第十七話 呪い
夜。
マモルと一緒にコロッケを食べたときのことを思い出す。
私はまた、あの瞬間が永遠に続けばいいと思ってしまった。
幸せだったこと。そして、いまだに残る彼への罪悪感。
その相反する気持ちが、私の心を不安定にさせる。
ずっと怖かった。
もしこのまま、私は彼に見向きもされなかったら、どうなってしまうのだろう。
こんなにも独占欲があるのに、それを表明することさえできない。
たぶん、彼にほかに好きな人ができたら、私は何も言わずに身を引くだろう。
私という存在自体が、彼にとって過去の嫌な思い出と結びついてしまうのだから。
私なんて、いない方がいい。
そう分かっているはずなのに、どうして私は彼のもとを離れることができないのだろう。
本当に、自分は矛盾だらけだ。
「普通の幼なじみだったらよかったのにね……」
月を見上げながら、私はそう呟いた。
普通の幼なじみだったら、少し喧嘩をしたり、一緒に遊びに行くことにドキドキしたり、彼を驚かせようとしたり。
そんなふうに、たくさんの楽しい思い出や、ほろ苦い思い出を積み重ねていけたのだろう。
私は、そうやって過ごしていたかった。
普通の幼なじみだったら、彼に好きな人ができたとしても、簡単に諦める必要なんてなかった。
私なりの気持ちを、彼にぶつければよかったのだから。
今だって、そうすることはできる。
でも、私と彼の関係では、それは呪いになってしまう。
私はずっと彼を慕ってきた。
彼のためなら何でもできると思ってきた。
だからこそ、彼も私を裏切ることができなくなっている。
善意で積み上げてきたはずの想いが、いつの間にか呪いに変わっている。
そのことに気づいてしまった。
私は本当に最低だ。
どうして、こんなふうになってしまったのだろう。
彼との思い出が、少しずつ呪いに変わっていくなんて、想像したくもなかった。
だったら、今から彼に告白すればいい。
そう思うこともある。
でも、告白してしまえば、彼はたぶん私の気持ちを断ることができない。
半ば強制的に、マモルは私の気持ちに応えなくてはならなくなってしまう。
優しい彼だからこそ、私たちのこれまでの関係を考えれば、受け入れるのが当たり前だと思ってしまうだろうから。
「どうして、こんなふうに……」
もう何度も、同じ言葉を呟いてしまう。
引くも地獄。進むも地獄。
ならば私は、ただ彼の隣にいればいい。
彼の隣にいることさえできれば、それでもう十分だ。
そんな悲しい覚悟を決めながら、私は再び月を見つめた。




