第三十四話 復讐の誓い
私は急いで家に帰り、リサさんを訪ねた。
夜遅くに訪問したにもかかわらず、彼女はふんわりとした笑顔で出迎えてくれた。
「ミランダさん、ずいぶん遅いけど、何かあったの?」
「こんな夜にごめんなさい。でも、急いで話しておかないといけないことだから」
私たちはマモルを守るということで意見が一致している。ある意味では協力関係でもある。この状況で彼女に何も相談しなければ、きっと大変な問題になるだろうと思った。
まずはマモルに話す前に、リサさんに相談することにした。
「実は今日、友達とお茶会に行ってきたんだけれど、その帰りにお二人の母親と会ったの」
彼女の柔らかい笑みが一瞬にして凍りついた。まるで復讐を誓う鬼のような恐ろしい形相で、私を見つめる。それは何かが壊れているようにも見えて、いつもの彼女を知っているからこそ恐ろしかった。
「急に馬車を止められてね。私にありがとうって……」
「あんな女に感謝されるようなことをやったの?」
口調も厳しかった。私は慌ててかぶりを振る。
「そんなことはやっていないわ。マモルと仲良くしてくれたことを感謝したいって、彼女は言ってた」
「そうだよね。ごめん、疑ったりして。でも、あの女が言っていることじゃない。あの女のせいで、全部……」
彼女は手で顔を覆った。こちらに感情を読み取らせないようにしているのだろうか。それとも、何かに絶望しているのだろうか。
どちらとも取れるその仕草が、リサさんの絶望の深さを表していた。
「教団はまだマモルを狙っているみたい。動き始めるって言っていたわ」
「そう。ありがとう、教えてくれて。これで私もやっと借りを返すことができる」
「でも、一人じゃ危険よ」
「私の命なんてどうなったって構わない。使えるものは全部使って、教団を壊滅させる。それが私の生きている意味だから」
「マモル君にはこのことを話す?」
「いや、話したくない。お兄様には平穏な日々を、学校生活を送ってほしい。このことを知ったら、お兄様はまた自分から危険なことをしてしまうかもしれない。だから秘密にしておいてください。お願いします」
他人行儀な口調に気圧されてしまって、私は何も言えなくなった。そう、マモルなら間違いなく私たちを守るために危険なことをするかもしれない。
「教団がお兄様を狙っているなら、近々接触があるはず。私もしばらく大聖堂のお仕事を休みにしようと思う。一緒に帰ってもいいかな?」
本当なら、二人の大事な時間を邪魔されてしまうことに嫌な気持ちになるかもしれないと思ったけれど、そんなことはなかった。
そんなことよりも、マモルを守ることが一番重要だ。私は即座に答えた。
「もちろん、協力するわ。何か作戦はあるの?」
「お兄様を捕らえようとするならば、おそらく大司教クラスの規模で動かなくてはならなくなる。そうなると、相当な準備が必要になるはず。どこかに無理が生じているはずだから、その無理を探すわ」
「私はどうしたらいい?」
「お兄様の帰り道には、お兄様のそばから絶対に離れないで。二人で行動していれば、ある程度の抑止力になるし。それに、お兄様には知らせないつもりだけど、お父様にはこのことを知らせるわ」
「わかった。二人で協力してマモルを守りましょう」
私たちは決意の握手を交わした。




