第三十九話 変身学
―マモル視点―
今日最初の授業は、変身学についてだった。先生が変身学について詳しく教えてくれる。
「変身学というのは魔力の基本でもあるが、最も多彩な技術を必要とするものでもある。変身した者の見分け方といえば、まずは魔力のオーラを確認する方法が一般的だ。魔力のオーラは生まれつきのもので、変身した後も変わらない。だから、大きな魔力量や、逆に少ない魔力量の者ならば、すぐに見分けがついてしまう。その点で言えば、平均的な魔力を持った者が一番使いやすいというわけだ。しかし、変身学には見分ける以外にも色々な使い方がある。例えば、敵に追われているときに身を隠す時などだ。行動の速さが必要になるときは、獣に化けて素早く移動することができる。もちろん、化けたものをすべて百パーセント再現できるわけではない。それでも、有力な能力者であれば、かなりの再現ができてしまうんだ。よって、魔力が強大な者は、化けるものを工夫すれば、より大きな戦闘力や利点を得ることができる」
みんなは真剣に聞いていた。だが、俺はこの講義を聞いて、少しだけ忸怩たる思いがあった。
理論的に言えば、何かに変身してしまえば、不自由な足も自由に動かせるはずなのに。俺にはそれができなかった。
俺は専門家たちも驚いていた特別な事例らしい。
完璧に化けることもできるし、能力もそれに近い水準まで使うことができる。それは恐らくすごい才能らしいのだが、一番欲しい足の自由という能力は戻らなかった。
なぜこうなってしまうのか、よくわかっていない。ただし、恐らく未来永劫、俺が自分の足を使えなくなってしまったということだけは確かだった。一般的なレベルと比べれば巨大な魔力を持っている自分は、変身する利点がほとんどないということも意味している。だから、ある意味ではほとんど才能がないと言える。
教員はもちろんそのことを知っているからか、こちらにかなり気を使っているように見えた。ありがたいが、あまり気を使われてはこちらも窮屈だ。
「では、隣の人と二人一組になって、お互いの変身を見てみましょう。今日は相手に変身するように」
先生がそう言うと、俺は庶民出身のアイザと向かい合った。
「よろしくね、マモルくん」
彼はそう言ってくれた。勉強も一緒にしているから、とても仲良くなっている。ミランダやリサ以外にできた久しぶりの友人だったので、とても嬉しかった。
「じゃあ、先にどうぞ」
俺は彼に順番を譲る。彼は恥ずかしそうにしながらも、詠唱を続けて俺に変身した。
「どうかな?」
「うん、かなりうまくできていると思うよ」
ただし、魔力のオーラは相変わらずほとんど変わらないので、すぐに偽物だとわかってしまうだろう。彼は平均よりは上の魔力を持っている。だから、こういう変身の方法にはとても才能がある。そう考えていたが、俺は彼の本質をとらえることができなかった。
「うん、みんなよくできているな。特にマモルのチームはとても才能があるな。マモルはもちろん能力も高いが、君はとても才能がある」
先生がそう言った。
「なぜならば、ほとんど魔力を外に漏らすことがないのだよ。変身したときも魔力を無意識に放出してしまうものだけど、君はなぜかその魔力の放出をほとんどなくしてしまっている。恐らく君の魔力の放出に気づくことができるのは、S級クラスの魔導士だけだ。マモルはもちろん気づいていたようだが、他の生徒は多分、彼の魔力を感じ取ることができないんじゃないかな。これは自身の魔力の総量だけでなく、身体の体質にもよるところが大きい」
そこで当たり前だと思っていたことがそうではなかったということに気づかされた。先生はそれに気づいたのだろう。やれやれとばかりに首を横に振っていた。
「このように、彼のように魔力をほとんど外に出さない者は、変身学においては天才に近い。魔力を使えない者にも変身できるのだからな。とても素晴らしい才能だな。この学校でも教員を含めて数人しか持っていないんだ」
そう言って褒められると、彼はとても恥ずかしそうにしていた。庶民出身ということで、やはり俺と一緒で居場所がないからか、なかなかこんな注目を浴びることに慣れていないようだ。
「すごいな」
俺がそう言うと、彼は、「才能があるって嬉しいな」なんて、のんきなことを言っていた。




