの人の情報があったら連絡して欲しい。


老人は手広げた。

とりあえず、前金ということか。俺は、金を老人に渡した。


それから俺は観光もせず、フランスに戻った。

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