第四十話 リサへの愛
―リサ視点―
私は授業の後、先生に質問した。
「先生、先ほどの授業でおっしゃっていたことなのですが、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
先生は教育者だからか、優しく答えてくれた。
「ああ、いいよ。何でも聞きなさい」
「先生は先ほど、変身魔力を使ったときに魔力をすべて外に出さない、特殊な体質の人はこの学園にも何人かいるというお話をされていました。それはいったい誰のことを指しているのでしょうか?」
「そうだね。彼以外であれば、防御術のグラント先生とか、あとは校長のグリーンベルク先生とかだね。僕は実はできないんだ。かなり低く抑えることはできるけれども、ゼロにはできない」
「グラント先生は、変身魔力の天才でもあるんですか?」
「そうだね。彼は相当優秀な魔法使いだ。だが、変身術のすべては、変身したときに魔力を完全に抑え込むことだけではないのだ。どれだけ変身先の魔力に近づけるかや、特性を生かせるかも重要になってくる。彼は才能はあったけれども、そちらの応用はあまり得意ではなかったと言っていた。その点、彼は戦闘能力にも秀でているからね。そちらを専門にしたとしてもおかしくはない。戦闘には変身魔力もおそらく役立ってはいるはずだけどね」
私はそれを聞いて、先生にお礼を言った。
「ありがとうございました」
残念ながら、私もすべての魔力を消すことができなかった。むしろ、ほとんどの魔力を維持したまま変身してしまうため、すぐにバレてしまうだろうということだ。
お兄様も同じような悩みを持っているから、お互いに変身魔力にはそこまでの才能がないのかもしれない。まあ、そもそもあらゆる系統の魔力が得意なお父様やお兄様と比べて、私は聖女の力が強い。
普通はどれか一つの系統の魔力に特化することが多いから、私のほうが普通ではある。アイザちゃんも変身魔力が一番得意であり、そちらのほうに今後特化し続けていくのだろうと思う。私もすでに専門があるからか、他の技術はまず基礎を知ることから始めようと思っていた。
それにしても、授業中も見張ってはいるのだけれども、誰も怪しい行動を取る者はいなかった。
どうして容疑者が見つからないのだろうか。この件は特に証拠がなければ動くこともできない。下手に証拠もないのに動いてしまえば、それこそ教団の思うつぼでもある。本当に難しい戦いだ。
「ああ、リサ。移動中かい?」
珍しい。お父様が声をかけてきた。見回りを続けているらしい。騎士団の仕事もしているから相当大変だろうに、お父様はいつものように疲れた顔を一切見せなかった。
「はい。昼休みも少し心配になって、色々調べているんです」
「そうか。私も教員の先生方にお願いしている。マモルやリサを注意深く見てくれるようにな。リサももしかしたら狙われているかもしれない。一番危ないのはマモルかもしれないが、お前も気を付けるんだぞ。何かあったらすぐに私に連絡するように」
その言葉は私への愛情に満ち溢れていた。私なんて心配される価値もないはずなのに。
それなのに、そんなに優しい言葉をかけてくれて、複雑な気持ちになってしまう。
私はそんなに優しくされる価値があるんだろうか。お父様たちに面倒を見てもらってからも、ずっとずっと思っていた。
罪を犯した私が、そんなに幸せであるべきなのかどうかということだ。罪の意識によって、この幸せを本当に味わってはいない。
いや、味わうべきではない。私はその気持ちを心にしまいながら……嘘をつく。
「はい。そのときは助けを求めます」
そう言って、優等生の娘を演じるように努めている。本当に自分は空虚な人間だと思ってしまう。
それでも目的は一つだ。




