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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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008 侯爵令息の謝罪

アーデルベルト様のキャラ変にご注意下さい。

本来は割と優秀な普通の子なんです。

「本日は謝罪の機会を頂き、真にありがとうございます!!!」


昨日の陽気ですっかり雪どけの庭が眺めることが出来るテイラー邸のコンサバトリーにて、扉が開いた瞬間きらきらとした黄金の美しい長い髪が絨毯につくのでは無いかという勢いで垂れ下がりアーデルベルトの謝罪が行われた。


数日前に婚約者候補の顔を合わせた部屋で、まったく違う態度の婚約者候補の行動にベアトリクスとディオティマは目を瞬く。


「兄上!不躾ですよ!お二人とも驚いていらっしゃいます!!」


声かけから間を置かずの謝罪のせいで、部屋の中には座ったまま出迎える事も忘れ目をパチクリと目を瞬く二人が黄金色の長い髪を凝視していた。クレメンスは兄の突然の行動に驚きつつも素早く兄を窘め謝罪を行った。


「申し訳ございません。本日、お会いして頂けるとの事で兄上も色々思うところがあったかと思います。不躾な謝罪になり・・・まことに・・・申し訳ございません」


「ふふっ大丈夫ですわ。クレメンス様。エヴァンス小侯爵もどうぞお席へ・・・大変失礼ですが、アーデルベルト様とお呼びしてもかまいませんか?」


ベアトリクスはディオティマの隣から腰を上げ、ふんわりと落ち着いた声で2人を招き入れた。名前で呼ぶことを了承したアーデルベルトとそれに続くクレメンスは恐縮しつつもきちんとした綺麗な所作で二人の向かいの席へと腰を落ち着ける。


ディオティマは、扇子を広げ顔を隠しながらじっと二人を見つめていた。四人のやりとりを見ていた侍女たちは落ち着いた事を確認すると、優雅かつ迅速にお茶の用意をした。


ベアトリクスがお茶とお菓子に手をつけると、他の3人も其々お茶に口をつけ思い思いのお菓子をつまみ始めた。笑顔で兄を黙らせて先に口を開いたクレメンスに、穏やかな微笑みで答えるベアトリクス。和やかにお茶会が始まった。


「本日はお招きありがとうございます。お会いできて嬉しく思ています」


「いいえ、急なお誘いで申し訳ございません。お姉様が出来るだけ早くと仰るもので・・・ご予定などはございませんでしたか?」


「いえいえ、何を置いてもご招待にお答えしますとも。私共としましてもありがたい申し出でございました」


「それは、良かったですわ」


招待へのお礼や、お菓子やお茶の話を和やかに終え、まずはエヴァンス侯爵家側の本題にアーデルベルトが入る。その姿は紳士で穏やかで2日前の彼とも、入室の彼とも違う。別人では?と思うような姿だった。


「先ほども重ね重ね失礼致しました。本日は謝罪いただける機会を頂き感謝の念に堪えません。テイラー侯爵令嬢、アンダーソン公爵令嬢ご不快なお気持ちにさせた事。深く謝罪致します」


アーデルベルトは体を前に傾け、顔を伏せているのでお受けしますとだけベアトリクスは答え、そのままディオティマに視線を動かし3人はディオティマの動向を見守る。


これまで、挨拶の会話にも参加せず、エヴァンス兄弟を観察していたディオティマが無表情なまま扇子を閉じ、穏やかな微笑みをベアトリクスに向ける、無表情に顔を戻しゆっくりとアーデルベルトへ視線を移すと先ほどよりは、やや硬さの残る貴族らしい微笑みになり穏やかな声色で口を開いた。


「この度の謝罪。お受けしますわ。ベティへの暴言は忘れられそうにもございませんが、あの日は何かございましたの?」


アーデルベルトは、一言「はい」と返事した後、言葉が止まり膝の上の握りしめた手を見つめ動けなくなる。ディオティマの溜息が聞こえビクッと身体を振るわすと決意をした顔でディオティマを見つめゆっくりと話始めた。その声は、緊張で震える。


「アンダーソン公爵令嬢。わたくしは、貴方様をお慕いしております!」


ディオティマは目を見開きアーデルベルトを凝視する。そんな二人をベアトリクスも胸の前で手を組み見つめている。アーデルベルトは更に話を続けた。


「もちろん!アンダーソン公爵令嬢とお近づきになれるとは思っておりませんでした。しかし、婚約者を定めるほどは気持ちを決めかねておりました・・・・。

今回、母からお見合いは打診もなく日程が決まっておりまして・・・私が知ったのは前日の衣装合わせの際でした。

しかし、お見合いの席の後ですとテイラー侯爵家相手にわたくしからお断りすることは難しく・・・・テイラー侯爵令嬢にお断り頂こう考えあのような愚行を行いました・・・お二人をご不快にさせましたこと、心より深く反省しております。幾重にもお詫びを申し上げます・・・」


早口でアーデルベルトが事の詳細を述べると、重い沈黙が続いた。


アーデルベルトの行為は本来なら相手方の令嬢に無礼だと訴えられてお断りを狙うにはまぁ妥当とも思える言動であった。しかし、なぜかベアトリクスは気にしないとして許されているだけだった。


怒らせようとしたのに、怒らないベアトリスに慌てたアーデルベルトは更に暴言を続けることになった。そんな沈黙を破ったのはやはり、大きな溜息をついたディオティマだった。


「まったく本当に愚行ですね」


「はい。真に申し訳なかったと・・・」


「謝罪は受け取りました。ベティは知っていたのね?」


「・・・えぇ。以前にクレメンス様から相談をね・・・受けていたの」


「おっお前!何を!テイラー侯爵令嬢に話したのか!?」


焦ってはいたが、小声でクレメンスを咎めるアーデルベルトに、ベアトリクスは1度でもいいのでお話出来る機会を持つことは難しいかという相談を受けたと話した。


「兄上も16才です。婚約者がいてもおかしくない年齢でしょう?ずっと、婚約者を決める事から逃げ回っていたではありませんか?でも、特に何かするわけでもなかったでしょう?

母上と伯母上達は、兄上の事が大好きですからね。ご自分たちが嫌われたくないのか。兄上には直接言わないくせに私に兄上を説得するよう仰るのですよ」


「うっ・・・」


「一時期、本当にうるさくて学校だけが息をつける場所だった。そんな日が続いて疲弊している私に・・・ベアトリクス嬢が悩みを聞いてくれると・・・言って下さって話をしました。兄上の私情を勝手に話した事は謝りますが私も限界だったのですよ」


申し訳ないと背の高いアーデルベルトが小さくなっていると、ディオティマがふふっと笑い出した。他の三人は目を瞬かせてディオティマに注目する。


「ごめんなさい。背の高い方がこんなに小さく座っている姿なんて見たことがなくて・・・ふふっ」


アーデルベルトは羞恥で顔を赤く染めたが、少しは許して頂けたのかと身体の力が抜けた。そんな二人をベアトリクスは微笑みながら眺めていた。ひと段落着いたので、お茶の入れ替えをして其々がお茶に口をつけほっと一息をつく。


「アーデルベルト様の謝罪を承りました。これ以上の謝罪はもう必要ありません」


言葉は固いが今までとは違い優しい響きの声でディオティマが話し始めて改めて謝罪の受け入れと、現時点でアーデルベルトの気持ちを受け取る事が難しいと話した。


ディオティマにも思うところがあるようだった。気持ちを切り替えたディオティマはベアトリクスに人払いを頼み、自身の本題を話し始める。


「本日の会談とベアトリクスからのお話。失礼ですがこちらの方でエヴァンス侯爵家をお調べさせて頂きました。それに伴い信用に足る方々とお見受けして、私からも話があるのですがよろしいでしょうか?」


神妙な顔になり「はい」と答えるエヴァンス兄弟を見ながらディオティマの横でベアトリクスは少し俯き申し訳なさそうに困った顔になった。


「すぐに発表されるとは思いますが敢えて広めては頂きたくはないので他言無用でお願いしますね」


何やら真剣な話に、アーデルベルトとクレメンスが目を合わせコクリと頷くとディオティマに向き直り誓ってと声を揃えた。


「先日、ベティのお兄様の婚約が白紙に戻りました。少し特殊な事情によって白紙に戻りましたの」


「特殊な事情については、伺わなくても私たちはご協力できますか?」


クレメンスの質問にディオティマは目を見張った。事情について詳しく把握したいと言い出すと思っていたのだ。先日の晩餐でエヴァンス兄妹に協力を仰ぐことはテイラー夫妻、エーレンフリート、ハーシェルヒルム第二王子にも了承を得たが詳しく内情を話す事は止められていたのでどう話を進めようかと思案していた。


「聞かないのですね・・」と言葉を零すディオティマに今度はアーデルベルトは落ち着いた声でにこりと微笑み答える。


「特殊なご事情とまで教えて頂いたので、私たちのご協力に支障がない限りこちらが伺うことはありません。私たちを信用頂き嬉しく思います」


「ありがとうございます。特殊な事情は今後のご協力に変更があればお伝えするかもしれませんが今は聞かないで頂きたいと存じます。知っている人間が多いと障りがあるかもしれないのでご了承頂き感謝いたしますわ」


ここでディオティマはほっとして言葉を切り緊張で乾いた喉を潤す。三人もディオティマに倣いお茶に口をつけ、次の話を待つ。


「エーレンフリート様の元婚約者は、ブラウン伯爵令嬢です。6月にはご卒業されますが、今は2月の下旬でしょう?少しですが同じ学園に通うことになります。白紙ではありますが、それは伯父様の温情による白紙であって、彼女の有責なのは確かです。可愛いベティに接触するのではと危惧しているのです」


「ブラウン伯爵令嬢は、何故テイラー侯爵令嬢に接触を図ると思われるのですか?」


「エーレンフリート様と婚約の白紙を撤回を考えているかもしれないからです。ごめんなさい。こちらの理由も深くは話せないの」


「畏まりました。それで私たちはどの様に?」


ディオティマの不明瞭な説明に、アーデルベルトはしっかりと頷き自分たちへの協力願いの内容を伺う。


「ベアトリクスの学園での護衛を頼みたいと考えています。クレメンス様は同級生でしょう?アーデルベルト様は婚約者候補として会っていることは貴族間では広まっていて・・・というかエヴァンス夫人が・・・色々なところでお話されていて・・・」


「んっ・・・本当に申し訳ありません」


顔を真っ青にしたアーデルベルトが謝り、クレメンスの目は遠くを眺める。そんな二人にベアトリクスはお見合いをしたのは事実であるので大丈夫だと慰める。


「では、私たちは学園で出来るだけベアトリクス嬢とご一緒し・・・護衛ということでよろしいしょうか?」


クレメンスが尋ねるとディオティマはにっこり微笑み、お願いできるかしらと問うと、エヴァンス兄弟は声を揃えて承諾しクレメンスが続ける。


「ブラウン伯爵令嬢もですが、弟のナイツェルが同じ学年ですのでナイツェルの方が接触してくる可能性が高いです。後、ブラウン家の末の弟君も確かルードリッヒ様と同い年かと思います。うちの弟も同学年なのですよ」


「あら、ナイツェル様のことは調べていましたけど末の弟もルーと同い年なの?ルーは大丈夫かしら?」


クレメンスの情報に、ディオティマが思案するが、ベアトリクスは大丈夫だと言う。


「ニコラス様はフランチェスカ様やナイツェル様とは、あまり仲が良くないようです。昨日、ルーに連れられていらっしゃいました。お姉様の事を謝罪頂いたの」


「あら?ニコラス様の領地でお育ちになったの?」


ディオティマが長兄と同じように祖父母に育てられたのか聞くと、ベアトリクスは少し言葉を濁すので今のところは流すことにした。


「私も講義時間外や空き時間には、なるべくベティと共に過ごしたいのですが学年が違います。アーデルベルト様も学年が違いますが、留学から戻ってきて履修している講義が多いので空き時間も多いと伺っています。

クレメンス様とお話してベティを守ってほしいの。ベティの友人はとてもいい子なんですが子爵位ですので、高位貴族の権威を使われると離れざるを得なくなるのよ。お願い出来るかしら?」


アーデルベルトとクレメンスは目を合わせディオティマに向き直るとコクリと頷いた。

拝読ありがとうございました。


 ~登場人物~

【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)

テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*目:金

【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)

アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*目:青

【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)

エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*目の色:碧

【愛称:レメ】クレメンス・エヴァンス侯爵令息(15)

エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*目:赤

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