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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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009 侯爵令嬢の豪胆

数日後の学園です。

また人が増えてます。頑張って下さい。

あの時の従者が増えてます。

「テイラー侯爵令嬢。お迎えにあがりました」


午前の講義は終わり、授業の片づけをして教室から出ると輝く黄金色の長髪を揺らしながら騎士の様な敬礼で出迎えるアーデルベルトにベアトリクスは目を見張る。


「兄上、何をしてるんですか!?目立つでは無いですか!?」


ベアトリクスの後に続いて教室から出て来たクレメンスは兄の行動を慌てて咎める。


「何をとは何だよ。アンダーソン公爵令嬢から要請されたのだテイラー侯爵令嬢の護衛の為の迎えだが?」


クレメンスは、右手で額を抑え自らの銀髪をクシャっと掴み溜息をつく。何故、他のことは完璧な兄はアンダーソン公爵令嬢が絡むと・・・こうもポンコツなのかと。


「クレメンス様。もういらしているのですからご一緒に食堂へ向かいましょう?本日からディーお姉様が個室をとっているとおっしゃっておりました」


三人は連れ立って食堂へ向かい歩みを進める。無言で歩くのも憚られたのでベアトリクスは以前から気になっていた事を尋ねる。


「エヴァンス侯爵家の方々のお髪が王家の色をしていますねぇ。縁があるのでしょうか?」


二人は目を瞬かせ顔を合わせると柔和な笑顔をする。クレメンスに至っては今更ですか?と言いながらクスクス笑っている。そんなクレメンスを窘めながらアーデルベルトは優しく答えた。


「我々の両親共に王家に縁があるのです。父方の曾祖母は先々代に隣国から嫁いで来たお妃様の侍女をしていた方なんです。

クレメンスの銀髪は帝国より西の国の王家の色ですね。曾祖母は、お妃様の従妹に当たる方だったそうです。お二人は大変仲が良かったのですが、曾祖母はお祖父様を産まれてから体調を崩しがちで王家から遠ざかっています。

母方はストゥワート公爵家の出ですので代々王族との縁が深い家系になりますね。まぁ公爵令嬢ですが三女ですし第五子の末娘ですので特に権力などはないので、母は大変のびのびと育ったのだと思います・・・」


にこやかに説明してくれたアーデルベルトは、遠い目になって俯いてしまった。どうしたのだろうか。それを見たクレメンスが続きを話し始めた。


「だから、隔世遺伝でしょうか?お祖父様には出なかったのですが父も叔父上、私は銀の髪で、兄はスツゥワートのお祖父様に似た濃い金なのですよ。弟は母の色に近くオレンジの方が強く出ていますが彼も金髪と言って差し支えないかと思いますよ」


「そうなんですね。我が家は近代は王家に近づいていますが元々王家とは距離を置いている家系なので知りませんでしたわ!」


「テイラー家は法の番人ですからね。王家と忖度してはいけないという事でしょうか?辺境伯領は王都の貴族と繋がりは無かったのですか?」


「えぇ。大体、辺境騎士団の上層部との婚姻が多いようです。

領主の子が、男性ですと騎士団長や副団長の娘や、女性ですと団長候補の男性と婚約を結ぶことが多いですわ。

騎士団の方々は殆どが貴族家の三男以下の男子ですので、でも実力主義ですので平民出身の方もいたかもしれませんね。

団長に任命されると騎士伯を賜るのですから。伯母様も・・・・これはお話しない方がいいですわね。忘れて下さいませ」


ベアトリクスはついつい話を膨らませてしまったが自身の失態に気が付き顔を少し青くして俯く。そんなベアトリクスに周囲を見渡したアーデルベルトは大丈夫です。誰もいませんよ。と答える。お喋りをしながら歩いて来たせいだろうか。大食堂を通り過ぎて高位貴族が利用する個室区域まで来ていた。


この区間の部屋は調理場から直接、料理を配膳される。個室区域は侯爵以上の貴族子息令嬢が予約して利用する個室がある。料理もコースになるので予約の必要があり、内外ともに防音設備があるためゆったりと過ごせる。

しかし、貴族にとって情報収集も大切な事なのでだいたいの高位貴族の生徒たちも大食堂やサロンを利用していた。個室は特別な時に利用されることが多く、人があまり訪れない区域になっている。その一つの個室のドアをノックすると、艶やかなピンクブロンドのくせのある短髪に深紅の目の侍従が扉を開く。


「まぁ、ナサニエル様!」


ベアトリクスが声を上げる前に、アーデルベルトとクレメンスはベアトリクスとナサニエルの間にすっと身体を動かしていた。そんな二人の行動に眉を顰める事もなく柔和な笑みを保ち、ナサニエルと呼ばれた痩せた男は丁寧なお辞儀をした。


「ベアトリクス様、お久しぶりでございます。エヴァンス侯爵子息様方。お初にお目にかかります。ナサニエルと申します」


すると、部屋の奥から「入口で何かをしている」と声がする。ナサニエル様の笑顔が少しばかり深くなりどうぞと三人に入室を促した。アーデルベルトとクレメンスは警戒しながらもベアトリクスと顔見知りだということで部屋に入って席についている人に目を向けると固まった。


アーデルベルトの背に庇われて入室したベアトリクスは、少し体をずらしテーブルの方を覗き込む。そこには、にこやかに微笑んでいるハーシェルヒルム第二王子と不機嫌なディオティマが座っていた。


「まぁ!ハーシュ兄様!どうしてここに?」


その声にはっと気が付いた2人は腰を折り、王族に対する長い挨拶を始めた。遮ることもなく挨拶を受けたハーシェルヒルム第二王子は私的な訪問なので楽にしてほしいと伝える。


「しかし、何を入り口でまごついてたのだ?」


ハーシェルヒルムがナサニエルに聞くと、ナサニエルは笑顔なのに眉間にくっきりと皺を刻み「殿下のせいです」と答える。「なぜだ!?」で狼狽えるハーシェルヒルムにディオティマの「勝手にくるからじゃない」と言葉を刺すとオリヴァーも呆れて首を縦に振る。まだ分からないというハーシェルヒルムに向かってナサニエルは話を始める。


「アンダーソン公爵令嬢と約束していた部屋から見知らぬ男が出てきたら誰でも警戒します。ベアトリクス嬢はすぐお気づきになりましたがエヴァンス兄弟は初対面でしょう?彼らの警戒心は当たり前ですよ」


「そうよ。突然来るなんて!料理人にも無理を言ったのよ!殿下がくるだけでも3人も増えるんだから!大変なのよ!」


「うっ・・・」


「アンダーソン公爵令嬢。私たちの食事も手配頂いたのですか?」


「当たり前じゃない。貴方も学生だから午後の授業があるでしょう?オリヴァーだってこの時間に食事しないと食べる時間ないじゃない!殿下はそこのところ考えているの?」


「ぐっ・・・」


「アンダーソン公爵令嬢の心配りに大変痛み入ります。殿下は殿下なので仕方御座いません」


「おいっ!エル!不敬だぞ!そしてなんで、ディーは俺に冷たいんだ!」


「まぁ。アレだけ悪戯してたら普通は嫌われますね」


三人のやりとりを眺めていたオリヴァーが口を出すと、ハーシェルヒルムは頭を抱えた。


「あのぉ~ハーシュ兄様。そんに私的なお姿をお見せしてもよろしいのでしょうか?」


事の成り行きを立ったまま見ていたベアトリクスが声をかける。と、ナサニエルの叱責がハーシェルヒルムに飛ぶ。


「ほら、殿下のせいで三人が座れないじゃないですか!?」


「ぐっ・・・エルめ・・・」


小声で何かボソボソといった後、姿勢と顔を立て直すとベアトリクスとエヴァンス兄妹に向き直り、座るよう促した。そのあとにナサニエルとオリヴァーも続き全員が席に着くとディオティマは侍女に食事の準備を頼んだ。


「突然の訪問。悪いと思っている。ベティにも其方ら二人にも話がありディーに頼んで昼食にお邪魔させてもらった」


エヴァンス兄弟は未だこの状況を理解できていず固まったままである。ベアトリクスも困ったお従兄様(おにいさま)だというように頬に手をあて眉を下げる。食事が準備される間にハーシェルヒルムは話を始める。


「今回ディーが依頼したように、ベティの護衛の件だがこちらとしても頼んでおこうと思ってな。秘密裏に動いているんだが君らは信用に足る人物だとこちらでも調べさせて貰った。そこで、話しておいた方が危険を回避出来ると思い今回伝える事にしたんだ」


「はい」とエヴァンス兄弟が真剣な顔で頷くとハーシェルヒルムは続けた。


「ベティに危害が加わることは無いと思いたいが、関係が無いわけではない。ベティの兄とブラウン伯爵令嬢の婚約解消の件は知っているな?

ブラウン伯爵家にはベティと同じ年のナイチェルとルーの同じ年のニコラスがいる。接触を図る可能性があってな」


「殿下。不躾ではありますがご質問よろしいのでしょうか?」


ハーシェルヒルムが許可を出すとクレメンスは質問を続けた。


「何故、そんなにブラウン伯爵家を警戒するのでしょうか?ブラウン伯爵に何かしらの疑惑があるのでしょうか?お答えすることが可能であれば伺いたいと思います」


「あぁ。当たり前の質問だな。ブラウン伯爵では無くブラウン伯爵夫人の動きを我々は追っている。不審な人間関係があるようなんだが、まだ調査中だ。

彼女たちは私との縁を求め動いていた。がソレが破綻した。よって、再度リートに近づくだろうと予想されるが、リート自体は懐柔するのは難しい。ブラウン伯爵令嬢と仲良くしていた優しいベティを呼び出すのではと考えている」


ハーシェルヒルムの説明にナサニエルが補足する。


「メルヴァン伯爵令息からの接触といいますが、手紙などは受け取ってほしいのです。しかし、そのまま連れ去られるような事は困るのです。・・・色々と・・・」


「あら?エル何よ!色々って!」


ディオティマがナサニエルの言葉に反応するとナサニエルは、にっこりと微笑みを返すだけだった。


「だからベティ。急で悪いがエヴァンス侯爵子息と婚約してくれないか?ベティを守りつつ醜聞にならないよう立ち回るには婚約者という肩書が必要なんだ」


ハーシェルヒルム殿下の要請にアーデルベルト、クレメンス、ベアトリクスは食前のお茶を持ったまま動きを止め固まると、ディオティマの低い声が響く。


「聞いてないわよ・・・ハーシュ・・・・どういうことよ!!!」


「おぉ!やっとハーシュと呼ばれた!」


「そんな事はどうでもいいのよ!何よ!婚約ってベティの気持ち考えているの?」


「そうですよ!殿下!テイラー侯爵令嬢には断られております。不躾な態度をとった上に更に不本意な婚約など迫れません!」


ディオティマに同意するようにアーデルベルトは焦り発言する。クレメンスに至っては青い顔でまったく動かない。そんな阿鼻叫喚の中ベアトリクスは頬に手をあて首を傾げるとおっとり口を開きにっこりと微笑む。


「いいですよ。婚約」


「「「えぇ?」」」

「「「おぉ!」」」


六人の声がそれぞれ同調する。


「流石ベティ。了承してくれるか!」

「相変わらず肝が据わってますね。テイラー嬢」

「話が早くて助かります」


と好意的なのはハーシェルヒルムとその側近二人


「なにを言っているのベティ!駄目よ!そんな簡単に決めては!」

「テイラー侯爵令嬢!その様な事本当に良いのですか?」

「ベアトリクス嬢は兄上で構わないのですか!?」


と否定的に反応するディオティマと、真っ青な顔をしているエヴァンス兄弟を見てベアトリクスは、はっとした顔をして説明し始めた。


「ごめんなさい。また言葉が足りなかったですわ!ハーシュ兄様?エヴァンス兄弟であればよろしいのですわよね?」


「あぁ。彼は剣術もだが体術の成績も良いだろう?」


「殿下。私は剣技と弓はともかく体術は・・・」


アーデルベルトが反応したが、ベアトリクスは話を続ける。


「私、クレメンス様と婚約すればいいのですわよね?」


とにっこり微笑んだ。

拝読ありがとうございました。


ベアトリクスは頭の回転はいいのにおっとりという特殊な令嬢です。


~登場人物~

【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)

テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*目:金

【愛称:レメ】レメンス・エヴァンス侯爵令息(15)

エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*目:赤

【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)

エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*目の色:碧

【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*目:青紫

オリヴァー・ミラー騎士伯(25)【ハーシェルヒルム第二王子殿下 側近】

ミラージュ子爵家五男。 髪:黒、短髪 目:明るい茶色

【愛称:エル】ナサニエル・イーストン子爵(17)【ハーシェルヒルム第二王子殿下 又従弟/側近】

イーストン子爵家三子(次男) 髪:ピンク、ふわふわ天然パーマ 目:赤

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