第二十八話 歩みを止めない
―シルバ視点―
戦いの後、俺は呆然として動けなかった。作戦はかなりうまくいっていたと思う。
それでも、あいつは俺の予想をはるかに上回っていた。
やりたいことをすべてやらせて、そして、そのすべてを受け切られた。
まさに圧倒的な実力の違いだ。
ここまで才能の違いを見せつけられて、何も言えない自分がいる。
「おい、大丈夫か、シルバ」
いつもの友人が助け起こしてくれた。
「ああ、ありがとう」
「惜しかったな。あと一歩だったのに」
「ああ、そうだよ。あいつは防戦一方だったのに」
「あと一歩だったよな。そうそう、次の攻撃で確実に倒せたと思うよ」
慰めなのだろうか。それとも、実力の違いが本当にわかっていないのだろうか。
おそらく後者なのだろう。むしろ、このような慰めは俺にとって屈辱でしかないのに。だが、友人たちは俺のことを心配して言ってくれている。
そして、奴らの中で作られた俺の理想像は、やはり天才に匹敵するもう一人の天才なのだ。
しかし、俺は天才ではない。天才はマモルだけだ。
俺は秀才にすぎない。
マモルを超すために、いくつもの努力を重ねてきた。
それでも……いや、今回は自分の能力をすべて出し切ることができた。
本来なら、そこまで到達することすらできなかっただろう。
だが、能力を出し切ったうえで、実力の違いを見せつけられた。
「くそっ……」
頭を抱え、わずかに背中を丸めながら顔をそらした。みんなは接戦だったから悔しがっていると思っているのだろう。
クラスメイトは肩をポンポンと叩いてくれる。
しかし、本当に……いや、だめだ。ここで八つ当たりまでしてしまえば、さらに情けなくなってしまう。
俺は、やっぱり届かないのか。あの天才には……怒りを押し殺して、自分の実力の現在地を知った。
やはり届かないのか、マモルには。何度も同じ言葉が心の中で生まれては消えていく。
その言葉を必死に飲み込みながら、試合の後の握手をするために近づいてくるマモルの方を見た。
「お疲れ様、シルバ」
クラスメートたちはマモルに対して、わずかに冷たい視線を送る。
だが、彼はそんなことも気にしない。
「ああ、お疲れ様。さすがだな、マモル」
俺は差し出された手に、ゆっくりと自分の手を近づけた。
そして、周囲には聞こえないように言う。
「圧倒的だったよ。今の俺じゃ届かない」
彼は無言で俺のことを見つめていた。シルバもすごかったよ。彼のその視線はそう言ってくれているようだったが、俺の心境もわかっているのだろう。
あいつは何も言わず、ただ誠実な視線を向けてくる。
「マモル。まだまだ俺はお前には届かない。もしかしたら、一生をかけてもお前を超えられないかもしれない」
それでも、俺は言葉を続けた。
「でもな、だからといって、ここで立ち止まるほど俺は馬鹿でもない。お前のことを超えられないとしても、それでも俺は研鑽を続ける」
そして、あいつの目をまっすぐに見つめた。
「首を洗って待っていろよ」
そう言って俺が敗北を認めると、マモルは優しく頷いてくれた。
「うん。次の戦いも楽しみにしているよ」
彼はそう言ったのだ。
そして、一言付け加えてくれる。
「ライバルとして」
その言葉がどうしようもなく嬉しかった。
俺のことをライバルと言ってくれること自体が、光栄だった。
プライドが邪魔をして言葉にはできないけれど、心の底から喜びが満ちあふれてくる。
「くそっ……だからあいつは嫌いなんだ」
そう言いながら、俺は天を仰いだ。




