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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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054 第一王子の計略

話題の通り、第一王子殿下のお話なんですが

殿下の頭は今大変忙しいので、ジェラルド視点で参ります。

<護衛騎士ジェラルド視点>


城の本館から離宮へ向かう馬車の中で、イーヴォイェレミアスに向かい合って座るジェラルドは口を開く。隣に座るファウストは忙しそうに書類を捲っている。今日中にイーヴォイェレミアスのサインが必要な書類のぬけが無いかを確認しているんだろう。


馬車に揺られながら楽し気なイーヴォイェレミアスにジェラルドは口を開く。最近では、毎日この会話をしている。


「殿下。あまりしつこいと嫌われますよ」


「おぉっ!婚約者の心を射止めた人間の助言は違うな!」


ジェラルドの注意を茶化して答えるイーヴォイェレミアスに、ジェラルドは胡乱な目を向ける。正直、今色々な事が忙しい。


ヘルムフリート陛下の処罰の為の森の館の準備に、陛下は犯罪者として移送されるが本人が病気だと思っているのでただ馬車に乗るだけでは難しい移送の準備、その森の館の使用人たちの選定。


リシュエンヌの侍女長であったマリアは、この事件の事が聞かされる前に陛下の配属へと変わったと伝えられたので移動先で当分うるさいかと思うが、お祖母様(前王妹)の手配した使用人たちに太刀打ちは出来ないだろうジェラルは思う。


更には、ヘルムフリート陛下の退位式にイーヴォイェレミアスの戴冠式。それをヘルムフリート陛下の戴冠15周年の記念の43歳の生誕祭に行う。


既に各国に招待状が送られているので来賓たちが入城次第、退位と戴冠の事情を知らされる。来賓たちの離宮の準備は、リシュエンヌ殿下たちが整えたので、あとは各宮に配属する人員の選定など今はまだイーリシティナ王妃殿下も手伝ってくれているのでどうにかなるのだが蟄居されると伺っているのでその後の引継ぎもリシュエンヌ様が忙しくされており、その後リシュエンヌ様が嫁がれると、イーヴォイェレミアスに奥方のいない今、今後の不安が残る。


そんな中、執務を午前中と夕方以降にしか手をつけず。午後の時間かならずイーヴォイェレミアス殿下はある離宮へと毎日訪れる。でも、それも必要なのかと思案するが殿下の態度は正解なのか最近ジェラルドは悩んでいる。


「やぁ。ウーレンベック嬢」


離宮の温室に入ったイーヴォイェレミアス殿下は目当ての人間を見つけて声をかける。その相手は呆れた顔を一瞬のぞかせて微笑む。


「ランゲリーヴ王国第一王子殿下にご挨拶を申し上げます」


「そんなに、毎日改まらなくていいだろう?イヴと呼んでくれ」


「滅相もございません。キャウトィランヴ国の公爵令嬢如きが隣国の次期国王様を愛称でお呼びするなど恐れ多く御座います。(わたくし)は、当国の第二王子殿下の身代わりとして大人しくしておりますので毎日いらっしゃらなくてもよろしいのですよ。第一王子自ら確認にいらっしゃらなくても逃げません」


ふふっと優雅に微笑むキャウトィランヴ国シルフィア・ウーレンベック公爵はまだ17歳と聞いているが肝が据わっている。言葉は丁寧だが、言葉の端々に不敬にならない程度の嫌悪を匂わせる。


しかし、我が主イーヴォイェレミアス殿下には効かないだよなとジェラルドは諦めに似た感情を、他の側近たちと目を合わせ共有する。一応、シルフィア・ウーレンベック公爵令嬢は、捕らえられずはずだったキャウトィランヴ国第二王子の身代わりとして子の離宮に滞在している。


人質とは思えないほどの待遇なのは、イーヴォイェレミアス殿下の指示だとは本人もきがついてるだろうが、多分に何故だと思っているだろう。


リシュエンヌ様も時間を見つけては彼女を訪れ、イーヴォイェレミアス殿下の不条理を詫び不足は無いかと心を傾けている。献身的で深い心遣いを隣国の王女にしてもらい、リシュエンヌ殿下の竹を割ったような性格にウーレンベック公爵令嬢も心を許し二人の友情は育っているらしい。こちらの二人の愛情は育っていないのに・・・。


「見張りの為に来ているわけじゃないよ。私が君に会いたいから来ているとは思わないのかい?」


「第一王子殿下に毎日、お会いするのは恐縮致しますので過剰な待遇かと存じます」


「いいや。私はこの時間を削る気はないよ」


「本当に食えない方ですね。私をどうしたいのですか?」


「ふふっ。やっと言葉を崩してくれたね」


「殿下が、しつこいからです」


「そうなのか?初めて言われた。それに、イヴと。私も君の事をシルフィア嬢と呼んでもいいだろうか?」


「ねぇ?会話って出来ます?」


「あぁ。言葉を交わすことだろう?」


「何故分かっていて、話がそんなに飛ぶのですか?」


「君の反応が可愛いからかな?」


イーヴォイェレミアスの発言に、今度こそシルフィアは押し黙る。頬に少しばかり朱が入るが照れているのか、怒りのせいなのかはわからない。イーヴォイェレミアスはどちらにしてもかわいいと本気で思っているので手に負えない。


ジェラルドは、シルフィア公爵令嬢に憐憫な目を向ける事しかできない。この幼少期から優秀で何でもこなし、人の機微に聡く、意外にも人に親身になる第一王子殿下は恋が分からないと最近ぼやいていたのに。こんなに楽しそうな顔も見たことが無く困惑する。


そして、ハトコのこれは恋なのか?面白い反応を示す令嬢への興味なのかわからない。イーヴォイェレミアス殿下は優秀な第一王子の為、彼の近しい女性は、妹を始め従姉妹であるディオティマ嬢、ベアトリス嬢から始まりハトコでジェラルドの妹でリシュエンヌの側近のグレーテ、乳兄弟のジャネット。側近のリズ。彼を尊敬はしていても、秋波を送るような女性はおらず。


だが、夜会となれば話は変わる。ほとんどの令嬢たちが頬を染め、着飾り、香水をまき散らしながら我先にと話しかけてくる。イーヴォイェレミアス殿下自身が話しかけようとするなら、青ざめて足早に席を外す物か、前のめりに体を寄せて熱い吐息がかかりそうなまでに身を近づける者に分かられる。もちろん、その様な令嬢は我々が排除するが・・・。


しかし今、イーヴォイェレミアス殿下の目の前にいる令嬢はそのどなたにも当てはまらない。尊敬の念を抱くほどの時は過ごしていないし、容姿にのぼせ上がることも無く、身分に恐れおののくわけでもない。そして会話は打てば、響くのだ。イーヴォイェレミアス殿下が面白くないわけが無い事もジェラルドは理解している。


だが、このやり取りは嫌われないかと心配するしかない。妃にと願った女性だ。恋でなくても良好でいて頂きたいし、本当に恋情があるのであれば気がついたときには嫌われているという状態にはなっていてほしくないのが側近たちの相違だった。ファウストがさり気なくイーヴォイェレミアス殿下に声をかける。


「殿下。今日は、公爵令嬢へ贈り物があるのでは?」


「あぁ!そうだね。私の戴冠式の日のドレスを仕立てないので採寸を行いに針子たちを連れてきたい。明日で構わないか?」


「王太子殿下になられたのでしたね。おめでとうございます。そして、戴冠の義おめでたいのですが、罪人の代わりの人質にその様な場に参加することは憚られます。どのような立場で参加するのでしょうか?」


「僕の妃だよ」


にっこりと微笑みながら答えるイーヴォイェレミアス殿下に、ウーレンベック公爵令嬢はスンッとした顔になり固まる。その反応すら。イーヴォイェレミアス殿下の琴線に刺さってるらしいことにそろそろ気がついてほしい。毎日のやり取りなのだから・・・


実際、イーヴォイェレミアス殿下の妃としてウーレンベック公爵令嬢は申し分ない。確かに身分はキャウトィランヴ国公爵令嬢なのだがキャウトィランヴ国の現在の仲の良い王弟の娘で王位継承権すら所持している。更に母親は、正妃、側妃をとるリーヴバレンティ帝国の現皇帝の父君で在らせられる前皇帝の同母の姉の娘、現皇帝すら頭が上がらない大叔母の孫にあたる。


帝国の次期王太子である第三皇子と仲がいいのはそこから来ている。キャウトィランヴ国からもリーヴバレンティ帝国からも大切にされている姫君に不足があるわけない。が、それはイーヴォイェレミアス殿下にとって二の次であることに側近たちは薄々感じている。


まだ、育っていない恋情にジレジレしながらもただ面白いから揶揄っているだけではという疑惑もぬぐい切れない。


「分かりました。貴方にとって、私を娶ることに理があるのは分かりましたが私も家族と相談しなくてはなりません。人質の立場ではそれは難しく・・・」


「あぁ。だから、戴冠式に其方の家族キャウトィランヴ国も第三王子イフナース・オリフィエル殿下とご一緒にいらっしゃる。君と家族にはこの離宮を使ってもらうために急ぎ、イフナース・オリフィエル殿下の部屋を整えさせているんだ。君の意見も聞いていいだろうか?あぁ。この離宮に不備や不足は無いかい?」


「リシュエンヌ殿下にお心遣い頂いておりますので、ございません」


ウーレンベック公爵令嬢の発言に、今度は美丈夫の顔を歪ませ髪より少し濃い金の眉を下げる。所謂、ショボーン顔にウーレンベック公爵令嬢はハッとして今まで花壇のそばにいた身を近づけイーヴォイェレミアス殿下に謝罪する。


手が届くほど近づいたときには遅い。ウーレンベック公爵令嬢は、手を捕まれ引き寄せられる。腰に手をまわし、ウーレンベック公爵令嬢の肩口に頭を埋めるとイーヴォイェレミアス殿下は小さな声で囁くように懇願する。


「其方に頼ってほしい・・・。袖にされるのはさすがに寂しい・・・」


流石のウーレンベック公爵令嬢も、首まで真っ赤にして狼狽する。自身の主ながら、自分の使い方を分かっている有様に、ウーレンベック公爵令嬢がほだされてうまくいってほしいなという気持ちと、早く逃げてウーレンベック公爵令嬢!という気持ちが鬩ぎ合うジェラルドは遠い目になるしかなかった。


きっと彼女は戴冠の日まで、沼にずるずると引かれるように承諾してしまうのだろうとウーレンベック公爵令嬢に憐憫の目を向けた。新たな王妃へ忠誠を誓い献身的に仕える事を心に決めた。

拝読ありがとうございます。


 ~登場人物~

【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫


シルフィア・ウーレンベック公爵令嬢(17)

第二王子元婚約者 髪:ローズ 瞳:ターコイズ


【愛称:ジル】ジェラルド・ハリス伯爵子息(19)【イーヴォイェレミアス 又従弟/側近(騎士)】

ハリス伯爵子息二子(次男) 髪:銀、ロング(影武者もできるようにあえて延ばしている) 瞳:紫


ファウスト・ミラ男爵子息(20)【イーヴォイェレミアス 側近(従者)】

ミラ男爵家第一子(長男)嫡子だが兄弟が多いため 髪:青 目:オレンジ


※一応、人質のところへ向かっているのでいつもより側近は大目に引き連れております。話をしている人だけ紹介。

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