第二十五話 決闘
ついに魔法術の授業となった。
こちらは今まで学んできた防御術や変身術など、あらゆる魔力の使い方を応用する学問だ。
まず、防御術の実力を認められたS級魔導士であるマモルと俺は、そのまま次のステップへと進んでいる。他の生徒たちは防御術をうまく扱えていないため、まだここまで到達していない。
よって、攻撃という技術を試すことができるのは俺たち二人しかおらず、当然のようにペアを組まされることになった。
「やってやれ、シルバ! お前の実力を見せてやれ!」
「そうだそうだ! 所詮、親の七光りであるマモルなんて、お前の足元にも及ばない!」
まったく、恥ずかしいことをするなと言っていたのに、こちらが赤面してしまうほど、あいつらはマモルの実力を分かっていない。あれが親の七光りであるならば、俺はいったい何なんだと言わざるを得ない。
だが、マモルは積極的に否定しようともしていなかった。
隣で妹のリサとミランダが、観戦している生徒たちを睨みつけているのが見えた。
分かっているのは俺たち三人しかいないのか。そう思うと、思わず苦笑してしまう。
「先生、一つお願いがあるんですが」
「なんだい、シルバ君?」
グリーンベルクの右腕とも呼ばれているカイラ副校長は、静かに笑った。俺の言いたいことをすでに理解しているのだろうと思うと、こちらも少し恥ずかしくなる。
彼もS級魔導士だ。
邪神教団との戦争の際にも、何人もの幹部を打ち破ってきた実績がある。
つまり、彼もマモルの実力を認めている者の一人だということなのだ。
「決闘場を使わせていただきたいんですが」
「ほう、面白いことを提案するね」
決闘場とは、この学校にある魔導士同士の戦いに特化したフィールドのことだ。体育館のような形をした建物の中に、いくつもの仕掛けが施されている。
そこには、お互いの魔法が直撃しないように制限する結界が張られており、本来なら相手に直撃するはずだった攻撃は、命中した側に衝撃として伝わる仕組みになっていた。
その場であれば、安全に全力を出すことができる。
つまり、死なない殺し合いができるというわけだ。
そして、俺がマモルに勝利できる確率はほとんどないだろう。
それでも、俺は戦ってみたかった。
今のあいつと俺の実力を測るために。どこまで距離を離されているのか。
それとも、思った以上に近づいているのか。それを確かめたかった。
「決闘だ! 決闘だぞ!」
周囲は俺の意図も知らずに盛り上がっていく。
まあ、これぐらいがちょうどいいだろう。マモルは苦笑していた。
まさか決闘になるとは思っていなかったのだろう。
『僕でシルバ君の相手になるのかな』
なんて言い出しそうな顔をしていた。
確かに、あいつの肉体的な制限は大きい。
足を動かすことができず、自由な移動はかなり制限されている。
ただし、それを補って余りあるほどの魔力障壁を持ち、そして強力な魔法を発動させることができる。
隙のない攻守一体の怪物。
一人で軍事要塞のような役割を果たすことができる。それがマモルだ。
「分かりました。皆さんにとってもいい見本になるでしょう。では、今日の授業は決闘場で行うことにいたしましょう」
カイラ副校長は、周囲の生徒たちを見渡した。
「皆さん、しっかり見ておくように。試合後には私がすべて解説します。その際に問題も出しますので、答えられるようにしておいてください」
そして、俺たち二人に視線を向けた。
「二人とも、無理だけはしないように」
そうして、俺たちの決闘が始まった。




